4節 後 ロスターニャ当日
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
老婆に農作業を教わって一か月くらい経ったであろうか。なんとなくだが鍬の使い方もわかってきて、老婆の仕事を手伝っている、くらいは言えるようになってきた。
「お前さんが来てから仕事がはかどるわい」
老婆は毎日嬉しそうに言う。
「そりゃばあちゃんの教え方がうまいからさ」
「上手なことを言って」
慣れてくると正直この生活も悪くないと思い始めた。隣の頑固爺も最近はしゃべるようになってくれた。なにより俺自身が誰かにしゃべる事が増えた。あんなに楽しくないと思っていた会話やご近所づきあいを、今俺は楽しんでいる。
世界のどこに飛ばされたかは知らないが、このような生き方も悪くない。いや、もうあの世界に戻るのはうんざりだ。どこかわからない世界の片隅で農夫として一生を終える。それでいいじゃないかと考えている俺がいる。
「おーい。マコトゥ」
隣の頑固爺が少し訛ったしゃべり方で声をかけてくる。力仕事を手伝わせに来たのだろう。この世界では木暮誠とは言いにくいらしい。
「なんだい爺さん。なんかの手伝いかい」
「おう、わかっとるやないけ。さっさとこい」
ぶっきらぼうに言うとぷいとあちらを向いて歩きだした。
「じゃあばあちゃん、行ってくるわ」
「夕飯までには帰ってくるんだよ」
返事をして頑固爺の横に駆けていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「だから、もし私でよいのでしたら。そのお望みをかなえたいと考えまして」
申し訳なさそうな顔をしながら俺を見てきた。屈強な体に似合わぬ顔つきだった。声が震えている。相当緊張しているのだろう。
「いえ、むしろ私からこそ」
「ハーズベルグ」
「はい」
怯える子犬のような顔をした彼に、一言ぼそりとつぶやいた。
「俺たっての希望だ。ご教授をお願いしたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます