可愛すぎてかっこよすぎる幼馴染が、陰キャな僕の彼女になりたいと言い出した件

橘奏多

第1話 可愛すぎてかっこよすぎる

 僕――冨中拓人とみなかたくとには幼馴染がいる。

 彼女の名前は岩切美桜いわきりみお


 美桜とは小さい頃に家が近くて遊ぶことが多くなり、今でもお互いの家に行っては遊ぶ仲である。

 正直、陰キャで友達が少ない僕からしたら、放課後に遊ぼうと誘ってくれる美桜はなくてはならない存在だ。

 そんな美桜はこれからも一緒にいてほしい僕の幼馴染だが、ただの幼馴染ではない。


 『可愛い』一面があれば、『かっこいい』一面もある。

 つまり、『可愛い』と『かっこいい』の両方を持ち合わせた女の子、それが美桜だ。


 『可愛い』一面を見せる時は、誰が見ても可愛らしくて学校中の男子を魅了してしまう。

 『かっこいい』一面を見せる時は、誰が見てもかっこよくて学校中の女子を魅了してしまう。


 それ故に、今では美桜の人気はクラス中では留まらず、学校中の人気者になっている。



「拓人〜、早く学校行かないと遅刻しちゃうよ〜!」

「ん……おはよう、美桜」

「おはよう、早く準備してね」

「……わかった」


 朝になって目を覚ますと、制服姿の美桜が僕の目の前に立っていた。

 美桜を僕の寝坊で待たせるわけにもいかないため、颯爽と準備を済ませて外に向かう。


「待たせてごめん。行こうか」

「うん」


 そうして僕たちはいつも通り2人で学校に向かった。



「またあいつかよ」

「付きまとってんじゃね? キモいな」


 もう慣れてはきたけど、結構キツい。

 学校中の人気者である美桜とクラスでも陰キャな僕が一緒に歩いているというのは、普通の人が見ればどう考えても不自然に思うだろう。

 そして叩かれることも必然である。


「ちょっとあなたたち! 私が一緒にいたい人といる。それの何が悪いのか教えてくれる?」

「「それは……」」

「私を悪く言うのは構わない。でも、拓人を悪く言うのは絶対に許さない」


 美桜はいつもいつも、僕のことを悪く言う人たちに怒ってくれる。僕のために怒ってくれる。

 本来ならば男の僕がやらなければならないことだろうが、僕は無視した方がいいと思っていつも無視をしている。


 いいや、違う。

 無視をした方がいいと思っている、というのはただの逃げだ。

 僕はいつも美桜が守ってくれると思って、甘えてしまっているんだ。


「「ご、ごめんなさい!」」

「私に謝らないで拓人に謝って」

「「は、はい……!」」


 そして僕のことを悪く言った人たちは、僕の目の前まで来て深くお辞儀をして謝った。

 美桜の力は半端ないな、といつも思う。


「男子にも強気な姿勢の美桜さん、今日もかっこいいな〜!」

「憧れちゃうよね〜! 私、美桜さんみたいになりたい!」


 いつものように美桜が僕を悪く言った人を撃退し、それを見た女子たちが集まってきて美桜に拍手を送る。

 集まってくる女子たちの中には、美桜を見て顔を赤らめている人もいる。やはり人気者は違うな。


「美桜、ありがとう」

「もう、拓人は男の子なんだから私にかっこいい姿を見せて欲しいな」

「……ごめん」

「まぁ、それは置いといて……結構人も集まってきちゃったし、早く学校行こ!」


 美桜は僕の手を取り、走って学校に向かう。

 当然集まっていた女子たちは置いてきぼりだ。


 それからしばらくして学校に着き、憂鬱な授業が始まった――。



 6時間もの授業は全て終わり、早く家に帰ろうと立ち上がると、美桜が僕のもとに駆け寄ってきた。


「拓人、一緒に帰ろ!」

「うん」


 僕も美桜も部活には所属していないため、授業が終わればすぐに帰ることが出来る。

 最高だ。早く帰ってゲームがしたい。



 早速帰路に就いた僕と美桜は、いつものように他愛もない話で盛り上がっていると、目の前から車が近づいてきた。

 ここは狭い道で、車が通れば歩行者にとっては危ないとしか言いようがない。


「……っ!?」


 普通のスピードで車が近づいてきたと思ったのが、全然違かった。車はものすごく速いスピードで僕たちに近づいてくる。


「危ないっ……!!」

「きゃっ!」


 僕はギリギリで美桜を助けると、幸か不幸か僕が美桜に壁ドンをしている状態になった。

 そして美桜は僕の目を見ながら「あわわわわわ……!」と呟きながら顔を真っ赤にしている。


「ご、ごめん!」

「う、ううん……助けてくれてありがとう」

「……おう」


 僕もかなり恥ずかしかったが、幸い2人とも怪我はなかったし、無事で良かったと安堵のため息をついた。



 そして美桜を家まで送って、僕も帰ろうと歩を進めようとすると、背中に柔らかい感触とともに熱を感じた。


「み、美桜……!?」


 なんと美桜が僕に抱きついているのだ。

 僕はこのあまりにも予想外の展開に、驚きを隠せない。


「拓人、今日は本当にありがとう。かっこよかった。大好き」

「……え?」


 美桜が僕のことを大、好き……?


「私、ずっと前から拓人のことが好きだった。もし良ければ、私と付き合って欲しいな……」

「な!?」

「えへへ……結構恥ずかしいね、告白って」


 はにかむように笑う美桜。

 その姿を見た僕の体が、どんどん発熱していくことが分かる。


 僕だって、ずっと前から美桜のことが好きだった。

 『可愛い』一面や『かっこいい』一面のある美桜のことが、誰よりも大好きだった。


「ありがとう、美桜。僕も美桜のことが大好きだ。これからよろしく」

「うん……!」


 そして僕たちは再びハグをして、幼馴染の関係から恋人へと発展したのだった。

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