ギレイス攻城戦④

【ブリュンヒルト中佐視点】


 ーギレイス宮殿 2Fー


 人類の裏切り者は誰か?


 思考する。


 調査隊にいるとしたら、妨害行為はセルコー討伐戦での雪崩のみ。


 それだと妨害が少なすぎない?


 だとしたら、やっぱり、作戦会議室にいた人の誰かかもしれない。


 そうなると、怪しいのは誰かな。


 当然、私じゃない。


 今までの功績から、バルタザール大佐とは考えにくい。


 そのとき、どこかから爆発音が聞こえた。


 炎かな。多分ローゼマリー中佐だろう。


 ここまで派手に戦ってるなら、裏切り者とは考えにくいね。


 なら、アルフレート少佐か、勇者のどちらか、ということか。


 記憶を頼りに、怪しい方を警戒しよう。


 思い出す。


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「アルフレート少佐、あれって何が書いてあるんでしょう」


 ガイネス戦役が終わった後、アルフレート少佐に尋ねたことがあった。


「えっと、あれは......」


 それで、アルフレート少佐は答えてくれだんだった。



「あの、目が良くないんですか」


 そう、アルフレート少佐は尋ねた。


 裏切り者だとしたら、探るために聞いてきたのかな。


 ......いや、さすがに考えすぎじゃないかな。


 そして、その場を後にしたとき、


「うわあいってぇええ!」


 外から、フランク少佐が叫ぶ声が聞こえた。


 さっき見えたけど、ゲルハルト少佐と何かしているのかな。


 しかし、騒がしいね。耳が良いのも考えものだよ。



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 ルガーデ殲滅戦で、敵を掃討するために地下に潜ったことがあったな。


 地下は空間が繋がっていて、戦う音が聞こえていた。


 それで、勇者とフランク少佐が一緒に潜っていたんだっけな。


 そこで、フランク少佐は勇者を庇って死んだらしい。


 そのとき、別に怪しい音は全く聞こえてこなかった。



 ーうわあいってぇええ!


 ふと、叫び声を思い出す。



 へえ、やけに静かに死んだね。


 


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 ーギレイス宮殿 3Fー


 勇者が、次の標的を探していた。


 氷の下にブリュンヒルト中佐が見える。


「『凍て付き穿つは粗目雪(Freeze Burst)』!」


 そう、大きな声で言った。


 交戦中か。狙い時だ。


 氷を突き破り、斬って殺しにかかる。


 終わりだ。



 だが、飛び降りた瞬間、巨大な氷は僕に向かって放たれた。


「ぐっ......!」


 攻撃を喰らい、腹が大きく損傷した。


 さっき、技名を叫んだのはフェイクか......!


 交戦中の敵は見当たらない。


 やられた......!


 そのまま、僕は吹っ飛んで窓を突き破り、奈落に落ちた。




「ブリュンヒルト中佐! 無事ですか!?」


 そのとき、人類軍が駆けつけた。


「ええ。あ、裏切り者は勇者でした。窓から落ちましたが。ほら」


 そう言って、破られた窓を指さす。


「相当の傷を負わせて、この高さから落ちました。死んだでしょう」


「......勇者が? ......そうか、感謝する」


 バルタザール大佐が謝辞を述べた。


「裏切り者は死んだ。なら、次に倒すべきは魔王だ。帰還するぞ」


「おおー--!」


 残った人類は、威勢よく、帝都へと帰還した。



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 崖に剣を突き刺し、勇者はしがみついていた。



 確かに、腹の傷は放っておけば致命傷といっていいだろう。


 それに、この高さだ。まず助からない。


 だが。



 光魔法で体を強化し、傷の回復を早める。


 このまま回復させて、崖をよじ登り、帝都へと戻ってやる。


 僕はこの力をお前らに見せていなかった。


 あいつらは、僕が死んだと思ってるんだろうな。


 残念、僕が一手上だ。



 魔王城最終攻略作戦で、お前らを根絶やしにする。





 The final chapter opens............

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