#152 窮鼠が火を吐く
空を圧して爆音が轟く。炎の尾を曳き竜は飛ぶ。
三隻の
「進路上に船影! あの形状は間違いありません、“剣の船”です!」
「……ついに捉えたぞ“狂剣”め。いつまでも逃げおおせると思うな」
船橋にて、
船体から剣を突き出すなどという悪趣味な飛空船が他にあるとは思えない。あれがもたらした被害の数々を思えば、名を聞くだけでも腸が煮えくり返ろうというものだ。
彼は自制心を総動員して凶相をおさめると、背後の主を振り仰いだ。
「参ります」
「委細任せる。あれは我が国にとって大きな障壁となる、必ずや討ち取れ」
「御意!」
飛竜戦艦、ひいてはパーヴェルツィーク軍を統べる王女フリーデグントが鷹揚に頷く。
主命を背負いグスタフがさらなる戦意を滾らせた。
「各船へ伝令! 奴を二度と地に立たせるな、ここで仕留める! 倒された騎士たちの無念を晴らすのだ!
命令はただちに船内を駆け巡る。
飛竜戦艦の両側に接続された船が横っ腹を開いた。天空騎士団左近衛・右近衛の
飛竜戦艦を中心として竜闘騎が左右に広がり陣形を敷く。このまま敵船を囲みこんで押しつぶす作戦だ。
たった一隻の飛空船に対してはまったくもって過剰な布陣だが、それだけ必殺を期しているということであり、恨みが募っているということである。
彼らの戦意そのものであるかのように、竜闘騎に積まれたマギジェットスラスタが高らかな噴射音を奏でる。剣のように鋭い爪を構え、憎き敵へと殺到していった。
飛空船“
グスターボはしばし黙って目を細めて空の向こうを睨みつけていたが、やがてこらえきれない溜め息を漏らして振り返った。エルネスティもまた似たような表情で顔を見合わせる。
「あー、その、なんだ? あそこにばっちり見えてっとおもっけどさ」
「とても……懐かしい感じですね。お仲間ですか?」
「そー思うじゃん? ちっがうんだなぁこいつが」
やけ気味に残る茶を一息に呷って片付ける。
「なるほど、では敵ですか。困りましたね」
「本当におけねえったら。つってもあれが地上に降りてくんならたたっ斬るんだけどなぁ。空はどーしよーもねー。逃げるっきゃねぇわ」
「正しい判断です」
大敵を前に緊張感の欠片もない二人であるが、これでも極めて真面目にやっているのだから始末に負えない。
関わり方は真逆なれども、彼らは共に
仮に差し違えるがごとき犠牲を覚悟すれば不可能ではないかもしれないが、今はそのような場面でもない。
パーヴェルツィークにとっては雌雄を決する戦いなれど、彼らにとっては不本意な遭遇でしかないのである。
「ま、来ちまったもんはしっかたねぇか」
グスターボが億劫そうに立ち上がる。部下たちが慌てて机を下げていった。
彼はとぼとぼとブロークンソードへと歩き出し、途中で振り返ると背後に控える
「空かぁ。俺っちのブロークンソードも飛ばねぇかな?」
「トイボックスは僕のものです。あげませんよ」
「んな剣のすくねー機体は俺っちからお断りだっての」
ひらひらと手を振ってエルを追い払う。
「ま、こんな時にやることはひとつだろ。二手に分かれて、とんずらだ」
「いたし方ありませんね。どうやらここでお開きのようです」
エルがトイボックスによじ登ってゆく。操縦席に舞い込む彼の後ろ姿を見送りつつ、グスターボはふと呼びかけた。
「おいエルネスティ! ……
ブロークンソードの腕が空の一角を指し示す。
大きな危険が迫っているというのに律儀なことである。エルが本心から笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。あなたもご無事で。本当はもう会うこともないのが望ましいのですけど」
「はは! そんなこたぁ剣の向くままだ!」
胸部装甲が閉じ、エルの姿が視界から消える。
待機状態にあったトイボックスが急速に目覚めを迎えて動き出した。身を撓め、踏み込むとともに両肩から高らかに炎を噴き出す。
一息の間に上昇すると、そのまま母船へと舞い戻っていった。
「ったく、あんなもんが飛んでくるわ飛竜が出てくるわ。今日はずいぶん愉快じゃねーか」
ブロークンソードが船内へと戻ってゆく。
降下してゆく
「……くくっ。そうだよ。やっぱ
およそ考えうる最悪の危険に立て続けに襲われながら、それでもなお愉しげに笑う。それこそが剣の狂人グスターボなのである――。
“
「大団長、ご無事で。船影は確認しています。いったい状況はどのように?」
「面白い人と会いましたし色々な収穫がありました……が、無粋な客がやってきたということです」
船倉に並べられたもろもろをかいくぐって
「エールー君、おかえり! なんだか見覚えのあるのが来てるんだけど! ねー、あれって黒い船の仲間じゃないの?」
大量の小竜を吐き出し、飛竜はもはや大群といってよい規模で襲い掛かってきている。接触までさほどの猶予もない。
「アディ、皆も良く聞いてください! 今度の
「飛竜の情報が他国に漏れたという事ですか。だとしても本当にアレを建造するとは」
隠しきれない呆れが、ノーラの声音に現れた。
確かに飛竜戦艦は強力無比な戦闘能力を誇るが、建造費もまたそんじょそこらの飛空船の比ではない。かつて大国の名に恥じない力を誇っていたジャロウデク王国ならばともかく、まともな国ならば建造に二の足を踏むであろう代物である。
とはいえ実際に存在するのだから考えても仕方がない。切り替えて現状への対処を優先する。
「“銀の鯨号”ならば軽い分、速力ではギリギリ勝っているはず。アレがかつてと同じであれば、ですが」
「
「私、ツェンちゃんで備えてくる!」
「お願いします。僕たちは船橋へ。総員戦闘配置に!」
「了解!」
船員たちが一斉に動き出す。
エルとノーラが船橋に入ると、伝声管に耳を澄ましていた船員が声を上げた。
「大団長、黒い船から発光信号が届いてます! えー、“次はもっと派手にやろうぜ”……と」
「本当に面白い方ですね。丁重にお断りを返しておいてください。さて皆さん、ここからは全員そろって無茶をすることになりますよ。備えてください」
伝声管を様々な指示が駆け巡り、緊張が高まってゆく。
その頃には飛竜戦艦の巨体も、左右から雲霞のごとく迫りくる小竜もはっきりと形がわかるほどになっていた。
「機関出力最大。全速力で突破します!!」
“銀の鯨号”と“剣角の鞘号”が示し合わせたかのように同時に加速を始める。飛竜の放った咆哮が戦闘開始の合図となった。
「敵船、二隻とも増速!! 進路そのまま……つ、突っ込んできます!!」
「愚かな、空では自慢の剣とて振るえるわけもあるまいに。
「はっ!」
グフタフは鼻を鳴らす。どのようなつもりかはわからないが真正面から来るならば好都合である。悪名高き剣の魔人とて届かなければ脅威足りえない。空は竜が支配する世界なのだ。
飛竜戦艦が巨大な
その時、直進を続けていた二隻の船が動きを変える。にわかに二手に分かれると別々の方角へと進み始めたのだ。
予想できる動きである、竜闘騎の反応は素早かった。群れもまた二手に分かれるとそれぞれの船へと襲い掛かる。
別れた竜闘騎部隊の狙いの中心は、わかりやすく“剣角の鞘号”だった。“銀の鯨号”に向かったものは全体の三割ほどか。
「……おっとぁ。こいつぁ俺っちにばっかりきやがったな?」
「はは! 何しろかなり派手に略奪しましたから、恨み骨髄に徹していましょうなぁ」
「そりゃそうだが面白くねぇ。図体の割りにみみっちい奴らだぜ。ちっ、あんまり手札を見せたかねーんけっど」
「致し方ありませんな」
グスターボが船長席でふんぞりなおしたちょうどその時、伝声管の向こうから準備の完了を告げる報告が届いた。
「おーうし。パーヴェルツィークさんよぅ?
船体からこれまで以上の振動が伝わってくる。“剣角の鞘号”の機関室では、船員たちが猛り狂う獣の手綱を必死になって取っていた。
「ダルボーサ、全機連結完了!」
「魔力流量増大、強化魔法規定値に到達!」
「機関準備完了、いつでもいけまさぁ!!」
グスターボが船長席から身を乗り出す。
「よしオラァ!! 気合入れてけぇ! 剣角隊のォ! ……逃げ足みせてやんよォ!!」
「よっさほいさー!!」
“剣角の鞘号”が後部を開く。そこから覗いているものは大量の
悲鳴のような吸気音。絶叫のような爆音。
長大な朱の炎を噴きだして、黒の剣が非常識な加速を始める。十分な強化魔法をかけていなければ推進器だけが船体を突き破っていたであろう、加減も何も考えない全力全開だ。
その姿を目にして、離れつつある“銀の鯨号”では船員たちが呆れたような表情を浮かべていた。
まさしく剣ならぬ矢のごとくに飛翔する“剣角の鞘号”。しかも当の剣角隊には余裕などまったくない。
「おい……コレ! ちゃん……と! 操船っできてんっだろっ……うな!」
「ぶつから……なければ! 操れなくても! よい……かと!」
「はっはぁー!! 祈るか!?」
馬鹿が飛ぶ。
“剣角の鞘号”にはかつて初代飛竜戦艦にて実用化された推進装置が形を変えて搭載されている。機能を絞りに絞っただけ性能は高く、戦力ではとうてい及ばなくとも足の速さだけなら超飛竜級なのだ。
何かの冗談のような速度でぶっ飛ぶ“剣角の鞘号”をみた竜騎士たちが、唖然とした表情で叫んだ。
「飛空船が!? 竜闘騎ではないのだぞ!!」
叫びはもはや悲鳴じみていた。“剣角の鞘号”がやっていることは限りなく暴挙に近いものだ。正気のまま挑めるようなものではない。
「……追うぞ! この機を逃すなど竜騎士の恥だ!!」
仮にも飛空船にできることが空の狩人として生み出された竜闘騎にできないわけがない。間違いなく命がけになるが目の前にやってのけた馬鹿がいる。
竜騎士が度胸において後れを取るなど許しがたいことだった。
「
唸りと共に竜闘騎に搭載された
軽量・大推力の利点を生かし“剣角の鞘号”を上回らんばかりの速度で食らいつく。
史上空前、人類が到達した最高速における追走劇の幕が、ここに上がった。
黒い飛空船が、竜闘騎が彗星のごとく空を翔ける。ほんの僅かでも加減を間違えると機体は分解しすぐさま空の塵と化すだろう。
こみ上げる恐怖を度胸と執念で乗り越える。
「……奴の、速度を、落とさねば……!!」
竜闘騎が顎をひらき法撃を放つ。
宙に幾筋もの火線が伸びるも命中には至らない。互いに加減を投げ捨て未知の速度域に頭を突っ込んでいるのだ、狙いをつけるどころの話ではない。
「げっへぇ!? 気合入ってんじゃねぇかよ!」
“剣角の鞘号”の船体がびりびりと震える。さしもの
たった一発の法弾でも浴びれば無事に済むとは思えない。少し船体が傷つくだけでもねじれて分解しかねない、自壊一歩手前の速度を出しているのである。
「いいぜぇ……受けて、立ってやる! おい、ここは任せんぞ!」
「……ご武運を!」
「んなもんいくらでも持ってらぁ!!」
馬鹿は動く。狂気と狂風吹き荒れる甲板へと。
いかなブロークンソードと言えど、まともに立つことすらままならない。甲板にへばりつくようにして暴風に耐えるのが精いっぱいだ。
「オラ、こいつは勲章だ! くれてやっからブチ死にな!!」
馬鹿の狂気は今、極限に達する。剣が斬るものは何か。風か、敵か、いったい何を見出したのか彼以外に知るものはなく。
ただ結果として、ブロークンソードは操られるがまま短剣を投擲した。
ギュルギュルと回転しながら舞う短剣が空中に奇妙な軌跡を描き、異常なまでの正確さで、後を追う竜闘騎へと襲い掛かる。
「……!?」
全てを速度に傾けていた竜闘騎に、回避という選択肢はなかった。
竜騎士が叫びをあげる暇すらない。彼は自分が何をされたかもわからなかったかもしれない。極限に挑む速度の中、飛来した短剣が突き刺さって破壊されたなどと、理解しないほうがいいのかもしれない。
だが結果は残酷なまでに明確だった。
短剣を受けた竜闘騎が一瞬で制御を失い、ねじれるように引きちぎれた。
悲劇は一機だけにとどまらない。砕け散った竜の躯体は、そのまま凶器と化して後続の竜闘騎へと襲い掛かったのだ。
少なからぬ竜闘騎が巻き込まれ空の藻屑と化す。全てを意図したわけではないだろう。しかし馬鹿が馬鹿を貫いた結果、阿鼻叫喚の地獄が現出していた。
「ちくしょう! ちくしょうがッ!! 散開! 散開ッ!」
被害を出した竜闘騎は進路を迂回せざるを得ない。その間にも“剣角の鞘号”はどんどんと距離を稼いでゆく――。
黒の船が馬鹿で突き抜ける一方、“銀の鯨号”にも竜闘騎が迫りくる。
こちらを追ってきたものは比較的少ないとはいえ、飛空船一隻を墜とすには十分すぎる数だ。
船に備え付けられた
互いに法撃を浴びせあいながら浮遊大陸の空を翔けてゆく。
「簡単には逃がしてくれないようですね」
耐久性と火力では飛空船が、速度では竜闘騎に分がある。このままではすべての敵を撃墜しなければ逃げ切ることができない。
方策を思案していると、突如として周囲の竜闘騎が離れていった。
さきほどまでの執念を感じさせない唐突な動きである。訝しむ面々の中、叫びが上がった。
「大団長、あれです!
報告を聞いたエルが表情を険しくする。硝子窓の向こうでは巨大な戦闘艦が長大な船体を傾けていた。
「小竜が離れた……なるほど。こちらに狙いを定めてきたということですね」
軋みと共に旋回を終えた飛竜が顎門を開く。奥底から湧き出てくるのは破滅の獄炎。史上最強の対飛空船・対城塞魔導兵装“竜炎撃咆”だ――。
恨み募るのは狂剣なれど、勝手に射程の外までブッ飛んでいってしまった。いきおい狙いは“銀の鯨号”に向いてきたのである。
非常に迷惑なことではあるが降りかかる火の粉は掃わなくてはいけない。
エルは最後部まで続く伝声管を開くと声を張り上げた。
「アディ、準備を。合図とともに彼らに贈り物をさしあげてください」
「りょーかーい! いつでも大丈夫よ!」
元気のよい返事とともに“銀の鯨号”の甲板が動きを見せる。ずらりと並んだ覆いが開き、中から凶暴な槍の穂先が覗いた。
互いに奥の手たる武器を向けあい張り詰めた静寂が流れる。
次の瞬間、飛竜戦艦の船首奥からひときわ強い光が漏れだした。
「いまです!!」
その機を逃さず、炎を放って槍が飛んだ。
飛空船殺しの魔槍、
「クシェペルカの魔槍だと!? 狂剣と共に……? ええい、考えるのは後だ。迎え撃て!!」
空に炎の軌跡を描いて飛来する多数の魔槍。飛竜戦艦であっても危険な攻撃を前にグスタフが叫ぶ。
退避していた竜闘騎が反応し迎撃に移るが時すでに遅し。伝えられる魔力の全てを速度と威力へと変換した魔導飛槍が、あっさりと竜闘騎を振り切った。
「間に合わんか! もろともに竜炎撃咆にて焼き尽くせ!!」
構わず飛竜が炎を放つ。
眩い光に飲み込まれ魔導飛槍が消し飛んでゆく。
やがて光がおさまった後、空には迫りくる何ものも残ってはいなかった。
「被害報告を。それと敵船を探せ、急ぐのだ!」
「はっ!」
伝声管の向こうからは喧騒だけが返ってくる。飛竜戦艦は巨体ゆえに把握に時間がかかる難点があった。
グスタフは遠望鏡を掴むと硝子窓に駆け寄る。見張りからの報告を待ちきれず、自らの目でもって周囲を探し回る。
そうして見つけた。空の一点に瞬く炎の輝き、背を向け全力で去り行く敵船の姿を。
「なんということだ……竜の炎を避けたというのかっ」
彼には知る由もない。“銀の鯨号”を駆る船員たちが竜炎撃咆の特性を十分に把握していることなど。
さらに必殺の威力を秘めた魔槍の嵐すらただの誘導であり、かつ目眩ましであったことなど。
鮮やかに切り札を切って見せた敵船は、すでに竜の爪を逃れつつある。
「たかが一隻の飛空船で飛竜戦艦を手玉に取るとは。狂剣の他にも恐るべき手練れがいるというのか……」
竜闘騎が慌てて追撃に移る様子を見ながら、グスタフはおそらく逃げ切られるであろうことを悟っていた。
しばし時が過ぎて。
すっかりと静けさを取り戻した空で、帰還した竜闘騎が翼をたたんでいった。舞い戻った竜騎士たちは項垂れ、グスタフへと苦し気な報告を告げる。
「途中まで後を追いましたが、航続距離の限界によりそれ以上の追撃を断念しました……。我らの失態です、言い訳のしようもございません」
グスタフは何かを考えていたが、やがて口を開いた。
「お前たちだけではない。これは我ら天空騎士団全ての敗北である」
竜騎士たちが言葉もなく項垂れる。
飛竜戦艦と竜闘騎があればいかなる飛空船とて物の数ではない。そう信じていた竜騎士たちにとっては己の足元が崩れるような衝撃的な出来事だった。
「だが同時に、得難い経験であり情報であった。リンドヴルムのみならず竜闘騎をも越えうる船がある。いずれの国であっても精鋭を送り込んでいるということだ」
この戦いはパーヴェルツィーク天空騎士団にとって完敗といってもよい結果に終わった。それは認めざるを得ない事実だ。
だがまだ緒戦が終わったばかり。浮遊大陸をめぐる戦いには続きがある。戦いに必要なものは剣ばかりではない。多くの犠牲を払って得た情報は、必ずや後に生きることだろう。
「殿下の命を受けながらこの失態。面目次第もございません」
グスタフと竜騎士たちが並んで平伏する。王女フリーデグントは小さく首を横に振った。
「皆、面を上げよ。私も目が覚める思いだ。飛竜は強力無比なる武具であるが、無敵には程遠いと知ることができた」
「殿下……」
「グスタフ、この空飛ぶ大地を狙う国は多い。ただ漫然と戦うだけで、これからも狂剣や襲撃者たちを退け続けるのは難しいだろう」
飛竜戦艦の強力さは依然として健在である。だがあらゆる物には向き不向きがあり、それだけで安泰とは言えないということだ。
「まず自らの足元を固めなおさねばならないな。……ハルピュイアといったか? この地に住まう者たちと話をつける」
この戦いを境目として、パーヴェルツィークは戦略の修正を余儀なくされる。
それはグスターボが望んだとおりに、空飛ぶ大地の混乱をさらに加速させてゆく契機となるのだった。
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