#150 剣と蒼は交錯する

 法弾が炎の尾を曳き宙を走る。


「貴様ら、いったいどこの手のものだ! ここをパーヴェルツィーク王領と知っての狼藉かッ!?」


 言葉に代り戦棍メイスの一撃が応えた。とてつもなく重い手ごたえ、盾で受けたはずのシュニアリーゼが怯む。

 ほんの数合も打ち合えば、敵の精強さを知るに十分だった。


 突如として現れ、鉱床街へと襲撃を仕掛けてきた正体不明の幻晶騎士シルエットナイト

 所属を示すものは何もなく、色合いも工夫のない黒一色。外見にしても優美とは程遠く、面覆いバイザーは打ちっぱなしの鋼板で視界を通すための穴だけが不気味に開いている。


 どこの誰とも知れぬ亡霊というわけだ。実にわかりやすく敵であった。


「おおかた孤独なる十一国イレブンフラッグスの残党であろうが……飛竜戦艦リンドヴルムがなくば容易いと思われたとすれば、ずいぶんな屈辱だ!」


 シュニアリーゼの操縦席で騎操士ナイトランナーが表情を歪める。敵は誇りも何ももたぬ暗闇に生きる者たちである。誇り高き北の巨人たちにとっては唾棄すべき存在だ。


「その覆いを引きはがし、素顔を曝してくれよう!!」


 槍を回し突きを放つ。何者をも刺し貫く槍の一撃はしかし空しく宙を切った。

 躱されたと気付くやすぐさま穂先を翻し、内側に滑り込もうとする黒騎士を横なぎで牽制する。飛びのいた敵の動きを追いかけ、逃げた先をめがけて背面武装バックウェポンが法撃を放つ。

 完全に捉えたかと思われた攻撃は、戦棍の一薙ぎによって吹き散らされた。


「くっ……この街を護っていた者よりもよほど腕が立つな。何故だ、何故それほどの力がありながら!!」


 忸怩たるものを抱くも、黒騎士は無言で襲い掛かるのみであった。


 白銀の鎧をまとうシュニアリーゼ。流麗な姿は西方にその名を知られ、槍捌きにおいて並ぶ者なしと評される。

 対する黒騎士の装いは柄の短い戦棍メイスと軽盾のみだ。間合いにおいてシュニアリーゼが圧倒するものの、黒騎士は両手ともに鈍器として自在に繰り出し強烈な圧力をかけ続けてくる。


「我らが攻め切れないだと……っ!?」


 さらに背面武装の使い方も巧みだ。攻撃と法撃を巧みに織り交ぜ、こちらの動きを的確に崩してくる。

 シュニアリーゼの乗り手はすぐに気づいていた。敵幻晶騎士の能力よりも、騎操士の腕前こそが脅威なのであると。


 ますます理解に苦しむ。これほどの腕前があれば影に甘んじる必要などあるはずがない。

 いずれにせよ難敵を向こうに、余計な考えを巡らせる暇はなかった。

 パーヴェルツィーク王国にとって障害になるならば打倒するのみである。


「おおおおおおっ!!」


 裂帛の気合と共にシュニアリーゼが踏み込む。全霊を賭した槍の一撃は最高の鋭さを持ち、もはや回避など許さない。

 だが黒騎士には届かない。


 差し出されたのは小型の軽盾。頑強さは足りずとも取り回しに優れた盾が、槍の一撃を強引にかいくぐる。そのまま穂先を滑らせ、致命的な攻撃を逸らしてのけた。


 間合いの内側に踏み込まれたことを悟り、シュニアリーゼがとっさに盾を引き寄せる。次の瞬間、黒騎士の背面武装が火を噴いた。

 シュニアリーゼの防御は間に合った。しかし槍を突き出していたところに衝撃を受け、体勢を大きく崩してしまう。

 騎操士の表情が歪む。これほどの隙を見逃すような敵ではない。


 当然の結果として、シュニアリーゼは追撃に叩き込まれた戦棍をかわせなかった。

 肩口へと強烈な一撃が打ち込まれ、メキメキと音を立てて装甲が歪む。衝撃は内部へと浸透し、結晶筋肉クリスタルティシューが砕け割れた。


 片腕がだらりと垂れ下がり盾を取り落とす。もはや体勢を整えるどころではない、無防備な獲物となり下がったシュニアリーゼへと法撃が叩き込まれた。

 爆炎は装甲を吹き飛ばし、北の巨人が踊るような動きで倒れてゆく。


「馬鹿な!? おのれぇッ!!」


 味方が倒される様を目にし、シュニアリーゼの騎士は槍を振り回して敵を牽制し、法撃を撃ち放った。

 近寄れば黒騎士の思うツボだ。距離を引きはがし、味方が態勢を整える時間を稼ぐ――。


 そんな彼らの思惑を無視して、黒騎士たちが奇妙な動きを見せた。有利であるはずだというのに、じりじりと後退を始めたのだ。

 シュニアリーゼの騎士たちは思わず安堵するとともに、心中には疑問が渦巻いていた。

 彼らは数を減らし、いましも絶体絶命であったというのに。さきほどまで激しく攻め立ててきた動きと矛盾するではないか。


 その時、下がり続けていた黒騎士が二手に分かれた。真ん中に開いた道を、一騎の幻晶騎士が悠然と歩いてくる。

 シュニアリーゼの騎士たちは今度こそ絶句した。


 それはあまりにも馬鹿げた幻晶騎士だった。頭に、胴体に、肩に腕に腰に脚にくまなく“剣”を装備した、奇怪極まりない装いをしていたのだ。

 だがシュニアリーゼの騎士に侮る気持ちは湧いてこない。むしろ真逆、彼らは黒騎士たちの正体を知るとともに絶叫していた。


「れ、連剣の装……!? 貴様ァ! まさか“黒の狂剣”だと……ッ!?」


 答えはなく、魔剣が抜き放たれる。陽光に煌めく数多の白刃、それが北の騎士が目にした最期の光景になった。



 無残にも斬り散らかされたシュニアリーゼの残骸を踏み越えて、黒騎士たちが進む。目指すは背後にある鉱床街だ。

 虹色の輝石をたっぷりと抱えた家畜を前に、黒騎士たちは容赦なく暴れまわった。


 わずかな見逃しも許さぬとばかりに徹底的に建物を破壊する。パーヴェルツィークのように支配するなどという考えは微塵もない。純粋な破壊と略奪だけがそこにはあった。


 地上最強の巨人兵器を相手に護る者なき街は無力だった。

 黒騎士たちは思うさま物資や源素晶石エーテライトを奪い去ると、遅れてやってきた飛空船レビテートシップにそれらを積み込んで悠々と去っていったのである。


 ――闇に踊るものがいる。

 黒騎士たちはなんの計画性もうかがわせない気まぐれさで浮遊大陸にある拠点を次々と襲撃していった。

 敵に回す勢力すら選ばない。彼らの動きは空飛ぶ大地にただただ破壊をばら撒く、病魔のごときものであったのだ。




 二隻の飛空船が並んで空に浮かんでいた。

 片方はごく普通の船であるが、もう片方がまったくもって意味不明なことなっていた。なにしろ船体から剣を突き出した、悪趣味な姿をしているのである。

 その船の銘を“剣角の鞘ソードホーン号”。最近の浮遊大陸を騒がせる、黒騎士たちの母船であった。


 船橋にて、船長席で寝こけていた“グスターボ・マルドネス”は部下からの声に目を覚ます。


隊長おかしら、渡し舟への荷渡しは予定通りに終わりました」

「おう。ごっくろう! んじゃあ出発すっか」


 “剣角の鞘号”は友軍と別れ、空飛ぶ大地に漕ぎ出してゆく。

 各地で略奪の限りを尽くしている黒騎士ことグスターボたちであるが、奪った物資はこうして別の船へと移すことで常に身軽な状態を保っていた。

 この作戦は彼らの神出鬼没さに一役買っている。


「今回の稼ぎも上々でしたな」

「けっこうなことじゃねぇか。なんせ故郷には腹ぁすかせたやつらがいっぱいだからよ、しっかり仕送りしてやんねぇとな」

「稼ぎ頭の辛いところです」


 略奪の限りを尽くした結果でなければ、もう少し殊勝に聞こえたかもしれない。


 かつては大国としてその名を知られたジャロウデク王国であったが、先の敗戦によって一気に転がり落ちていた。本来は国内を安定させることで精いっぱいであり、とても浮遊大陸まで手を伸ばす余裕はない。

 さりとて指をくわえて見ているのも躊躇われ――かくして少数にして精鋭である“剣角隊”のみがこの地に送り込まれた。


 剣角隊――それは“死の剣舞”グスターボを隊長として、彼と共に最前線から最前線へと渡り歩く歴戦の兵たちによる独立愚連隊である。弱体化著しいジャロウデク王国が持つ、唯一最強の刃といっても良い。


 そうして単なる嫌がらせであったはずが、神出鬼没でありながら狂った武力を誇る剣角隊は予想をはるかに超える成果を叩きだしてしまったのである。

 そも、気まぐれに一突きで心の臓を貫いてゆく辻斬りなど誰にも防ぎようがない。


 そうして剣角隊によりもたらされた源素晶石は、苦境にあえぐジャロウデク王国に一時の安定をもたらした。

 そのために故郷では彼らの評価が天井知らずに上がっていたりするが、遠く異郷の地にあっては関係のない話である――。



 航空士ナビゲータは難しい表情でイレブンフラッグスより強奪した地図を睨んでいたが、やがて顔を上げた。


隊長おかしら、そろそろめぼしい獲物も減ってきましたよ」

「んだろーな。どんな馬鹿でも警戒を強めるだろっし、なにより奴が動く」

「……飛竜戦艦ヴィーヴィル、でございますな」

「イレブンフラッグスぁどっでもいっけど、パーヴェルツィークが黙ってるこたぁねぇだろうな」


 見境なく破壊をばらまいてきた剣角隊はあらゆる勢力から畏怖と共に憎悪されている。

 しかし迎え討とうにも“彷徨う兇刃”とも仇名され恐れられるグスターボを倒しうる騎士は多くない。残る手段は丸ごと焼き払うのみだ。


「さすがにアレはなぁ。天の高くじゃあ、俺っちの剣も届きゃしねぇし」


 逆に言えば届きさえすれば倒せると考えているあたり、彼が狂人たる所以であろう。


「これは本格的に身を潜める必要がありそうですな」

「んでもよう、竜の巣穴だって一回はつついてみねぇとならねぇ。おそらくは古い馴染みがいるだろうからよ」


 彼らにとって唯一の脅威である飛竜戦艦。

 だがパーヴェルツィーク王国にあの船が作り上げられるはずがない。母国ジャロウデク王国ですら飛竜戦艦に関する技術の大半を喪失しており、建造は困難なのである。

 だからこそいるはずなのだ。世界で唯一それを可能たらしめる、あのやる気のなさげな男が。


「俺っちとしちゃあどうでもいいんだけどよ。ま、うちの王様ボスの手前もある。ちょっとシメてかねぇとな?」


 身に着けた多数の剣をじゃらりと鳴らし、剣の魔人グスターボは狂暴な笑みを浮かべる。

 恨みというほどのものはない。だがそこには確かに因縁が絡んでいた。


「したら当面はちまちま嫌がらせに出るとして……あ~、つっまんねぇな。もうちっと喰い応えがある奴ぁいないもんかね」

「ははっ。隊長おかしらを満足させられる騎士なんて、この世にいるんですかね?」


 グスターボの強さをよく知る隊員たちはそろって首を傾げていた。彼らとて幾多の修羅場をくぐってきた豪の者であるが、隊長はさらに物が違う。

 だからこそ彼を慕って人が集まり、剣角隊が出来上がったのである。


「ああ、いるさ。まだまだいる。ここじゃあねぇだろうけっど」


 意外なことにグスターボは笑った。口の端を歪め、心底楽しげに。彼に心酔する部下たちをして心胆を寒からしめるような笑みだった。


 一時、グスターボの心は遠くクシェペルカの地へと飛ぶ。

 瞼に映るのは銀の鳳を掲げた強敵たち。思い起こすのはたった二本の剣でもって立ちはだかり、彼の剣を打倒した紅の騎士。


「まだまだ砥がねぇとなぁ」


 いずれ来る再戦のために。

 彼が戦いへと向かうのは亡き養父の遺志を継ぎ、祖国を護るためであった。

 だが同時に、己を研ぎ澄ませるための試練を求める戦闘狂としてのさがもまた、確かにあったのである。


 その時、彼はふと違和感を覚えて顔を上げた。


「なんだ……?」


 空は晴れ渡り陽光が降り注いでいる。だというのに日が陰ったような気がしたのだ。

 最初は雲が出てきたのかと思った。だが直後に気づく、あれほどに鋭い形を持つ雲などあるはずもなく――あれは船であると。


 空に在る船の唯一絶対の死角、上空にそれはある。

 風を巻き起こさず爆炎を吐いて進む船。遅れて推進器のたてる騒音が届く。その甲板から巨大な影が飛び上がった。


 日の光を背負い黒々とした陰影と化した巨人。つかの間真っ赤な炎を吐き散らすと、あろうことか空を駆ける。


「…………!!」


 ぞくりと、肌が粟立つような悪寒が走った。ありえないと叫ぶ理性を蹴りつけ、彼は自身の予感を信じて動く。


船内うちは任すんぜ!」

「お、応!」


 言うなり駆け出した。飛ぶような速度で通路を駆け抜け、待機中の幻晶騎士の操縦席へと飛び込む。

 曲芸的な動きで身を翻して座席へ。起動桿を蹴り倒しながら、間髪いれずに動き出す。


 直後に叩きつけるような振動が来た。空を進むはずの飛空船が地震に見舞われるはずがない。

 昇降機の動きを待ちきれず、グスターボは甲板上へと飛び上がった。


「どこだぁっ!?」


 見回すも甲板に異常は見つけられない。だがそんなはずはない、先程確かに何かが降り立って――。

 視界の端をわずかに影が過る。ほぼ勘に頼った動きで剣を振るった。


「しゃらっしゃあぁッ!!」


 直感の導くままに放った一閃。軽い手ごたえと共に炎の朱が散り、巨大な影がぐるりと回る。

 常識の外を飛び、それはわずかに距離を取って甲板に降り立った。


 剣を構えたまま凝視する。それは蒼い騎士であった。


 空の深くを表すような濃い色合いに、縁取りにある金が眩しい。やたらと大ぶりな肩装甲と奇妙に扁平な頭部が特徴的である。

 陽炎を吐き出し炎を収め、背にある妙な付き方をした装甲板を折りたたむ。


 剣の一つも持たない素手のまま、ゆっくりとグスターボに向き直った。

 面覆いの奥に眼球水晶のぼんやりとした光がある。金属と結晶により形作られた巨人の鎧、幻晶騎士。


 幻像投影機ホロモニターを通してすら感じられる圧力に、我知らず口元に笑みが浮かんだ。


「単騎で飛び出て、乗り込んでくるってかぁ!? いいぜ、気合入ってんじゃねぇかよ!!」


 たったの一機で、しかも宙を駆けて敵船に乗り込むなど狂気の沙汰だ。

 躊躇いなく実行したということはそれだけ自信があるということ。彼は既に強敵であることを微塵も疑っていなかった。


「おいおい! ここは俺っちの船だぜ。余計な荷物はお断りなんだけっどよ!」


 剣を突きつけ、軽い警告。


「それは失礼をいたしました。突然の無礼はお詫びします」


 返ってきた言葉は、耳を疑うほどに可憐であった。

 幻晶騎士の拡声器を通してすらわかる、幼子のように透き通った声音。さしものグスターボも混乱し、斬りかかることも忘れて睨みつけた。


「噂の空飛ぶ大地に来たはいいものの、実は道に迷ってしまいまして。よければ教えていただきたいことがあるのですが」

「…………は! はははははは! 随分と! ふざけてくれんじゃねぇか!!」


 グスターボは幻晶騎士の操縦席で腹を抱えて笑っていた。言い訳にしても無茶苦茶だ。自分のことは棚に上げて、頭がおかしいのではないかとすら思う。

 だが彼はそういう馬鹿が大好きなのである。

 ひとしきり笑いを収めて、じっくりと蒼の騎士を眺めまわす。


「おうおう、幻晶騎士で飛んできやがったな? ずいぶん色々積み込んだ騎士だ。そういう戦い方をする奴らには覚えがあるぜぇ」


 クシェペルカ王国への侵略戦にて戦った、奇妙で強力な騎士たち。目の前の蒼の騎士がその仲間であることを、彼はほとんど確信している。

 そうして特徴的な騎士に乗っているのは、彼もまた同様だ。


「僕も聞いたことがありますよ、連剣の黒騎士……いいえ、“黒の狂剣”さんとでもお呼びすれば?」

「何とでも。へっ、なるほど、なぁるほどな。そりゃあそうだ、これだけ美味しい餌に寄りつかねぇわけがねぇか」


 俄然面白くなって来た。つまらない雑魚ばかりを相手にして倦んでいた心が燃え上がる。

 “狂剣”と戦う者は、空を翔けて乗り込んでくるくらいに狂っていなければならない――。


「おめーの名前を聞かせろ。“剣”の使い手じゃあーねぇが、かなりヤるみてーだしよ?」


 蒼い幻晶騎士は腕を広げる。


「エルネスティ・エチェバルリア、通りすがりの旅人です。こちらは僕の相棒“玩具箱トイボックス”。よろしくお願いしますね」

「は? バッカじゃねーの? おめーみてーのがほいほい通りがかってたまっかよ! グスターボ・マルドネスだ。俺っちとこの“ブロークンソード”が、ぶった斬ってやんよぉ!!」

「それは実にご遠慮したいところ!」


 剣を抜き身を撓め、ブロークンソードが動き出す。同時にトイボックスの肩から爆炎が生み出された。

 飛空船“剣角の鞘号”の甲板を舞台に、狂気と狂剣が交差する。



【後書き】


・シュニアリーゼ


パーヴェルツィーク製新鋭量産機。

西方諸国オクシデンツにおける東方様式の技術はジャロウデク王国から流出したものが大半であり、再現が中途半端なことで性能が不十分なものが多かった。

本機の開発には元ジャロウデク王国の鍛治師長オラシオ・コジャーソが関わっており、そのため技術的な完成度の高い強力な機体に仕上がっている。

バランスの良い構成をもち、伝統的に槍を主武器とする。

白銀に輝く流麗な装甲は西方随一の美しさとの呼び声も高く、北の巨人の名にしおうものであった。




・ブロークンソード


大西域戦争ウェスタン・グランドストーム後、乗機を失ったグスターボはティラントーをはじめとして様々な機体を転々と乗り換えて戦っていた。

しっくりと来た機体はなかったが戦果は着実に挙がっており、その褒賞として彼のために専用機が与えられる。

本機は基本的にかつての愛機ソードマンを再建した機体であり、一部にデッドマンズソードの技術を融合している。

とにかく激戦区を好んで現れ、理不尽な活躍を見せつけた本機は“死の剣舞”“騎士食らいの魔剣”“黒の狂剣”“彷徨う兇刃”など数々の異名とともに恐れられることになる。


このグスターボ率いる部隊“剣角隊”は、圧倒的な戦果ゆえに大変に優遇されており、専用の飛空船すら所有している。

だが実体は危険中毒戦場馬鹿の集まりだった。




・ダルボーサ


ジャロウデク王国製新鋭量産機。

敗戦後の弱体化著しい王国を護り支えた名機として知られる。

しかし実体は程遠く、新鋭機とは名ばかりのティラントーの廉価版であった。

過剰であった性能を削りに削って標準的な躯体に収めたわけであるが、その分強みのない機体にしあがっている。

ただし強力だが癖の強かったティラントーよりも扱いやすい点だけは評価されている。


そんな本機が名機と讃えられるのは、主にグスターボ配下の者たちの活躍による。

狂剣とともに激戦区を渡り歩いた彼らは精鋭中の精鋭であり、安く仕上げられたはずの本機を過剰に目立たせてしまったのだ。


浮遊大陸に投入された機体は素性をぼかすために外装を隠密機であるヴィッテンドーラ風に変更しており、本来の姿とは異なる。




・トイボックス(Mk.2)


カルディトーレを基にしてエルネスティの乗騎として改修を施した機体。

イカルガを強く意識して作られており、設計には類似の構成を持つグゥエラリンデの要素も参考にされている。

それらを再調整する形で設計されており、名目はともかく事実上の新鋭機となり果ててしまった。

ただ突貫作業で建造されたためバランス調整は紙一重のキワモノで、やはりエルネスティが乗らなければまともに動くことすらできなかった。


搭載される炉は単発であるものの改良が続けられた装備群は燃費を向上させており、それなりの稼働時間を確保できた。

それでも油断すると魔力切れを起こしやすい気難しい機体である。

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