9.ステータスと装備

「隼の短剣かぁ。俺がナイフを使っていたから、それに合わせた報酬になったってわけだな」


 俺は手に取った隼の短剣に頬ずりしながら、その性能を確かめる。


【隼の短剣(伝承級):筋力+10、敏捷+30、体力+10】

【アクティブスキル:瞬歩 5/5(5メートル以内の場所に一瞬で移動する。5回分のストックあり、3時間でストックが1回復する)】


 伝承級の武器としても上々の性能で、さらにアクティブスキルがついてくるおまけ付きだ。

 序盤から中盤まで、十分に役立つ武器で本当に助かるぜ。


「さっそく装備してみるか。……ふふ、格好いいじゃないか」


 初期装備とは不釣り合いな隼の短剣を腰に下げ、俺はポンと叩く。


「あとはステータスポイントを全部敏捷に振って……ついでにスキルも一つだけ取っておくか……」


 ワンアースにはステータスを上昇させるステータスポイントと、スキル獲得に必要となるスキルポイントが存在している。

 ステータスの初期値がHPとMPが100。筋力、敏捷、知識、体力、精神力が10となっている。

 ステータスポイントは10あり、HPとMPは1割り振るごとに10増え、残り五つのステータスは1割り振るごとに1増える。

 スキルポイントは獲得したいスキルによって消費ポイントが変わる。

 消費ポイントが多ければ多いほど強力なスキルと考えておけばいいだろう。


「……よし、これでいいな」


 というわけで、これが現時点での俺のステータスと装備だ。


■名前:レヴォ ■レベル1

■職業:ノービス

■HP100/100

■MP100/100

■筋力10(+10) ■敏捷20(+31)

■知能10 ■体力10(+12)

■精神力10

■ステータスポイント0

■スキルポイント7

■装備:隼の短剣、麻の服、麻のズボン、木の靴

■アクティブスキル

・瞬歩 5/5(5メートル以内の場所に一瞬で移動する。5回分のストックあり、3時間でストックが1回復する)

■パッシブスキル

・敏捷上昇(5%)


 ステータスポイントを全て敏捷に振ったのは、レヴォの戦闘スタイルに起因する。

 一般級相手にはワンキル判定狙いの会敵瞬殺を目指し、希少級以上には弱点への連撃を加えては離れるを繰り返すヒットアンドアウェイ戦法を行う。

 本当にゴールドとは真逆の戦法だが、不思議とこの戦い方が俺には合っているような気がしている。

 ドラゴンとの戦闘でわかったが、自分優位で戦闘が展開していく光景を見ているのがとても楽しかったのだ。


「格好いいのにゃ、ご主人様!」

「はは、ありがとな」


 戦闘スタイルに合わせてステータスポイントを割り振った。

 あとは俺の技術次第となる。

 ワンアースではステータスもそうだが、個人の運動神経や反射神経もゲームに影響を及ぼしてくる。

 ならば運動が苦手な人はワンアースで不利なのかといわれると、実はそうではない。

 システムによる補助の設定があり、運動の苦手は人は補助を有効にしておけば問題なくワンアースを楽しむことが可能だ。

 しかし、俺を含めたワンアースの上位ランカーは全員がシステム補助を無効にしており、自らの運動神経や反射神経を持ってワンアースをプレイしていた。


「まずはレベリングだな。ここからはちゃんと録画して、レヴォで初めての動画アップをしてやるか!」


 気合い十分に祠から出ると、そこには緑に囲まれた小さな集落である始まりの村が広がっていた。

 ゴールドでランカーになってからはまったく立ち寄らなくなっていたからなぁ。チュートリアル塔の次に懐かしい光景だよ。


「……おっと、そんなことよりもクエストだな、クエスト」


 俺はそう口にすると、祠の近くに立っていたNPCのおじいさんに声を掛けた。


「何か困ったことはないですか?」

「始まりの森にゴブリンが出てきて困っておるのじゃ。誰か討伐してくれんかのう?」


 簡単な会話が発生すると、目の前にウインドウが現われた。


【■サブクエスト:ゴブリン討伐 ■クリア条件:ゴブリン五匹討伐 ■クエスト難易度:F ■クリア報酬:10ゴールド ■Y/N】


 クエスト難易度はFが最低ランクでE、D、C、B、A、Sと高くなっていく。今回のサブクエストは一番簡単ってことだ。

 そしてゴールドだが、10ゴールドと聞くとワンアースをプレイしたことのない奴からは安いと思われるかもしれないが、実はそうではない。

 この1ゴールドが現実の100円になるので、サブクエストをクリアすると1000円の稼ぎになる。


「当然YESだ!」


 俺は人差し指で『Y』をタッチする。


「おぉ、やってくれるのか? よろしく頼むぞ」

「お任せください!」


 サブクエストを引き受けた俺は、意気揚々と始まりの森へ向かい歩き出したのだった。

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