エピローグ

書類を大事そうに抱え、走る少女は、白髪の長い髪を揺らし民家へと駆け込む。

「やったわ!小さな島国だけど国として認められたわ!エデン国!国主として私とお兄様だけど、政治は国民主体で、民主制にするの」

「国から出てせっかく女王をやめたのに、また女王になるとはね……」

少し困ったように微笑むヴァネッサに、微笑んで言う。

「こうでしか、守り方、みんなの幸せの作り方、知らないから……だから、小さな国だけど、素敵な国にしようと思って」

「スレイがそれでいいならいいですわ!私たちは付いて行きますもの」

「ありがとう、エルリア姉様」


島へ移動しようと、荷物を纏めているときに、ヴァネッサの耳元にこっそりと話しかける。

「島の住居、真っ白な壁に青い屋根の海辺のお家なの。私たちの新居よ。お隣がエルリア姉様のお家なの!楽しみね!」

そう話すと、顔を真っ赤にされて抱きしめられてしまった。




「アル!!」

扉を開けて入ってくる存在に視線をやり、自然と体が動いた。

「ワリー、おかえり」

彼をやさしく抱きしめる。少しの間とはいえ離れていた時間が惜しいように。

「ただいま」

その足元で、ウォレスの足にひしっと抱きしめる小さな存在。

「おかえりー!」

「エリザちゃんも、ただいま!」

そう言われて彼女は満足そうに微笑んだ。

「ワリー、女王とスヴェンさんから話は聞いたか?」

「あぁ、国を作ったって?よくやるよなぁ」

「俺たちの家も、エリザのための学校も作ってくれるらしい。希少鉱石の採掘護衛にって仕事もあるらしい」

どうする?と言えば彼は笑顔でこたえた。

「アルとエリザちゃんが幸せになる道なら、行くに決まってるだろ!」



3人が住むのは海岸の見える高台の白い壁に緑の屋根。周りには花畑が自生しており、エリザがとても喜んだ。




「国見届けて帰ってきたら国作られてたってあるか?」

「坊ちゃんの妹らしいよな!突拍子もないとことかネ」

「そうか?」

新居である、みんなお揃いの白い壁に赤い屋根の家。小さいながらも住みやすい我が家だ。ルーベルの手にすり寄り、微笑む。

「でも、本当に信じられないくらい幸せだ。ルーベルとも安心して一緒に居られるからな」

「わーお、坊ちゃん大胆!」

「俺は、革命も命懸けだと思っていたから、生きていれるなんて思ってなかったんだ」

生きてて、よかった。お前も一緒で。そう微笑んで口づける。

甘く触れるだけのキスでお互い微笑みあった。





ソリッシュは一族ごと島国エデンに移住してきた。その時に遺骨を持ってきており、一軒家から少し離れたところに見通しのいい高台に墓が二つ並べてある。

あの国では並んで墓を建てられなかっただろう二人の墓だ。

「そりしゅ、もみんなでみまもる」

そう言って国の中を駆け回っている大きな狼は国のマスコットのようになったことは言うまでもない。

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セレガンティア王国記 @seregantia

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