5節 後 バウール石の指輪

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 俺がテレムティアとわかるのにはさほど時間がかからなかった。

 その日も俺は老人たち相手に農作業をしていた時であった。遠くの方から見たこともない馬車が通る。この道は元々古い道らしく道が整備された今では行商がここらの老人相手に商売をしに来るくらいで馬車が通るなんてのは大分珍しい事だった。

「ここにテレムティアはおるか」

 馬車が俺たちの畑の前に止まると中から男が出てきて開口一番声を張った。

「テレムティア、ってなんだ」

 そう思いながら老婆を探すと彼女は額を地面につけていた。

「おばちゃん、どうしたんだい」

「マコトか。あれはこの辺りの領主、オーランド家の者じゃよ」

「そうなんだ、ところで」

「テレムティアかい。それはね」

 老婆がしゃべり切る前に俺は数人の男たちに囲まれた。

「老婆、尋ねるぞ」

 男の一人がしゃべりだす。

「はい。なんなりと」

「この男がテレムティアか」

「左様でございます」

 老婆は土下座したまま答えている。俺の言葉など入る余地もない。

「では連れていくがいいな」

「仰せのままに」

 そういうと男たちは俺を捕まえるとそのまま引きずるように歩き出した。

「ど、どういうことだ。どういうことなんだ。おばちゃん」

 老婆は俺の返事に答えず、じっと頭を畑につけている。

「話は中でする。ついてきたまえ」

 男は俺に意見することすらさせぬまま、馬車に運ばれた。


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「そんなことないさ。そんなこと」

「マコト殿」

「みんな、思い通りにはいかないんだ。それは俺だって、君だって。でも、でも生きていくしかないんだよな。俺も、君も。望みが叶わなくても、自分の使命のためにいきていくしかないんだ」

 それきり俺は黙り込んでしまった。

 こんな空気にしてしまったことに申し訳なさを感じたのか、ハーズベルグも巨体を縮こませて黙っている。

 重い空気のまま、俺たちは先の道へ進んだ。

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