第8話 夜中のバスガール
これは、おれのとんでもない失態だった。
前にも書いたように、おれは子供の頃から色々なものが見えたり、聞こえたりしていた。
家業が古物商を営んでいたために、色々因縁のあるガラクタどもに囲まれながら育ったせいかもしれないし、爺ちゃんの資質を受け継いでいたせいであったかもしれない。
だからこそ、あんな勘違いをしてしまったのだ。婆ちゃんには悪いことをしたものだ。
しかし、今度のは明らかに勘違いではない。どうもイソベンの所に行った時に、勝手に
あれ以来、しばらく鳴りを潜めていたが、とうとう大人しくしていられなくなったに違いない。
あまりに
翌朝返事があって、次のように端正な文字でしたためてある。
「分かりました。今後のこともありますので、具体的に御相談させていただきたいと存じます。つきましては、白いバスローブ用意していただけたら助かります」
厚かましいやつだ。おれはこいつに、バスガールと名付けてやった。
バスローブについてはどうしたものか、
豆腐小僧も、それから毎日来ては、「買わないとひどいよ」と言って帰っていく。
イソベンの言うように、おれが奴らを引き付けているのか、それともこの家が呼び寄せているのか。
豆腐小僧は別として、こうも立て続けに出てこられたんじゃ、おれの神経もこれ以上は持たぬかもしれぬ。
三日目にとうとう、乱れ髪も現れた。影法師も、以前より頻繁に現れるようになった。気が付いたら、じっとこちらの様子をうかがっている。睨み付けてやると、さっと階段のほうに消える。
ところで、家の間取りについてだが、浴室やキッチンなどについてまだ言及していなかった。
東向きの玄関から入って、上がり
二階への入り口が塞がっているので、一階の間取りだけおさらいすると、大まかに田の字が南北に二つ並んでいるとイメージすればよい。
南側の田の字については、Lの字型の縁側に囲まれるように八畳二間続きの座敷があり、それと襖を隔てて六畳二間続きの部屋があるいうことになる。
それから北側の田の字については、東西の真ん中を廊下が貫いていて、東側に八畳ほどの洋間とダイニングキッチン、西側に六畳の和室と洗面室、バスルームの順番に並んでいる。
これで、いかにおれが大変な思いをしたか理解できようというものだ。
なにしろシャワーの音がする度に、寝室兼書斎としている座敷からバスルームまで、立て続けに三回も飛び込んだのだから。
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