作戦会議-Fourth-
【ブリュンヒルト中佐視点】
ーセルコー雪原ー
セルコー討伐戦が終わり、帰還が始まる。
そして、いつものように考え事を始めた。
やっぱり、何かおかしい。決定的に、違和感を感じる。
最初に違和感を感じたのは、ガイネス戦役での事故だ。
煙の流入と、火薬による爆発。
ただの事故というには、出来過ぎている気がする。
次に、ルガーデ殲滅戦での橋の崩落。
これは、橋の点検もしていなければ、乗った魔族の重さや風魔法による揺れなど、原因はいろいろと考えられるから、あまり怪しくはないが、引っ掛かる。
そして、セルコー討伐戦での雪崩。
あのとき、確かに爆発音が聞こえた。
吹雪により音が聞こえずらかったが、私の聴力なら間違いない。
そうだ......!
思い立って、音が聞こえたところにやって来た。
思っていた通り、あった......!
そこを見ると、不自然に地面が凹んでいた。
いや、さすがにこれだけじゃ言い切れない、よね。
何かないかな。
周囲を掘っていくと、黒い粉を見つけた。
火薬、っぽいね。きっとそうだ。
つまり、人類軍に裏切り者がいると。
そうか、なら、平穏を脅かす不届き者は始末しなくちゃ、ね。
とにかく、大佐に報告しよう。
------------------------------------------------------------------------------------------------
【勇者視点】
ー軍本部 作戦会議室ー
「それでは、これより、作戦会議を始めたいところだが......」
最奥の席で、大佐が話し始める。
「人類の中に、裏切り者がいる」
周囲がざわつく。
どうやら、感づかれたらしいな。
だが、問題はない。
「発覚したのは、セルコー討伐戦における雪崩の事故。あれが、爆弾を用いた故意のものだということが判明した」
再び、周囲がざわつく。
その中で、いつも通り、静かにしている奴を見る。
円卓の左側に座っている、ブリュンヒルト中佐だ。
そうか、感づいたのはお前か。
「この犯行ができるのは、事前に人類軍の進むルートを知っていた者のみ。つまり、ルートを開拓した先行調査隊の中に裏切り者はいる、と考える。よって、今回の作戦で調査隊は派遣していない」
思い通り、罪を被ってくれたな。
「でも、事前に知っていた、というなら、他にもいますよね」
ブリュンヒルト中佐が言う。
「そう、例えば、作戦会議室にいる人たち、とか」
「そんなッ!? この中にいるっていうんですか!?」
再び、周囲がざわついた。
へえ、そこまで踏み込んだか。
「この中で、いますよね。怪しい方が。急に勇者とか言って入ってきて、大した活躍もしていない人が。そういえば、フランク少佐は一緒に穴に潜って死んだとか」
「侮辱......だ。取り消せ。フランク少佐は、僕を守って、死んだんだッ!」
誤魔化すのにも慣れて来たな。上出来だ。
「いいや、こいつはやってないよ」
そこで、ローゼマリー中佐が言った。
「まず、デッドライダーの首を獲ったのはこいつだろ。そして、セルコー討伐戦では、私を身を挺して助けた。これに、裏切り者としてのメリットはない」
「やだなぁ。冗談ですよ、中佐」
と、ブリュンヒルト中佐が茶化すように言った。
「このまま話していても埒が明かない。作戦の概要を説明する」
大佐が話し始める。
「今回、知っての通り調査隊は向かわせていない。即ち、情報はかなり少ない」
狙い通り、だ。これで、大幅に不利になったな。
「今ある情報は、敵はギレイス宮殿に敵が潜んでいるだろう、ということだけだ。四天王No.4の情報はない。したがって、仮称『ゴルゴーン』とする。また、セルコー討伐戦にて現れた新型の魔族を呼称『悪魔』とする。こいつはいつ現れるか検討がつかない。警戒しておくべきだろう」
これだけの情報じゃ、大した作戦も立てられないな。
「よって、今回の作戦名をギレイス攻城戦とする。作戦場所はギレイス宮殿、討伐目標を仮称『ゴルゴーン』とする。情報はない。ただ、攻め落とすのみだ」
そうして、今回の作戦会議は終了した。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ーギレイス宮殿周辺 魔王城側ー
へぇ、あそこがギレイス宮殿か。
アリシデェタ様を脅かす者、光魔法の使い手。
私が、必ず始末してきます。
Next......
Attack down the Palace............
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます