75.結果発表

 俺たちは自動的に専用フィールドから移動されることになった。

 その際、同じギルドというわけではない俺とデスハンドたちはそれぞれ別のところへ戻ることになる。

 俺は一人だし、デスハンドもボーンヘッドギルドのギルドハウスがあるから問題はないが、すでにフィールドから移動していたフェゴールはゴールドギルドのギルドハウスに戻されたはずだ。

 そこでゴールドや他のギルメンから文句を言われるだろうし、最悪の場合は戦闘に発展する可能性も少なくはない。

 短い時間とはいえ共に戦った仲なので、少しばかし心配だ。


「……落ち着いたら、連絡でも入れてみるか」


 一応、フレンド登録はしているからな。


「デスハンドたちにはあとでギルドハウスにお礼を言いに行くよ」

「その時は手土産でも持ってこいよぅ?」

「土産話でもいいか?」

「一緒にやったのに土産話もないだろうがあ!」


 しばらくして、俺たちが立っている地面が光出すと足元から徐々に転送が始まっていた。


「そんじゃあな」

「あぁ、また――ワンアースで!」


 こうして俺たちのギルド対抗イベントは終了した。


 ◆◇◆◇


 ギルド対抗イベントの結果発表は、イベントが終了した翌日の12時に行われた。

 本来であれば1時間ほど、遅くても2時間くらいでは結果発表が行われていたのだが、今回は集計に時間が掛かっていたようだ。

 まあ、ゴールドが絡んでいたということもあるし、運営内で色々とゴタゴタしていたのは容易に想像がつくけどな。

 そんなこんなでランキング発表時刻が近づいてきたその時、俺はパソコンの前で動画の編集を行っていた。


「あぁ、これは違うか。うーん、どうしていいところでデスハンドが見切れるんだよ!」


 ギルド対抗イベントの動画を編集していた俺だが、協力してくれたフェゴールとボーンヘッドギルドが悪いように映らないよう苦慮していた。

 ボーンヘッドギルドに関してはPKギルドだったし別に悪く映ってもいい気もするが、せっかくならと編集を頑張っている。

 俺はモニターに映る時間をチラリと見やり、小さく息を吐いて編集作業を一旦ストップした。


「……あと1分か」


 そう口にしながらワンアースの公式サイトを開いく。

 わざわざサイトを開いてまで待っているのだが、正直なところそこまで心配はしていない。

 レイドボスを倒したわけだし、それ以前にも相当数のポイントを稼ぎだしていた。

 これで逆転されてしまったら、もうそこのギルドを褒めるしかないだろう。

 ただ、SNSでどのような反応が起きるのか……それだけが楽しみでならない。


「DRギルドってなんだみたいに騒ぐ奴らもいるだろうけど、大半はゴールドギルドの大失敗を書くだろうな」


 トレンド入りでもしてしまえば、マジで乗っ取り野郎が怒り狂う姿が目に浮かぶぜ。

 ……まあ、天童寺財閥の御曹司の顔なんて知らないんだけどな。


「そういえば、検索したら出てくるのか? ……っと、そんなことよりもランキングだな!」


 考え事をしている間に12時になっていた。

 俺はページを更新してランキングを確認する。

 ……よし、予想通りだな!


「DRギルドが、ギルド対抗イベントの1位を獲得だ!」


 ギルド設立から一週間は他のユーザーのギルド情報が公開されない。

 だからこそ、誰もDRギルドの存在を知らないし、何者が設立したギルドなのかも想像がつかないだろう。

 ……まあ、1位獲得は俺の目的のついでだからいいんだけど。報酬が神話級装備だったらありがたいな。


「さて、次はゴールドギルドだけど……くくくく、やっぱりな!」


 ゴールドギルド、1000位以内に入っていないぜ! というかこれは、下手をすると報酬が手に入る1万位をも割っているんじゃないだろうか。

 残念ながらここでも1000位以下のギルドを見ることはできないが、ひとまずは俺の目的は達成されたことになる。


「そういえば、ボーンヘッドギルドはどうなったんだ? えっとー……は?」


 ……998位? まさかの1000位入り?

 どうやら今回のギルド対抗イベント、ユーザーたちにとってもワンアース運営にとっても、もちろん俺にとっても、予想外の連続だったようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る