第8話

 行為を終え、俺は玲奈に問う。


「……なあ、玲奈?」

「どうしたの、梓くん?」

「最近、何か無理してないか」


 玲奈は驚きの表情を見せ。


「へへ、やっぱ、バレちゃってますか……さすが梓くんだね」


 バレてる、明らかに玲奈の性欲が増しているのだから。

 一体どうしたのだろうか。


「ああ。あまり一人で抱えるな、俺が相談に乗るからさ」

「やっぱり、梓くんは優しいね」

「そうか?」

「うん」と俺に抱きつく玲奈。


 温かく少し汗で濡れている身体が直接くっつく。


 胸……なかなか柔らかい。


「私、告白されちゃった」

「……は?」

「私ね石川清志って人に告白されちゃった、それももう一週間毎日」


 石川清志、俺はあいつを知っている。

 クラスメイトでさえほぼ玲奈以外の名前がわからない俺でさえ別クラスである石川清志の名は知っている。

 それくらい有名人なやつだ。


「それで玲奈は?」

「もちろん、嫌だよ……だって、私は梓くんがいいもん」

「は!?」


 突如そう言われ、俺は顔を真っ赤に染める。


 自分が何を言ったのかわかったのか、ボワッと玲奈も顔を真っ赤に染める。


「ち、違うからね!」

「う、うん」


 さすがに玲奈が俺のことを好き……それはない。

 性的な好きに決まっている。

 何勘違いしかけてんだ俺は。


「ねえ、梓くん?」

「ん、どうした?」

「本当にしつこくてうざい、周りも段々と石川さんが私のこと好きなの知ってきて『玲奈なら清志くんとお似合いだよ』とか……からかってきてうざい」


 俺は玲奈を抱く。


 そっか、そういうことか。

 だから最近の玲奈はこんなにも暗かったのか。

 俺が玲奈にできることは一つだけだ。


「大丈夫、俺がいるからさ。俺から言っておくよ、玲奈が嫌がってるって」


 もちろん、俺自身石川とは一度も話したことはない。

 けれど、玲奈にこんな思いをこれ以上させたくない。


「でも、それじゃあ私と梓くんが仲いいって……」

「うん、バレないようにはするから大丈夫。ほら、俺って人間観察が趣味だから」

「ははは、なにそれ……じゃあ、お願いしちゃおうかな」

「おうよ、石川には俺の口から言っておいてやる」


 本当は石川なんてやつとは関わりたくもないし、話したくもない。

 これは玲奈のためだ。


 と、俺は自分に言い聞かせる。


「私ね、梓くんとこうしてる時が一番幸せなの」

「それは俺も同じだよ」

「ありがと、最近、学校に何しに行ってるのかわからなくなってきちゃった。学校に行ってもただただストレスを溜めるだけになってきちゃったの」


 まずいな、かなり玲奈は重症のようだ。


「私、たまに夢に見るの、クラスメイト……梓くん以外全員を殺す夢」


 玲奈が病んできている。

 

 かなり精神的に限界を迎えているようだ、早く石川に言わなければ。


「大丈夫……俺に任せろ。学校に行く目的も全部、俺が見つけだすから、今は我慢しててくれ」

「ありがとっ……やっぱり、梓くんは優しいよ」


 その後、俺は玲奈ともう一回した。


 明日は石川のところと春風のところへいかなければ……。



「那月先輩っ、初めまして」


 ギリギリと後ろでカッターを握りながら笑顔で近づいてくる桜。


「(はあ……まためんどくさいことになりそう)」

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