第6話(桜視点) どうやって生きればいいんですか?
「わかった、屋上でいいか?」
「はいっ」
先輩はスマホをポケットから出し、トークアプリを開き玲奈というアカウントに『すまん、少し用事ができた』と送っているのを覗き見した。
あ、この人、知ってる。
たしか、二年生の中で一番可愛い人ですよね?
じゃ、あのコンドームは……先輩?
あ、そういうことなんですね。
先輩は私との約束を破って、那月先輩とセックスしているんですね?
そういうことですよね、先輩みたいな人が那月先輩とトークアプリができるなんてそういう関係以外じゃないとありえません……先輩、那月先輩と付き合っているんですね?
あの日、私を助けてくれたのに。
あの日、勇気を振り絞って告白したのに。
恋というのはやはり、残酷なんですね。
先程まで明るかった世界が少し、薄くなっていく。
先輩の初めては私が貰うはずだったのに……。
○
「そうなのか、全く覚えてないけど。ごめんな……」
そう言うと先輩は私の横を通り過ぎ、屋上から去っていった。
あれ……世界はこんなにモノクロだったっけ?
気づけば目の前には黒と白だけしか先程まであった色は完全になくなっていた。
……振られてしまったんですね。
なんで、なんで、なんで、なんで──?
なんで私は振られてしまったのでしょうか?
何がダメなんでしょうか?
「那月先輩……? あなたのせいなんですか?」
私はその場に内股でお尻をつけ、下を見る。
「そうですよね、だって那月先輩は先輩とセックスする関係なんですもんね。私が先輩とセックスする予定でしたのに……先輩と付き合うために私は男の子とお話しするのはなるべくやめていたんですよ? 異性と話すなんて浮気ですからね。なのに……先輩はっ」
ポケットから先輩の横顔の写真を生徒手帳を開けて取り出す。
「私を裏切ったんですか……?」
そういうことですよね。
私を忘れてしまうなんて、告白も忘れてしまうなんて、那月先輩とセックスもしてしまうなんて。
私はこれからどうすればいいんですか?
先輩がいたから私は生きてこれた、先輩が私から離れてしまったら、私はどうすればいいんですか?
教えてください……。
「ねえ、先輩……」
ポロッと大粒の涙が地面に垂れる。
どうやって生きればいいんですか?
胸ポケットからシャープペンを取り出し、思いっきり自分の右手に刺しつけた。
真っ赤な血が地面に垂れる。
「あ、そうですね。那月先輩を消せばいいんですよね。先輩から那月先輩を消せば、私を好きになってくれますよね?」
シャープペンを右手から抜き、シャープペンの先端についた血をペロリと舐める。
「先輩っ、私……って、悪い子のようです。先輩が欲しいとても悪いこのようです♡」
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