6.予想外の出来事
「種類が、多い!?」
攻略サイトでは一種類のモンスターが10匹と書かれていたが、そうではなかった。
ゴブリンライダー、ゴブリンナイト、ゴブリンウィッチが三匹ずつ。
そして、チュートリアル搭では始めてお目に掛かるモンスターが一匹。
「リザードマンか!」
ゴブリンよりも頭三つ分ほど身長が高く、右手の剣と左手の盾を巧みに操り攻守ともに優れたモンスターだが、一番厄介なのはビタビタと地面を叩いている尻尾である。
剣と盾に意識を割かれると、見えないところから尻尾による攻撃が飛んでくる。
ワンキル判定を取れればいいのだが、リザードマンは弱点の守りが固いので狙うのも一苦労だ。
「だとしても、絶対に5分は切ってやる!」
そう口にしながら、俺はすでにゴブリンライダー三匹を仕留めている。
しかし、残りのモンスターは周囲に散ってこちらを囲んでいるので、まとめて倒すことは難しい。
ならばと俺は積極的に前に出て、一匹ずつ確実に数を減らしていく。
狙うは遠距離攻撃を持っているゴブリンウィッチだが、それを防ごうとゴブリンナイトが立ち塞がってくる。
リザードマンはこちらの隙を窺っているのか、ニタリと笑ったまま動こうとはしない。
「はっ! 好都合だな!」
数で押されたら面倒だと思っていたので、俺はリザードマンが動き出す前に数を減らすことにした。
ゴブリンナイトも剣と盾を持つモンスターだが、リザードマンに比べて動きが遅く、単調な攻撃しかしてこない。
盾も前に突き出すことしかしてこないので、攻撃を交わしてしまえばあとはナイフをワンキル判定に滑り込ませるだけで終わりだ。
これはゴブリンウィッチの攻撃も似たようなもので、一直線に飛んでくるファイアボール、ウォーターボールの二種類しか魔法はない。
魔法の軌道さえ読めていれば回避するのは容易いので、俺はゴブリンナイト三匹を10秒ほどで片付けると、一気にゴブリンウィッチへ突っ込んでいった。
『ギュジュルララアアアアッ!』
「見えていたっての!」
ゴブリンナイトが片付いた時点で焦りが生まれたのか、リザードマンがようやく重い腰を上げて動き出した。
俺はゴブリンたちと戦闘を繰り広げながらも、視界の端には必ずリザードマンを捉えていた。
こいつが動いたのなら、片付ける優先順位は変わってくるってもんだ。
「ははっ! 当たらねぇんだよ!」
『ギュジュラッ! ギャララララアアアアッ!』
力強く振り下ろされる湾曲した剣――シミターによる一撃は非常に重い。
しかし、それはまともに受けた場合の話であり、俺はそんな無駄なことはしない。
刀身が短いナイフでも、当て方次第ではシミターの重い一撃を逸らせることは可能だ。
逸らしたシミターが軌道を変えて地面を砕くと、俺は体を回転させて鋭く横に薙いでワンキル判定を狙ったが、そこへ盾が割り込んでくる。
このあたり、ゴブリンナイトとは動きが違って防御が固い。
ナイフが盾に防がれると、続けて盾を前にしたままシールドバッシュを仕掛けてきた。
これがリザードマンの決まり手でもある。
攻撃を盾で防いで相手の体勢が崩れたところをシールドバッシュで押し倒し、そこへシミターを振り下ろす。
リザードマンは一般級のモンスターだが、その中でも上位の実力を持っているとされており、ユーザーたちからは『新人殺し』と呼ばれているモンスターでもあった。
「だが、残念だったな。俺は――普通の新人じゃないんだよ!」
シールドバッシュがくるのを知っていた俺は、ナイフによる攻撃に全力を注いでいなかった。
もしも全力で攻撃していれば、反動が大きくなり体勢を崩していただろう。
すぐに体勢を立て直して俺はサイドステップを踏んでシールドバッシュを交わし、そのままリザードマンの真横につける。
ここまできたらあとは簡単だ。
『ギュ、ギュルラ?』
どうしてそこにいるんだ、という感じの声を漏らしているリザードマンの首目掛けて、俺はナイフを鋭く振り抜いた。
――ズバッ!
ヒットの効果音と共に舞い上がったリザードマンの首。
直後にはゴブリンウィッチの魔法が飛んできたのだが、それをリザードマンの胴体を盾にして防ぐと、そのまま前に出て残る三匹を一瞬で片付けた。
「……ふぅー、終わったかぁー」
攻略サイトの情報にないリザードマンが出てきた時は少しだけ驚いたが、それでも可能な限り最短で倒し切れたと思っている。
あとはタイムがどうだったかだが、果たして――
「ご主人様、おめでとうなのにゃ! 攻略タイムは4分53秒で新記録更新なのにゃ!」
「本当かニャーチ! やったぜええええぇぇっ!」
俺が拳を振り上げて歓喜の声をあげると、次にニャーチが驚くべき発言を口にした。
「チュートリアル塔を5分以内で攻略したので、隠し階段へ案内するにゃ!」
…………なんですと?
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