凍解メルヴェイユ

【ブリュンヒルト中佐視点】


 自室の椅子に座り、紅茶を手に取ろうとする。


 でも、私は目が悪いし、とある事情で眼鏡を掛けることはできない。


 なら、どうするのか。


 紅茶の温度を感じ取り、確実に掴み取った。


 よし、やった!


 目が悪い分、他の感覚が研ぎ澄まされたらしかった。


 こんな些細なことで一喜一憂しながら飲む紅茶は美味いよね。私だけかな?


 まあいいや。


 え?何で眼鏡を掛けたくないのかって?


 そもそも、何で一人でブツブツ言ってるんだって?


 いや、だって、一人のときはやらない?一人で喋るの。


 とにかく、何で、眼鏡を掛けないのかっていうと.....


 思い出す。





「なんか、眼鏡掛けるとダサいよねぇ」


「クスクス、確かに」


「あははははは」


「う、うぅ......そんなぁ......」




 いや違うよ。こんな思い出ないよ。

 ダサいっていうのはあくまで建前だから。



 あれはそう、数年前のこと......



「お姉ちゃん、これあげる!」


 身体が弱い妹から貰ったものだ。


「これは......」


「掛けてみて」


 と、言われるままに眼鏡を掛けた。

 しかし、全く変わらない。度が合ってないのか、むしろ前よりも見えにくかった。


「あははははは!おもしろー-い!」


「え、そう?」


 というようなことがあり、他の眼鏡掛けるのも気分が良くないので、その眼鏡は机に仕舞っているわけだ。




 と、昔の思い出に浸りながら紅茶を啜る。


 やっぱり適当に思い出しながら紅茶飲むのはいいね。



 あ。紅茶なくなった。しょうがない、買いに行くかぁ。



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 買い物に出かけたところ、偶然知った奴と出くわした。


 誰だっけ。まぁ、とりあえず声掛けるかー。



「こんにちは、奇遇ですね」


「何の用ですか」


 やけによそよそしいね。あ、この人勇者か。


「いえ、見かけたものですから」


「そうですか。それでは」


 そう言って、勇者はとっとと去って行ってしまった。


 なんか尖った人だね。あれじゃあ生きづらいんじゃないかな?


 まあそんなことはいいよ。人類のために戦ってくれてるらしいし。


 妹の身を守るのに役立つなら、何だっていいよ。



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(ブリュンヒルト中佐、か。放っておくと厄介な気がするな。人類の始末に邪魔なら、迅速に排除したいところだ。だが、ああ見えて奴には隙がない。焦ったらこちらがやられる。慎重に殺さないとな)




 The story starts to freeze............





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