第2話 謎解きの始まり
『んー、ネッム! 今日も今日とて事務所で寝てしまったらしい。これで一週間事務所で過ごしてしまったよ。』と思っていながら、伸びをしているのが、我が主ー
しかし昼間まで惰眠をむさぼっているとは感心できん事よのぉ。
最近仕事が立て続けにあったため、家で過ごす時間が無くなってきていた。
「そろそろ仕事さぼりてぇ…。とも言えないんだよな、俺一人だと、この量をやろうとしてもぶっ倒れるから、バイトとかほしいんだけど.........。来ないんだよなぁ。」
昔、前の事務所の持ち主が、バイトを集めるために作ったポスターを見た。
今にも廃れかかっている事務所ビルの壁から剝がれていってしまいそうである。
というか、見ている間に剝がれて、開いていた窓から風に流されて、外に出ていってしまった。
その後、何度も募集したが、『あの探偵事務所はヤクザがやっている』という噂がいまだに染みついており、なかなか来てくれないのだ。
確かに、少し柄が悪そうな人が所長をしていた。しかし正式には、ヤクザではなくマフィアである。余計に怖そうだと?そうかもしれんが、マフィアが全員悪事を働いているわけではない。第一、前の所長は人助けを生業の一つとしていた。
なので、この仕事場を受け継いだ二代目にも優しくしていただきたいのだが、そううまくもいかない、風当たりはもっと強くなっている。
それに彼は一風変わった仕事も請け負っているからなおのことである。
変わった仕事というのはほかの探偵事務所では、ほとんどしないと思う。
彼も、隣の建物の住人である、彼の幼馴染がいなければしていなかったであろう。
その仕事内容は、またの機会に詳しく話そうかの。
「おい、バロン。今から昼飯買って来る。勝手に外出るなよ。」
「ンニャーン(わかったら、さっさと行かんか。)」
「はいはい、じゃあね。」
二階から一階へと降り、ポストに入っている電気代などの領収書などの束を抜き取る。その時一枚の絵ハガキが落ちた。
何の気なしに手に取り、送り主を見てみる。怪盗レオナルドと書いてあった。
........誰?
まぁいいやほっとけ。どうせいつものいたずらだろうから。
そう思い、他の紙束と一緒に鞄に入れ込んで外に出た。
裏には、かの有名なモナリザの絵が書いてあった。
そして、隙間の白紙の部分に小さく
【15,71,14,55,25,45,61、83、93、31、41、12】
と書いてあった。彼がそのことに気づくのはもう少し後の話。
「まぁ、いいか。雨が降りそうだし早めに帰ってこないとな。」
と暢気に買い出しに行った。
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「朝からなんでこんなについてないのよ私…。」
本日は最後の希望があった会社の最終面接だった。
けれどもう、不合格確定である。
もぉー、なんで寝坊するわ、バスに乗り遅れるわ、迷子になって到着時間大幅に遅れるわ、必要資料持ってくるの忘れるわ…。
もう死にたい.........
と思ってフラフラとメインの通りから外れて、ついた先が少し寂れた事務所。
その隣には本屋?があった。
うーん、いい雰囲気だなぁ。
そんなこと思っていたら体から力が抜けた。
そして、そのまま受け身も何もせずコンクリの壁に当たりそうになった。
が、何かに支えられた。
「大丈夫ですか?」
うーん?だれぇ?声からして男性だけど、分からない…。
そのまま意識が落ちた.........。
「うーん、ここは?」
周りを確認する、見慣れた部屋の天井ではない…。
ココどこ!?
がばっ!!!!
「ウンニャーア!!!!(起きたみたいじゃぞ、主。)」
「何、バロン。ああ、起きた?大丈夫ですか?」
「えっと、助けていただきありがとうございました!それでは!!」
「あっ、待って!急に動いたら…。」
「あれ?」体がうまく制御できなくなったのか、スーツに身を包んだ若人は倒れてしまった。
その時、夕日が差し込んできた窓から朝どこかに飛ばされてしまったチラシが舞い戻ってきた。
「うん?何ですかこれ?」
「ああ、これ内のポスター。戻ってきたみたいだね。」
「この会社のですか?」と真面目にポスターに目を通していく。
「えっ、うん。そう。まぁ会社というよりかは、探偵事務所なんだけど…。」
「バイト募集中なんですよね?」
「うん。」どうも話が見えないのぉ。この小娘め。もうすこしわかりやすく話さんか。
「私をここで働かせてください!!!!」
「えっ?ああ、べつにいいけど?」
「ほんとですか?ありがとうございます!経歴書です!」
「有難う。ってなんで持ってるの?」
「ホントは今日最終面接だったんですけど、落ちました。もう経歴書出してるのに間違ってもう一度出そうとしたり、時間間違えたりしたら確実に落ちますよね?」
「ああ、成程。なんとなく君の置かれている立場が分かったかも。
えっと、
「そうですけど、なんでわかるんですか?」
「うん、まぁ。それはバイトとして見てくれたらわかるんじゃないのかな?僕は、ここの所長、水橋惇。そしてこっちがペットで看板猫のバロン。宜しくね。」
「お願いします!」
その時、先程まで晴れていたそれが瞬く間に黒い雲に覆われ、雨が降り出した。
もうそろそろかのぉ。
「もうそろそろ、客が来るかな?」
「予約入ってたんですか?」
「ここに来る人は、ただの物好き。若しくは、君みたいになにかしかに悩んでいる人だね。こんな雨の日に来るのは後者が多い。」
「えっ?」
「しかも、厄介なことにふらっと来るから、なんで来たのかもわからない。それを解き明かして、ここに来ないようにするのが僕の仕事。少し変わっているけどね。もう一つ変わった仕事もあるけど、それはまた教えるよ。」
「は、はぁ.........」
「ほら、行っている間から客が来たよ。」
確かに、廊下から誰かの足音がする。それも朧げな足音だ。
廊下のライトが怪しげに光、ドアの透けガラスに映る。
そして、ドアが開いた。
「いらっしゃいませ。何をご所望でしょうか。」
部屋の空気が一瞬で変わった。
この事務所は、怪しくて面白い。
リーヴル・ミステール~水橋 惇の事件手帖~ 紫泉 翠 @sorai_4572_
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