78.後日談
「――ありがとうございましたー! またのご利用お待ちしておりまーす!」
ギルド対抗イベントが終了してから数日が経ち、俺は消費者金融から借りていた金額の全額を返済して建物から出てきた。
「はああぁぁぁぁ。とりあえず、なんとかなったなぁ。しかし、またのご利用って、絶対にしたくないんだけど」
そんな愚痴を溢しながら通りを進み、俺は繁華街でも一際目立つ大型モニターに視線を向けた。
普段は目にも留まらないのだが、今日に限っていえば上を向いて歩いてもいいかと思ったからだ。
そして、そんな気持ちの変化は俺に予想外のものを見せてくれた。
「……天童寺財閥、ワンアース運営から排除される?」
まさかのニュースに俺はその場で立ち止まり、字幕を目で追っていく。
どうやら前回対抗イベントにおいて、多くの不正が発覚したようで、それを主導していたのが天童寺財閥から出向してきていた職員だったと報じている。
その事実が発覚したことで天童寺財閥はワンアースから締め出されてしまい、今後一切ワンアースに関わることができなくなったのだとか。
「……フェゴールがやってくれたのか?」
あいつは天童寺財閥の御曹司のお守りをしていたみたいだし、会社を辞めるとは言っていたがその前に爆弾を落としたのかもしれない。
それとも、別の誰かがリークしたとか? 例えば……レイドボス戦で俺に力を貸した何者かとか?
「……いや、わからないことを考えても仕方がないか」
俺にとって大事なことは、乗っ取り野郎が関わっている会社がワンアースから排除されたという事実だ。
ある意味、俺の復讐が一つ為されたと言っても過言ではないからな。
だが、まだまだだ。
俺がゴールドに費やしてきた時間と労力、そして稼いで使った分のお金を考えれば、全然足りていない。
ワンアースがゴールドのアカウントを削除していたら復讐は諦められるが、場合によってはそうならないケースだって考えられる。
例えば、職員の独断で不正が行われており、乗っ取り野郎は一切関わっていなかったと証言された場合だ。
そうなると、ゴールドはあくまでも一人のプレイヤーであり、他人の勝手で巻き込まれただけ、と取られる可能性だってある。
ワンアース運営がどういう状況なのかわからないが、誰がどう見たってゴールドは金のなる木であることに間違いはない。
関わっているかはっきりとしていない不正で即アカウント削除となるのかどうかは、半々ではないだろうか。
「乗っ取り野郎がアカウントを乗っ取った証拠をワンアース運営が見つけてくれれば俺に連絡があってもおかしくはないけど……最初の問い合わせの対応を見てたらなぁ」
その可能性は少ないかもしれないと、俺は気持ちを切り替えることにした。
「まあ、もしもアカウントが残っていたなら、俺が乗っ取り野郎の邪魔をし続けてやるけどな」
それに、俺が復讐したい相手は天童寺財閥ではなく、乗っ取り野郎本人だ。
個人的にはアカウントが削除されておらず、乗っ取り野郎が活動してくれている方が復讐の機会もあるわけだから嬉しい限りなんだけどな。
「……よし! こんなところでぼーっとしているのも勿体ないか! さっさと家に戻って、ワンアースにログインするかな!」
気持ちを切り替えた俺はやや早足で家路を急ぐ。
リアルの生活がようやくスタートラインに戻ったんだ。これからは一気に駆け抜けてやる。
乗っ取り野郎への復讐と合わせてな!
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