65.レヴォとゴールド
「――ぐはっ!?」
俺はレイドボスのところへ向かう途中だったゴールドギルドのギルメンを斬り捨てた。
中にはフェゴールを見て無防備に近づいてい来たギルメンもいたが、そいつらはその場で彼女に一突きされて退場していた。
すでにデスハンドや幹部たちのグループも戻ってきており、今はレイドボスのところへギルメンを向かわせないよう壁を敷いている状況だ。
『――おいおい、本当にこんなんで大丈夫なんだろうなぁ?』
「大丈夫だよ。そろそろゴールドが限界を迎えるだろうし、そうなったら近づいて俺たちでぶっ倒せばいいだけの話だ」
『――俺様が横取りする可能性は考えねぇのかぁ?』
「もしそんなことをしたら――ワンアース内で一生付きまとってやるからな?」
『――……かかかっ! それは勘弁だ、止めておこう』
無駄口を叩きながらでもギルメンと戦えている時点で、デスハンドは俺との戦いで手を抜いていた可能性が高くなった。
もしかすると、俺と同じようにセカンドキャラなんじゃないだろうか。
……いいや、考え過ぎか。
セカンドキャラならギルドまで作る必要はないはずだしな。
今はデスハンドが予想以上に使える奴だった、それだけでいいだろう。
「戦闘音が、激しくなってきましたね」
「あぁ。ゴールドがボコボコにやられているんじゃないか?」
「どうしてそう思うのですか? あれでも多少はワンアースをプレイしていた人間ですよ?」
「フェゴール、お前、本気で言っているのか?」
「……どういうことでしょうか?」
この感じだと、マジで言っているみたいだな。
「アースザウルスとの戦闘を見て、乗っ取り野郎じゃあゴールドを上手く使えないと俺は判断したんだよ。そもそも、神話級武器を使って伝説級モンスターに攻撃を弾かれるとか、あり得ないと思わないか?」
「……言われてみれば、確かにおかしな話ですね」
神話級武器というのは、その存在自体が神と出会うが如き面倒をこなさなければ手に入らない貴重な装備だ。
競売にかけようものならたった一つの装備だけで一〇〇万円の値が付いてもおかしくはない。
それだけ強力なものであり、トップランカーになりたければ最低でも一つは持っていなければならない装備でもあった。
「あいつは今までザコモンスターしか倒してこなかったんじゃないのか? もしくは、金でランキングを手に入れたせいでちゃんとプレイすらしたことないとか?」
「まさか! ……いや、でも、確かに一緒にログインしている時にゴールドがまともに戦っている姿は見たことがないですね」
「マジかよ。それならレイドボスにダメージが入ることはあまり期待できないな」
むしろ、ギルメンを向かわせてやった方が良かったかもしれないか?
……いいや、過ぎたことを考えるのは止めておこう。今からやれることを考えないとな。
「……よし、ゴールドの様子でも見に行くか」
「姿を見られたら、むしろこちらに襲い掛かってくるかもしれませんよ?」
「そうなったらなったで、レイドボスも巻き込んで逃げる算段を立てるとするさ」
レイドボスが出てきた時点で俺の考えていた逃げる方法は全て考え直さなければならなくなった。
だが、レイドボスがいるからこその方法だってあるにはある。
しかし、これにはレイドボスがどのような行動を取るのかが大きなポイントになってくる。
レイドボスがゴールドを狙えば俺たちの勝ち。
しかし、もしもレイドボスがこちらを狙ってくるようなことになれば、俺たちが死んでしまうだろう。
「……大丈夫なのですか?」
おっと、どうやら難しい顔をしていたみたいだ。
「なーに、大丈夫さ。どちらにしても、俺たちの負けはないからな」
「……?」
俺の言葉にフェゴールは首を傾げてしまった。
まあ、こっちの頭の中で考えていたことへの答えだから仕方がないか。
「本当に大丈夫だよ。そんじゃまあ、ちょっくら行ってみるか」
「はい!」
こうして俺とフェゴールは、ゴールドがレイドボスと戦っているだろう場所へ向かう――はずだったのだが。
――ドゴオオオオォォン!
「な、なんだあっ!?」
「はっ! すみません、見落としていました!」
な、何を見落としていたというんだよ!
「てめえっ! 楓、裏切りやがったなあっ!」
『グルオオオオオオオオォォオオォォッ!!』
くそっ! ゴールドの奴、レイドボスを引き連れてこっちに逃げてきやがった!
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