ギレイス攻城戦①

 ーギレイス攻城戦 道中ー


 見えた。

 時間帯は夜。

 深い崖の中に浮かぶようにして立つ宮殿。

 その敷地は広く、三階立てだ。

 その周囲は断崖絶壁であり、一本の細い道が通っている。

 四天王の周りに集まるはずの魔族は見当たらない。

 おそらくは崖の下に集まっているのだろう。


「到着だ。気を抜くな」


 幅数メートルほどの道の前に人類軍が到着する。

 その数は、最初とは比較にならない程減っていた。


「渡るぞ」


 横は谷底。

 慎重に、進んでいく。


 そして、今回も樽型爆弾が運ばれていることを横目で確認する。


 もうすぐだ。


 宮殿の入口まで、あと数歩。


 樽型爆弾の近くに、静かに移動する。


「突入だ!」


 人類軍が攻め込もうとする。



 そのとき、人類軍がいた橋の部分が崩れた。


「なにっ!」


 数人が落下するが、多くは後ろに取り残される。


「何か来るぞ!」


 谷底から現れたのは、巨大なゴーレムだった。

 確か前回は、「ガーディアン」とか言ってたな。


 それより前に出ていたのは僕を含めて四人。


 そして、僕は爆弾を一つ、隠し持っていた。

 さっき、ガーディアンが来る寸前に掠め取ったのだ。


「この野郎、叩き潰すぞ!」


 後ろの人類軍が、ガーディアンと戦いを始める。


 さて、そろそろか。


 目の前の扉が開き、四天王No4.ゴルゴーンの一体が出てくる。


「敵か!?」


 そのまま、瞬きの間に、前方の四人はそれぞれ宮殿の内部に転移させられた。



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【勇者視点】


 ーギレイス宮殿 3Fー


 よし、ひとまずは成功だ。

 ガーディアンの情報がなかったことで、爆弾を持ってくる隙が生まれた。

 あとは、この一個を上手く使わなくちゃならない。


 とりあえず、今はここに置いておこう。

 ここは三階だ。落ち着いて状況を把握しよう。


 そのとき、僕の後ろの窓が割れた。


 咄嗟にその場を離れ、戦闘態勢を取る。


「見つけた」


 窓を突き破って来たのは、黒い少女だった。


 こいつ......「悪魔」か


「あなたを始末しに来た。おとなしく死んで」


だよ」


 こいつとここで戦うのは得策じゃないな。

 引くか。


「逃がさないよ?」


 次々と闇魔法が繰り出される。


「逃げるだけ? 大したことないんだね」


 床を破壊しながら、階を跨いで戦闘が繰り広げられる。


「そんなに僕を狙わないでくれよ」


「あなたは危険。処理する」


 このままじゃ埒が明かないな。


「どこへ行くつもり」


 そのまま、上階へと上がって行く。


 そして、屋上へと辿り着いた。


「追い詰められたね。終わりだよ」


 夜の闇の下で、黒い少女は微笑んだ。


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【ブリュンヒルト中佐視点】


 ーギレイス宮殿 2Fー


 急に飛ばされた?


 状況から見て、ここは宮殿の中かな。

 闇魔法による転移、ってとこだろうね。


「あぶなっ」


 身を躱して、攻撃を避ける。


「なるほど。転移先で待ち伏せていたわけですか」


 目の前の敵を確認。


 形は人間の女性みたいだけど、肌が真っ白で目が真っ赤だ。

 おまけに、少し大きすぎる。化け物だ。


 さっきの攻撃は、爪を異様に伸ばして引っ掻く、というものだった。


 おそらくは、こいつが「ゴルゴーン」かな。

 まったく、外れ引いたかもなぁ。


 まあ、さっさと仕留めて仕舞いますか。



「『咲き乱れるは雪月花(Flower of Blizzard)』」



 空間に氷の花々が、咲き乱れて敵を襲う。


 しかし、それらは爪によって切り刻まれた。


「おっと。流石ですね」


 あの爪。大きくて、切れ味が鋭い。

 おまけに宮殿内は自由に動きづらく、さらに相手は人型の機動力がある。

 厄介だね。


「『天を穿つは氷雪山(Blizzard Lost Sky)』 」


 氷で山を築き、一時的に爪による斬撃を防ぐ。


 まったく、まさか珍しく氷を防御に使う羽目になるとは。


 しかし、やがてその氷も砕かれる。


 気付けば、私は、角に追い込まれていた。


 あーあ、これはかなりマズイですね。



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【バルタザール大佐視点】


 ーギレイス宮殿 入口付近ー


 前にいた者達が消えた......?

 どこかへ飛ばされたか。


 谷底から突き上がってきたのは全長三メートルほどのゴーレムのようなものだ。


 そうだな、宮殿を守護しているから、「ガーディアン」とでも名付けようか。


 とにかく、こいつを倒さないと先へは進めないらしいな。


「総員、目の前の障害を打破するぞ」


「了解!」


 まず手始めに、細切れにしてやろうか。


 拳を構え、45度回す。


 風を集めて、そのまま放った。


 風は、斜めから抉るようにガーディアンへ直撃した。


 ガーディアンに大きな傷はない。


 どうやら、材質、外皮が風を跳ね返すみたいだな。


「大佐、こいつ、固いです!」


 炎魔法や斬撃が、受け流されている。


 なるほど、どうやら強敵らしいな。


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【アルフレート少佐視点】


 ーギレイス宮殿 1Fー


 ここはどこだ?

 見たところ、どこかの建物のメインホールみたいだが。


 考えている間に、攻撃が飛んできていた。


「くっ!」


 なんとか躱し、状況を整理する。


 おそらくここは宮殿内。

 転移させられ、そこを狙われた。


「ぐっ!」


 敵の攻撃を剣で受け流すのがやっとだ。


 敵の容姿は普通の女性のようだが、髪が白く、目が充血したように赤い。


 そして、白い髪が蛇に変化し、自由自在に攻撃を繰り出してくる。


 この強さ。おそらく、四天王「ゴルゴーン」だろう。


 手助けはない。俺一人で、こいつを倒さなくちゃならない。


 やってやる。一人でだって......!!


 自分を必死で鼓舞し、敵へと突撃する。


 蛇は髪が変化したものだ。

 なら、下の方がやや安全じゃないか?


 そう思い、身を屈めて突き進む。


 しかし、甘かった。

 蛇となった髪は、まさに変幻自在に折れ曲がり、降り注ぐ。


「くそっ!」


 捌ききれず、あちこちに掠り傷を負う。


 やっぱり、俺一人じゃ、何もできないのか......!


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【ローゼマリー中佐視点】


 ーギレイス宮殿 2Fー


 突然、視界が入れ替わった。


 別の場所へ飛ばされたのか?罠かもしれないな。


 周囲を見渡している余裕はない。即座に、炎を振りまく。


 誰もいない......?


「ッ!?」


 急に、空間から何かが現れ、掠り傷を負った。


 こいつは......

 さっき、宮殿の扉から出て来た奴か。

 幼い少女の形をしているが、異様に白く、全く人間味がない。


 こいつが「ゴルゴーン」か。

 なら、早急に仕留めるッ!


「『火炎、縫火花(ヌイヒバナ)』」


 放射線状に炎が拡散し、対象を捕捉する。


 炎が接近した、そのとき、それは空間から消えた。


 やっぱり、こいつが転移を使うのか......!


 周囲を警戒して備えるが、突然現れ、背後からの奇襲を喰らう。


 危ないな。掠り傷で済んで良かったよ。


 武器は手に持ったナイフか。


 そして、また、ソレは空間から消失した。


 これを何とかしないとまずいな......







 The situation is bad......

 But they have to confront adversity............

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