第10話(玲奈視点)

「じゃあ、俺は行くよ」

「うん」


 行為を終えると、梓くんは屋上から去っていった。


 ……お尻、変な感じ。


 屋上で一人、私は仰向けになり空を見る。


 ああ、梓くんは優しすぎるよ。

 私が何かを言えばそれに応じて助けてくれる。

 その度に私は梓くんをもっともっと好きになる。

 もしかしたら、もっと私が困れば石川くんも殺してくれるのかな?


「ふふっ、いいこと思いついちゃった。そうだ、梓くんに私が嫌いな人全員殺してもらえばいいんだ。そうすれば、私は幸せになる!」


 って、あれ?


「……今、私なんて言ったのかな?」


 梓くんにもし仮に彼女でもできたら私はその彼女を殺してしまいそうだ。


 ああ、少しずつ梓くんに依存してきてるなあ。

 このままじゃあ、梓くんに依存して梓くんがいなくなったら死んでしまいそう。


「そうだ、梓くんを監禁すればいいんだ」


 ……助けて、梓くん。



 教室にスクールバッグを取りに戻ると、私の先には一人の女子が座っていた。


 ああ、めんどくさいなあ……。


 その女子は立ち上がり、こちらに近づいてくる。


「那月先輩っ、初めまして」


 はあ……まためんどくさいことになりそう。


「初めまして、誰です?」

「私は春風桜一年生です。先輩っ……霧島先輩の後輩ですっ」


 両指の第一関節をペタリとつける春風さん。


「そうなんだね、春風さん。そこ、私の席だからもしだれかを待ってるなら別にいいけど、スクールバッグを取るからどいてもらえる?」

「私、那月先輩を待ってたんです」


 なに、ついに私は女子からも告白されるの?

 この顔が憎い。


「へえ〜それで話ってなに?」

「そうですねえ、那月先輩は先輩と付き合ってるんですか?」


 まさか、私と梓くんの関係がバレたのかしら?

 でも、付き合ってるのではなくて突き合ってるだけですけどね。


「ううん、梓く……梓木さんとはただのセフレ友達ですよ?」


 嘘はついていない、彼女がなぜ私と梓くんの関係を聞いてくるのかは知らない。

 別に知る気にもならない。

 だって、もう一生この子とは話すことはないから。


「へえ、そうなんですね。私、知ってるんですよ、先輩がコンドームを二箱も買っていたの」


 二箱……つい最近のことじゃん。

 なんでこの子がそれを。


「知りません」

「じゃあ、なんで昨日、先輩は那月先輩とスマホで話してたんですか?」


 はあ……あとで梓くんに色々と聞くのが良さそうだ。

 でも、もう証拠ならたくさんある。

 今更言い逃れできないもんね。

 

「誰にも言わない……と約束しますか?」

「はい♡」


 見た目からしてそもそも誰にも言いそうなない人だし、大丈夫だよね?


「私、梓木さんとセフレなんです──」


 バタンとカッターを地面に落とし、春風さんは目をキラキラと輝かせて私の手を握る。


「そ、そうだったのですね! セフレ……なら、本命は相手いる。どうやら、私の早とちりだったらしいです!」


 ……カッター、一体なにをしようとしていたのだろうか。


「すみません、那月先輩、そうですか、先輩が童貞ではないのは残念ですがまあいいですね。そうなると、私は処女をやめた方がいいのでしょうか?」


 わからない、彼女が何を言っているのか理解ができない。


「そうです、先輩にトークアプリのIDを書いた紙を渡しておいてください」

 

 と、春風さんは私に一枚の紙を渡す。


「あ、那月先輩も追加しておいていいですよ。正直、先輩が童貞ではないのは辛いですけど、もうそんなのどうでもいいです。いつか、3Pでもしましょうね!」


 そういうと春風さんは教室から去っていった。

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