第4話
最初の段階で外交官夫人から無視された上に『いないもの』扱いを受けたリリーは、当然というべきか、夫であるギルバート第一王子に泣きついたそうです。目に涙を溜めて「皆が私に意地悪をするの」とか「おば様方が若い私に嫉妬して嫌がらせをしてくるんだわ」とか「訳の分からない外国語で話しかけてきたのよ?どうして王国の言葉で話してくれないの?」など宣ったそうです。
伯父さまから聞かされた私はどこから突っ込んだらいいのか分からなくなりました。
「ギルバート第一王子に泣きつく前に、自分で外交官夫人との仲を改善しようとは思わなかったのですね」
「あの女にそんな器量はないだろう。寧ろ、悪化したようだ」
「まだ、ナニカしたのですか?」
「普通はしないだろう事をしたな。あれで王子妃だというのだから世も末だ」
嫌な予感がします。
伯父様が「クックックッ」と悪い顔で笑っているんですもの。
絶対に碌な事ではありません。
「よりにもよって、外交官夫人の夫に泣きついたらしいぞ」
「は…い?」
何か言いました?
耳が遠くなったのでしょうか?
それとも聞き間違いでしょうか?
「残念ながら、聞き間違いでも何でもない」
あら。心の声がいつの間にか口に出していたようです。
「涙ながらに外交官夫人達の行為を訴えたらしい」
「訴えてどうするのですか?仲良くして欲しいと、夫である外交官から夫人に取り成しでも頼んだのですか?」
「いいや。訴えただけらしい。もっとも、アレは訴えたというよりも夫人達への不満や愚痴といった方が正しいだろうな」
「御自分の妻の不満を言われて相手は気を悪くした事でしょうね」
溜息が出そうです。
余計に印象が悪くなるでしょうに。
「それがそうでもないようだ」
「と、言いますと?」
「なにせ、相手は若くて愛らしい王子妃だ。年配の男達にとっても悪い気はしないという事だよ。日頃から気位の高い妻を相手にしている分、見た目が弱弱しい王子妃から”相談”をされて庇護欲が湧いて者もいるようだ」
意味が分かりません。
「しかも、懇ろになった外交官が数名いるらしい」
……呆れる他ありません。
リリーはなにを考えているのでしょうか?
不貞など許されない行為ですよ。
離縁どころか毒杯を与えられても文句は言えません。
「これで秘密の関係にしていれば公にはならなかったのだがな」
「バレたのですね」
「バレたというよりも、元から隠す気が無かった、といった方がよさそうだ。妻である外交官夫人の前でさえ親密さを隠さなかったと聴くからな」
頭が痛いです。
一体全体、なにをしているのですか。
ギルバート第一王子も何故止めないのですか?
外交問題に発展するでしょう。
「マリアンヌの言う通り、当然、外交問題になった」
あぁ、いけません。心の声がまた口から出ていたようです。
「ノルデン王国側がかなり譲歩したようだ。外交交渉でも不利になる事を承知で王子妃の醜聞を抑え込んでいたからな。一応、
「公然の秘密という訳ですね」
「その通りだ。流石に下位貴族や一般市民は知らないだろうがな」
当然、リリーは『落第者』の烙印を押されました。
そして、外交に二度と出ない事を条件に、相手の夫人達は事を収めたそうです。それだけで済んで良かったですね、本来なら国際法で訴えられても仕方ありません。
相手も『若い王子妃』であったことも情状酌量の余地ありと思われたのかもしれませんね。
幾ら誘ったのがリリーからだとしても、世間が観れば、『世間知らずの幼い王子妃を誑かした悪い
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