Episord of Zero part4

 ー三年後  帝都 外ー




 三年前の魔族の攻勢を何とか乗り切った人類に、再び脅威が訪れる。


 そのときの魔族の数よりも、格段に多い数が今、帝都へと向かって来ていた。


「来るぞ。迎え撃て」


 襲来する魔族へ人類が攻撃を始める。


「もっとだ、もっと喰らわせろ!」


 攻撃力の高い炎魔法が飛び交っていく。


 人類はやや劣勢で、何とか持ちこたえていた。



(よし、まずは十三体、一気に仕留める!)



「なんだ、あいつは......?」


 魔族の群れの中へ突っ込んで行く男に目を向ける。


「喰らえ」


 嵐が吹き荒れ、魔族を片っ端から切り刻んでいった。


「あいつ、風魔法で敵を斬ったのか!?」


「そんな馬鹿な!? あれほどの威力が出せるのか!?」



(あれから、レックが死んでから、俺は強くなろうと意気込んだ。その結果、風で敵を斬れるまでになったわけだ。まあ、まだまだあいつには届かないけどな。せいぜい、先に行ったあいつにカッコ悪いところは見せないようにしないとな)


「す、すげぇ......」


 暴風は地を吹き抜けていき、膨大な数の魔族を殲滅していった。



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 ー同時刻  帝都 外ー


「聖女様! 後は頼みます!」


「ええ、後は任せなさい」


 人類の中心にいる、聖女と呼ばれる人間が、手から大きな光を出す。


 そして、光をそのまま放り投げて、目の前の魔族を殲滅した。


(あいつ、アリシアか?ずいぶん大層な肩書きを得たよな、まったく)


「よし、やったぞ!」


(ほんとうは、聖女なんてやりたくなかった。けど、こんな私でも、頼りにしてくれる人がいるなら、頑張りたい。みんなを、助けたい)


「いいえ、まだ終わってません。気を引き締めて」


「......っはい!」


 そして、光は魔族を次々と倒していった。



 そのとき。


 瞬間、空から咆哮が轟いた。

 天から舞い降りて来たのは、大きな白い竜だった。


「なんだ......あれ」


「まさか、四天王じゃないか!?」


 また大きな咆哮が鳴り響き、竜の口が光って、波動が放たれる。


 それは雷鳴のように、地面へと落ち、辺りを破壊し尽くした。


 戦っていた人々の多くが、それに巻き込まれて死んだ。


(あいつは......確か、レックの故郷にいるはずじゃ......!? ここまで攻めて来たのか......!)


 そして、竜は地面へと降りて来た。


「くそっ、とにかく、帝都へは近づけさせない」


 急いで、竜の元へと向かう。


 そこには、一人の少女がいた。


「そこの人、少し手を貸していただけると。って」


「こいつを倒すぞ、アリシア」


 近づいて来たのが俺だとわかった途端、張り詰めていた表情が少し和らいだような気がした。


「どうする」


「一撃だけ防いで。あとは、私が叩く」


 一撃、防げばいいんだな。


 巨大な竜の前に立ち、構えた。


 竜はその翼を大きく広げ、素早く戻す。


 その攻撃は、風だった。竜の暴風が、俺に迫ってくる。


 とてつもない威力だ。だが、



 拳を固く握り、風を集める。

 そして、掻き集めた風圧を、竜の暴風へぶつけた


「くっ......!」


 多少押されたが、何とか相殺した。


「あとは任せて......!」


 俺の横をアリシアが通り抜けていった。


「はあああああああああ!」


 竜が口から波動を放つのと、アリシアが光を放つのは、ほぼ同時だった。



 双方は激突し、そして、


 竜の周囲は光に包まれて、何も見えなくなった。

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