黄金の騎兵と遺されし双刃
清泪(せいな)
誓い立てし者
巨大な
黄金の甲冑に身を包む巨躯なる騎兵は、その一撃を紙一重で避けた対峙する者に更なる追撃を加える。
空気を裂く音と共に水平に風圧が飛ぶ。
横転して
押し飛ばされた身体は荒れた草原へ落とされ、対峙する者の意識は遠退く。
朦朧とする視界で最後に見たのは巨躯なる騎兵の駆る巨躯なる黄金馬の蹄だった。
一人殺めようとも対峙する者は後を絶たない。
荒れ果てた草原にいくら骸を重ねようと黄金の騎兵の前に対峙する者は現れた。
それは別の存在であって、また同じ存在でもあった。
無限に続くかと思われる死闘は、いつも夢か幻の如く呆気なく蹂躙される。
あるいは巨大な黄金の
対峙する者達の表情を悔恨へと歪ませ、容赦なく消し飛ばした。
黄金の騎兵はその戦いに誓いを立てていた。
自ら望んだ誓い故、幾度と黄金の
対峙する者への情など無く、対峙する者への記憶も無い。
延々と繰り返される蹂躙に誓い以外のものなど存在しなかった。
対峙する者の構えた盾を弾き飛ばした。
それが何度目のことか、何人目のことかなど覚えてはいない。
黄金の騎兵が持つ
対峙する者は体勢を崩したまま横転して追撃に警戒する。
黄金の騎兵は
金属がぶつかり、鈍く甲高い音が鳴る。
対峙する者の手には元より持ち合わせていた今や折れた
横転した際に誰とも知らぬ骸から引き抜いた長剣。
両手に持った二本の剣を交差に構え、
黄金の騎兵の圧に押し潰されそうになるものの、二本の剣を滑らして前へと一歩踏み込んだ。
右手に持った折れた
黄金の騎兵の一撃に沈んだ黄金馬の姿勢が跳ね上がる。
黄金馬は痛みに
巨大なる身体が草原へと打ちつけられ、大地を揺らす。
砂埃や草や石が舞い散り、合わせるように対峙する者が暴れる黄金馬を踏み台にして飛び上がった。
冷たい感触が身体に突き刺さっていくのを黄金の騎兵は感じていた。
目に映るのは対峙する者の愉悦の表情だった。
初めて見るような、何度と見たような光景だった。
黄金馬が嘶き遠ざかっていくのが大地の揺れでわかった。
それは一つの終わりを知らせていて、また一つの始まりを知らせている。
ああそうだ、誓いはまだ消えはしない。
黄金の騎兵は薄れゆく意識の中でその感覚を思い出していた。
何度となく抱いた感覚を、思い出していた。
いつかの対峙する者の表情が夢か幻の如く、ぼんやりとしたまま脳裏に浮かんだ。
自分は今どんな表情をしてるだろうかと、誰の答えもない疑問を思い浮かべた。
黄金の騎兵と遺されし双刃 清泪(せいな) @seina35
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