リーヴル・ミステール~水橋 惇の事件手帖~

紫泉 翠

第1話 吾輩の一人語り

『【人生】という名の本は人によって多くの物語がある。』

 なんて綺麗ごと、私には関係ないと思っていたのに.........。



 なんていう人が、今日もどうせ来るのであろう?

 本日のような雨の日には、そういうやつがここをよく訪れるのだ。


 何故ここに来るのかは、吾輩も、来た本人も、そして我が主も解らない。

 しかしながら、ここに来てしまう人々は、多かれ少なかれなにがしかの悩みや問題を抱えて生きてきた者たちである。


 そういう者たちの悩みを解くのが我が主の得意分野なのだ。

 さて、話が始まる前の基礎知識はこれで十分かの?


 ふむ、本日は気圧の差が大きいゆえに、ちと頭が痛いわ.........。

 寝るとするかのぉ…。

 おぉ、そうじゃ。寝る前にあと一言。



 それでは、この世に生きうるすべての人間たちよ。

 これは、我が主とその助手、そして彼らの周りにいる普通の人の民の話である。

 彼らは、喜怒哀楽を共にし、これから起こる多くの謎や感情、

 そして、己たちの過去やこれからのことで悩み、もがきながら

 前へと進んでいくという物語である。


 至らぬこともたいそう多くあるとは思うが、よろしく頼む。

 吾輩も語り手として頑張るからのぉ。


 然らば、本と人とそれらの謎が織りなす世界への扉を開くことにしよう。

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