第八章 新たなる風
それからの国は、どうなったのか。
結論だけを言うなら良くはなった。着服している腐敗した貴族を一気に、貴族爵位をはく奪し、罪を裁いた。その手際の良さに驚いたものだが、腐敗していた貴族から言われていた新王への言葉は「裏切者」だった。今までかけていた橋も外し、甘い蜜をすすることを許さないとでもいうように、無情にも切り捨てられていった。意義を示そうと徒党を組もうとした者たちには実力行使をしたときく。なんでも死体に氷柱が刺さっていたと聞くからだ。
つまりは、貴族の罪を罰せても許される立場になったからだと、考える。
次に、国は外交の道を開いた。今まで仕事がなかったものに仕事が舞い込んでくるようになった。外交をし、国益を増やす、簡単そうに見えて難しいことだろう。
ただ、疑問は残る。
なぜそれを女王が居るときに成せなかったのか。それを聞いてみたくなり、レリアントに話に言ったのがつい先日だ。
『女王は自分でなそうとするでしょう。ダメなんですよ。あんな幼い何も知らない女性が国政に携わるのは、汚職され切った国では利用されて終わる。僕がこの国の舵を握るために、僕のためにしたことです。そのために犠牲も必要だった。正直僕はあなた方二人とも殺したかったですけどね』
めんどくさそうにそう言って、書類仕事の邪魔です。と告げられ、部屋を出ようとしたときに、
『あぁそうだ。忘れ物です』
と、封筒を一つ渡される。
『女王の逃げ先の国行きのチケットです。貴方の仲間の人数分あります』
早く出ていけ、と言わんばかりのものにわずかに顔をしかめたら、
『次は貴族は貴方を利用しかねません。そうなれば僕は貴方を殺しますよ』
と冷たい目で告げられた。有無を言わさない口調にただ黙ってその部屋から出る。
隣国。女王の母君の出身国だったか。
「妹の亡命先、か」
そのチケットを持ちながら仲間の元へと帰る。もうこの国に革命はいらない。あの男は国を立たせきるだろう。そうなるならば、自分たちはいらないのだから。
「ソリッシュ、ウォレス、ルーベル……、俺たちも国を出よう」
「彼ら出ていったって?」
「えぇ。そうらしいわね」
ティリヌに茶を入れてもらい、パールと一緒に紅茶を飲む。
「それで、僕の目的は果たしたわけだけど、パールは望みとか無いの?」
「私の望み?ふふ、そうね……どうしようかしら」
「ティリヌも考えておいてよ」
「え、ティリヌもですか?!ティリヌは特には……」
紅茶のカップを飲み干し、新聞に目をやる。外交を始めたこの国には国外の情報も新聞に載るようになったのだ。
「僕には今、君たちに貴族爵位を与えることができる力があるからね」
言ったでしょう?ずっと、沈むまで、一緒だと。そう微笑みながら見た新聞の一部の小さな記事には。
【小さな島国、エデン国が建国。国主は若き双子の王と女王。特殊鉱石の採取が見込め、交易にも注目!】
セレガンティア王国紀 完結
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