第29話 事情聴取
なにはともあれ、あばら家だろうが何だろうが、おれはここの主だ。ともかく威厳は保たなければいけない。
皆に声を掛けた。
「とにかく皆さん、落ち着いてお座りください」
図柄が空っぽの掛け軸と汚い古備前が鎮座した床の間の側に、とりあえずおれが座る。その横には、
対面には、バスローブをまとったバスガール。それに、着物と寝床を兼ねた
まずは、二人のほうを相手に問い
「最初に、モンジ老さんに聞きたいと思います」
すかさず、清さんから異議を唱えられる。
「坊ちゃん、いけません。こんな者に、敬語を使う必要はありません。」
おれは、彼女の剣幕にたじたじとなりながらも、反駁を試みる。
「いや、でも、モンジ老さんは僕より年長だから、矢張りそれなりの敬意を払わなくっちゃ……」
「そうだ、そうだ。婆さんは黙っておれ」
「お黙り」
清さんはモンジ老を一喝すると、不満そうにおれに向かって言った。
「あなたがそう
「分かりました。――それではモンジ老さん、もう一度お尋ねします」
「ふん、お主がそう
「何だって?」
清さんが塩を掴む真似をすると、一瞬で首や手足を莚の中に引っ込める。
おれは尋問を続けた。
「先日僕は、あなたにはっきりと伝えたはずです。あなたが新聞や郵便物はおろか、僕が苦心の末に書いた原稿まで食べてしまうものだから、大迷惑していると。それなのに、何故まだここに――」
するとモンジ老は、不機嫌そうな顔だけを、莚からにょきっと覗かせながら答えた。
「それは、ここにおる小水女から頼まれたからじゃ」
咄嗟に、バスガールがきっと睨みつける。
「その名前では、呼ばないで」
睨まれたほうは、不思議そうに言う。
「何故じゃ? お主は水かけ女の娘だから、
バスガールは、顔を真っ赤にしている。
「厭だから、厭なの。私は欽之助から、バスガールという立派な名前をもらったんだから。最近では、
「ふん。どいつもこいつも――。わしは頼まれたから、わざわざここに残って仕事をしてやっただけなのに。そんなに言うなら、もう勝手にするがいい」
モンジ老は、そう捨て
「おのれ。坊ちゃんを呼び捨てにするとは、何事ぞ」
清さんが、バスガールに怒る。
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