作戦会議-First-
ふう。とりあえず帰ってきた。
ここは僕が前から使っていた訓練施設で、自室としても使える。
これからどうしようか。そうだな、まずは自分の実力を振り返るとするか。
今の僕の実力は対魔族戦においては右に出る者はいないだろう。でも、対人戦となると僕はせいぜい上位から4~5番目くらいだ。前回の最後で、2~3位くらいだろうか。
何にせよ、力づくで人類を滅ぼすのは難しい。たとえ僕が一番強くなったとしても、複数人を相手にすれば勝てる見込みは高くない。
なら、どうすれば上手く滅ぼせるか考えよう。
まず、非戦闘員は後回しだ。先に脅威になりそうな軍人から殺そう。
でも、殺す、といっても、どうやって。
まさか軍本部で暗殺するわけにもいかない。第一、僕にそんな技能はない。
なら、切羽詰まった魔族との戦争中に妨害するのがいいだろう。
次の戦争はいつだったか。確か、今から数日後だ。
それまでにできることは、そうだな、修行でもするか。
それから僕は、三日三晩剣を振り続けた。
時間が巻き戻ってから数日経ったか。
ここで今までの成果を振り返っておこう。
現状を確認し、的確な判断を導くのは勝利への第一歩だ。
まず、この前の防衛戦では、前回よりもそれなりに犠牲を増やせただろう。
でも、まだまだだ。そして、修行の成果だが、これもそれなりだ。前回の経験がある分、成長速度は速くなっていると思う。
さて、それじゃあ今日も修行といくか。
僕が剣を持とうとしたとき、
「ルード様。至急作戦会議室へお越しください」
伝達係が僕へ伝える。
「ああ。わかった」
なんだ、今日か。まあいい、最善を尽くすとしよう。
------------------------------------------------------------------------------------------------
作戦会議室にやってきた。
中はそれなりに広く、楕円型の円卓を取り囲むように座っている。
作戦会議室にいるのは僕を含めて八名。
この中で唯一魔法の使えないアルフレート少佐。
人間爆弾の異名を持つ炎魔法の使い手、ゲルハルト少佐。
兄弟二人で少佐である兄のフランクと弟のフリッツ。
氷魔法の最高峰、ブリュンヒルト中佐。
繊細かつ過激に炎魔法を操るローゼマリー中佐。
そして、中央最奥で作戦を取り仕切る、人類最強、
風魔法の使い手、バルタザール大佐。
こいつらが、僕が最終的に殺すべき相手だ。
さて、今回の作戦会議だが、前回とそう状況が変わっていない以上、記憶のままだろう。さて、思い出すか......
今回の敵は四天王の一体、デッドライダーだ。
それに対して、人類は魔法を駆使して戦った。魔法には、炎・氷・風・闇・光の五種類があって、それぞれに特色がある。それらを上手く使おう、というのが今回の会議だ。
作戦は順調に組み立てられていった。
まず、氷の使い道だ。氷は五つの魔法の中で唯一個体を生み出せる。それを利用して、防壁として使われることになった。
次に風だ。大した殺傷能力もなく、扱いに困りかけていたが、強風での敵の足止めなど、補助の役割で使われることとなった。
そして炎だ。これは純粋に攻撃力があるため、火力担当となった。
最後に光だが、これは特に触れられなかった。というのも、今、光魔法を使えるのは僕だけで、あまりよく知られていないのだ。
いや、随分と過小評価してくれるじゃないか。まぁ、その方が都合がいいな。今後僕の実力は隠す方針でいこう。
続いて、具体的な戦い方が話された。
まず氷の防壁を作り、そしてその後ろから炎で攻撃、風は広範囲を支援する、ということになった。
ここまでで僕はたいして発言をしていない。というのも、前回僕は魔族を滅ぼすことに全力を出しており、当然この会議でも意見を出した。
その僕の意見が無くなることで、作戦が上手く組み立てられなくなる、ということを期待したが、そう上手くはいかなかった。
なるほど、少し甘く見ていたよ。どうやら僕が何もしないだけでは駄目そうだ。
と、隅の方でいろいろと考えている内に会議は幕を下ろした。
僕は完全に置物だったが、特にそれで問題があるわけじゃない。あくまで勇者としての特別枠で参加しているだけだからだ。
Topic!!: 魔法について
魔法は全部で五種類。
炎魔法→相手に損害を与えやすいため攻撃目的で使用される。
氷魔法→固形物質を生成できるという点で、主に防壁の用途で使用される。
風魔法→攻撃に適していないのでサポート目的で使用される。
光魔法→使える者が限定されている魔法。魔族に絶大な威力を発揮する。
闇魔法→魔族のみが用いる魔法。
作戦室を出たら、真っすぐに自室へ向った。寄り道などはしていられない。
時間は限られているんだ。一秒だって無駄にしない。神の代行者となった僕に、失敗は許されない。
さて、次が実質初戦だ。
大きな戦争となることは知っている。だから、やらなくちゃいけない。
どうすれば上手く殺せる。どのタイミングが最適だ。
限りなく思考し、シミュレートを繰り返す。
常に最適解を。間違いなんて犯さない。
そうだ、全人類に、神の裁きを。
そして僕は、たった一人、軍の隅にある自室で、作戦を練り始めた。
Next...... War Start......
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます