ガイネス戦役①
作戦会議からしばらくして、人類は行軍を開始した。
作戦名をガイネス戦役。
作戦場所は魔族領、ガイネス平野。
討伐目標は四天王No.1、呼称『デッドライダー』。
現在、目的地へと歩くこと数時間。
今のうちに、思考を整理しておこう。
ここが勝負所だ。
勢いづく前に人類の出鼻を挫いてやる。
なら、とにかく犠牲者を一人でも多くしよう。
人員は限られているんだ。
今回の戦いでやるべきことは決まった。目標を決めて、作戦を立てるとするか。
作戦名をガイネス戦役攪乱戦。
作戦場所は魔族領、ガイネス平野、人類陣営。
討伐目標は人類軍、およそ300体。
やってやるよ。僕にしかできないことを。
覚悟を決めて、目的地を見据えた。
「敵が見えたぞ」
先頭の方にいた一人が声を上げる。
「総員、戦闘配置!」
迅速に戦闘隊形が整っていく。
前方に氷部隊が並び、その後ろに炎部隊、そしてそのさらに後方に風部隊、近接戦闘部隊が続く。
前方に巨大な魔族の群れが見える。デッドライダーはこの奥にいるが、まだ姿は見えいない。
ーそして、人類軍と魔族群、その両者がいよいよ接近した。
「いくぞ、戦争開始だ!」
===== BOSS BATTLE ~Dead Rider~ =======
「壁を築け。奴らを近づけさせるな」
氷部隊が一斉に魔法を発動する。
そして、幅何メートルもの巨大な防壁が築かれる。
おびただしい程の魔族が壁へと迫りくる、が、防壁は、それでも何とか防御を崩さない。
壁のすぐ前に魔族が集まってくる。
「今だ。全弾、放て!」
合図と共に、炎部隊が同時にその手から火炎弾を放射した。
炎の矢は嵐の如く降り注ぎ、魔族の多くを焼き殺した。
だが、足りない。その程度じゃ、この数は押し切れない。
僕という欠けたパーツは、それほどまでに重い。
「まだだ、もっと撃て」
「そんな早くできるか、少し待てよ」
炎による面制圧で近くの魔族は削れたが、次々に増援が来る。
このままでは防壁が崩れ去るのも時間の問題だろう。
かろうじて魔法で補強を繰り返しているが、今の状況が続けば落ちる。
なんだ、この程度で終わりかよ。呆気ないな。
すると、魔族の群れに向かって、無数の樽が放り込まれた。
あれは、樽型爆弾か。
「爆弾を狙え!」
そして、もう一度放たれた炎の矢は、今度は地面に散らばる爆弾の導火線へと火をつけた。
轟音と煙を立てて、大量の魔族を一度に吹き飛ばす。
そうして一度、人類は形勢を立て直した。
あーあ、どいつもこいつも、爆弾如きに消されやがって。
これだから害虫は。敵に回そうが、利用しようが使えやしない。
「おい。上空から来るぞ、迎え撃て!」
続いて、飛行可能な魔族の群れが押し寄せてきた。
こいつらに防壁は通用しない。残念なことだ。
「動きを止めろ」
こちらへ飛んで来ていた魔族が停止する。
いや、正確には、前に進めない。
一方的に、魔族の進行方向と逆の方向に、風が吹き荒ぶ。
風部隊がやったのか。地味過ぎて気付かなかったよ。
「今だ。隙を逃すな」
絶好のタイミングで放たれた火炎によって、魔族は撃ち落とされた。
そんな調子で、爆弾による威力攻撃、炎魔法による殲滅、氷魔法による防衛、風魔法による足止め、の状態がしばらく続く。
状況を把握したなら、次は行動だ。
そして僕は、防壁の端へと移動した。
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ーガイネス平野 防壁 南端ー
やってきたのは南の端。そこでは、壁を回り込もうとする魔族との戦闘が行われていた。中でも魔法を使えない、近接戦闘部隊が多く配置されており、激戦を繰り広げていた。
「風部隊、魔族を押さえてくれ」
「ああ、わかってるよ!」
風魔法が魔族を押しとどめ、その隙に近接戦闘部隊が仕留めにかかる。
「今だ。絶対に中央へは行かせるな」
「ああ。切り刻んでやるぞ」
「魔族共に肉弾戦の怖さを思い知らせてやれ」
「オラぁぁっ! 魔法なんか使えなくてもなあ、人は戦えるんだよっ」
絶対に中央、氷の防壁内へは行かせまいという覇気が魔族の横からの侵入
を阻んでいる。
なるほど、魔法も使えない雑魚は端に追いやった、というわけか。
これで舞台は整った。作戦を開始する。
一時的に魔族の群れの中へと身を投じ、人類軍から身を隠す。
そして
見つけた、まずは一つ。
そしてあと一つを見つけ、タイミングを見計らう。
防壁内側の方向から、外側へ襲い掛かる魔族数体を発見する。
よし、一段階目はクリア。次だ。
「援護する!」
その魔族を足止めするため、風部隊が風向きを防壁内側にして強風を吹かせた。
今だ......!
これ以上ないタイミングで、目の前にあった樽型爆弾を
轟音と黒煙を立てて爆弾が破裂する。
そして、強風に運ばれて、黒煙が防壁の中へ覆い被さっていった。
「何だ。何も見えないぞ!」
「一体何が起こった!」
突如として、兵たちの視界は闇に包まれる。
そして、一時的に視界を奪われたことで回り込む魔族を防ぐことはできなくなった。
弱点を狙って攻め落とすのが定石だ。見通しが甘いんだよ。
「うわぁぁああ!? 魔族が入って来やがったぁああ!」
「こっちに来るなぁあ、クソっ!」
壁の内部はパニックに陥っている。
愚かなことだ。どうせ末路は変わらないというのに。
混乱に乗じて、壁内部にさっと移動する。そして、先ほど手に入れた物、爆弾から手に入れた火薬を空気中に振り撒いた。やり遂げた後は、即座に退散し、何事もなかったかのようにその辺の魔族と死闘を演技する。
「離れろぉぉおお! うわぁぁあああ!」
焦った一人が、闇の中で炎魔法を使う。
勝負は決まりだ、ぶっ潰れろ。
その瞬間、大きな爆発音と共に、
The trap is activated...... What will happen next?... ...
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