第2話 それぞれの事情
~次の日〜
看護師が朝食の片付けをしていると1人の女性が病室に駆け込んできた。
「陽太!良かった、目が覚めたのね!」
「母さん!心配かけてごめん…」
「ううん、陽太が無事でほんとに良かった…」
女性は彼を優しく抱きしめ安堵した様子だ。
どうやら彼女は母親らしい。
「仕事あるから長居できないけど、何かほしいものがあれば連絡してね?」
「おう!ありがとう!」
そう言うなり看護師へ一礼をして、駆け足で病室を出て行った。
「三倉くんのお母さん忙しそうだね。」
「あーうん。俺母子家庭だから、母さんが頑張って働いてくれてるんだ。俺もバイトしてたけど、当分行けないよなー…」
そんな様子を見ていた月夜が話すと、彼は母親が出て行った先を見つめながら自身のことを語る。
「あの…ごめん。」
「いいよ、いいよ!気にしてないから。俺は他より悪い境遇だって思ったことないからさ!」
「そっか、三倉くんはすごいね。」
「そうかな?でも運命は変えられないし、それなら自分なりに楽しく生きるのが一番かなって!」
「…!」
彼の言葉に月夜は一瞬目を大きく見開いた。
そして意を決したように話し始める。
「私はさ、生まれつき体が弱くて学校に行ったりできなかったから…皆が羨ましくて。なんで私だけって自分を恨んだこともあったの。」
窓の外を見つめる彼女は悲しそうな表情だ。
「それからずっと前向きになれなかったけど、三倉くんの言うとおり一度きりの人生楽しまなきゃ損だよね。」
月夜は彼の方に向き直ると、しっかりとした口調で話した。
陽太はしばらく黙って耳を傾けていたが、彼女の言葉を聞くとほっとしたように微笑んだ。
「それで…お願いがあるんだけど。」
陽太を見つめながら、彼女はもじもじしたように言う。何か伝えたいことがあるらしい。
「私と友達になってくれませんか?」
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