6節 後 ここでも俺は……
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「テレムティアとは異世界から来た豊穣の神、と言われているのですよ」
馬車に乗った後、なぜ俺が呼ばれたのか男は説明した。
「その、テレムティア、ってのが俺だと」
「ええ」
「それは勘違いじゃないのか」
「いえ、それはないでしょう。貴方の御召し物がそれを物語っている」
「確かに俺の服装が変ってのはわかるけどさ」
「そして貴方があの老婆のもとに就いた日と、中央天文台が確認した彗星の落下日が一緒なのですよ」
「偶然というのはあるだろう」
「もちろん否定いたしません」
男は顎に手を当て、少し考えた後続けた。
「ですが、否定できる材料もないというのが事実です」
「それは詭弁だ」
「承知の上でございます。それを調べる必要があるために貴方をお招きしたのですから」
「調べる事が出来るっていうのか」
「ええ」
男は頷いた。馬車の揺れる音だけが残る。
「我が国にはテレムティアのみが解読できる文字というものがございます」
「文字?」
「はい。古代のテレムティア様が解読した故に内容はわかっていますが、それを学ぶ事もなく読める者が来訪者、テレムティアと呼ばれるのです」
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「なにをおっしゃいますか」
全員を首都に戻す。その提案にハーズベルグは驚いた。
「そうしたところで貴方はどうされるのですか」
「地図と数日分の食料があればなんとかなるよ。あと君のでいいから手紙があれば十分かな」
申し訳なさそうな顔をする周りを見ながら、俺は笑った。自分自身でも無茶苦茶な事を言っているのは十分分かっている。だが、彼らの生き方を邪魔するような生き方だけはしたくないのだ。
「第一俺はテレムティアだ。神の加護があるさ。セティアにはそう伝わってるんだろ」
その言葉を言うと彼は黙った。その伝説は信じられているかどうかは知らないにせよ、中々重い言葉のようだった。
「だからいいんだ。俺一人でもなんとかなるさ」
こういうとハーズベルグは黙った。
「わかりました。そのお言葉、飲みましょう」
少し安堵したときに彼は俺の眼を強く見ながらこう言った。
「ただ、私だけでも御伴致します。これを条件とさせてください」
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