シーン(9-1)
【サンタクロースにラブレター(前編)】
タビサはビルへの手紙を書こうとするが、書けない。
ビルのことを考えていくと、タビサは自分の心に正直になりたくなっていく。
◯タビサとビルの部屋(夕方〜夜・晴れ)
BGM タビサのテーマ(?)
タビサ「今頃、ビルはプレゼントの配達中、か」
タビサ「仕事だから、しょうがないよね」
タビサ「特に今日は特別な日だもの」
タビサ「(ため息)……」
タビサ「手紙……か」
タビサ「書いたことないよ」
タビサ「メールだったら書いたことあるけど」
タビサ「というか、今はメールすら返信できないっていうのに」
タビサ「……手紙なんか、馬鹿馬鹿しい」
タビサ「でも……」
レイチェル(タビサの回想)「手紙だったら伝わるかもね」
タビサ「ううん、やっぱり書こう」
タビサ「(しばしの沈黙)」
タビサ「あ〜! ……やっぱり、書けない」
タビサ(「別れよう」も「もう疲れたよ」も書いて、捨てた)
タビサ(どんなに言葉を重ねても気持ちがビルには届かないような気がする)
タビサ(そんな気持ちに従って、書いては捨てて、書いては捨てた)
タビサ(……ずっといっしょにいるのにビルの心を私は知らない)
タビサ(ビルはクリスマスが好き。仕事が好き)
ビル(タビサの回想)「俺たちは軍人や医者と同じなんだよ」
ビル(タビサの回想)「必要とする人がいるのなら行かなくっちゃいけない」
タビサ(それを信念に、たった一日だけのために働いている)
タビサ(そんなビルが私は好きで、嫌い)
タビサ(私はポップスが好きだけど、ビルは音楽は聞かない)
タビサ(ビルは音楽より雨の音が好き)
タビサ(あ、そういえば――)
ビル(タビサの回想)「俺は君とこの部屋で雨の音を聞いていたいんだ」
タビサ(だから、雨の日はテレビもラジオもつけずに部屋でずっといっしょに過ごす)
タビサ(ビルの好きな物は思い浮かぶのに、ビルへの言葉はまったく思い浮かばない)
タビサ(ビルは心のままに好きなものを好きでいる)
タビサ(……そんな正直に生きる彼が好きだったなあ)
タビサ(私はどうだろう。全然、そうじゃない)
タビサ(……私も心のままに)
タビサ(いや、でも……)
タビサ(うん、決めた)
タビサ(心に従おう。……正直になろう)
タビサ(――もう、思ったことを書こう)
タビサは手紙を書く
何度も書き直して、ようやく完成させる
タビサ(よし、これでいい)
タビサ(やっと書けた)
タビサ(私の心はこう言ってるんだな)
タビサ(ああ、でも……)
タビサ(こんなに簡単だったんだな)
タビサは窓の外を見る
タビサ(もう、こんな時間)
タビサは手紙を枕元に置いて眠る
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