ガイネス戦役③
敵首魁のデッドライダーを討伐するため、人類軍は突撃作戦を決定した。
そうして、今全戦力が一箇所に集まっている。
「撃てええええええぇえぇぇぇえ!」
炎部隊残存兵力の全てで放たれる業火は一時的だが魔族群に風穴を開けた。
そして、その両端を氷の壁が取り囲み、四天王へと続く道が完成する。
「行くぞ!」
掛け声と共に兵士達は背後からの突風、即ち全風魔法部隊による支援魔法に乗って駆け出す。
僕がいるのはやや後方だ。前方に見える、漆黒の影を背負った騎士のような怪物、デッドライダーの元へと突き進んでいく。
さて、ここからの展開は......
「デッドライダー射程圏内、撃ちます!」
放たれたるは瞬発の炎。しかしそれは
「何だ!?」
「何か巨大なものが、転がってきている!」
そう、これがヤツの切り札の一つだ。魔族を一箇所に凝り固めて球状にして地上を旋回させる。前回と同じだ。
「狼狽えるな! 魔族を集めて固めただけだ、叩き潰せ」
「喰らえッ! うおおあああ!」
球状の魔族、言うなれば《魔弾》に闇雲に魔法をぶつけている。しかしその強度は中々で、動きを止められていない。
「来るなあああああああああああ!」
「うわあぁぁあああああぁあああああ!」
次々と押し潰されていく人々を、僕は端の方で歩行型を片手であしらいながら眺めている。
ここで今回の敵、デッドライダーについて思い出しておこう。
奴は魔族の上位個体、呼称「四天王」の一体だ。
四天王は強力な闇魔法を使い、その周囲には魔族が集まる。
デッドライダーの主な能力は周囲の魔族を操ることだ。
これによって、帝都へ魔族を攻め込ませたり、魔弾を形成したりする。
デッドライダーが主力はこの魔弾だ。これに人類がどれだけやれるか、見定めておこう。
しかし、僕が見ると魔弾はほとんど潰されていた。激戦の末、作戦会議室にいた奴ら、人類の上位に位置する者がやったのだ。
魔弾を単騎で撃破するか。侮っていたわけではないが、やはり一筋縄ではいかないな。
後方で適当に戦闘していると、僕のいる方に巨大な球体が接近してくるように見えた。
これはどう見ても僕の方に向かって来ているな。
これはちょっと振り切れない。
この一体で葬れる人数を考えれば少々勿体ない気もするが、周囲に人は見られず、視線もない。ならば。
「なあ、お前。ひょっとして僕を殺す気か」
当然魔弾は答えない。そのまま僕へ突進してくる。
「身の程を弁えろよ、害虫共が。その程度で僕に触れようとするか」
溢れ出る不快感のまま、剣先に光魔法を込める。
「消え失せろ」
そして剣先が魔弾に軽く触れる。その瞬間、音もなく、ただそこにあったものは塵も残さず消滅した。
「いらない手間を増やすなよ、ったく」
そして再び視線を最前線へと向ける。
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全身を黒い布で覆った騎士のようなものが歩行型に騎乗している。
あれが魔族四天王、デッドライダーだ。
魔弾を全て失った今、デッドライダーはかなり劣勢といっていいだろう。
その背後から、一人が奇襲を仕掛けた。
だが、デッドライダーの切り札はまだ残っている。
その瞬間、突如地面から無数の棘が出現した。
その棘により攻撃を防ごうとしたが、即死を免れただけで、かなりの傷を負ったようだ。
(棘が出ることは初めからわかっていた。そして、負傷したデッドライダーはもはや人類の脅威足りえないことも。ならば、今僕が取るべき最善手は)
考えながら僕はデッドライダーへと走っていた。
タイミングにして奇襲を行った者が追撃を行おうと準備した直後、僕はその場所へと到着した。
「お前は......? 勇者か!?」
いきなり現れた僕にそいつが驚いたような声を上げる。
(僕がやるべきことはただ一つ。信用を得るため
剣に光魔法を込めて、既に衰弱していたデッドライダーの首を思い切り剣を横に振り切って刈り取った。。
そして......
「敵首魁、デッドライダー討伐完了しました!」
荒野へと朽ち果てた草原の中心で、ただ一人敵の首を持ち上げてそう叫ぶ。
第一の勝利に、状況を把握した兵たちは歓声を上げ始める。
そしてそれは連鎖して、遠くから見てもそれは伝わるほどだった。
(その歓声が、いつしか絶望の音色に変えるまで、僕は戦い続ける。
これはその序章だ。正しき魂ならば、神の赦しを得るだろう)
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ー魔王城 玉座ー
人類と四天王の戦いの決着を窓から見つめ、魔王はそっと呟く。
「まあ、奴は魔族上位種の中でも最弱だしな」
To be continued......
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