第4話
「……ゴム切れてる……」
「え、まじ?」
「しょうがない、買ってくるよ」
放課後、もう俺の家の俺の部屋のベッドでするのが日常となったある日、ゴムが切れてしまっていたことに気づく。
服を脱いでしまっていたため、もう一度着直すのがめんどくさい。
まあ、俺もしたいわけだし、仕方ない。
「まじで〜? 本当、ありがとう」とニコリと微笑む玲奈。
この笑顔が見れればもう元を取ったに近いんだよな。
俺は制服を急いで着直して。
「じゃあ、なるべく早く行ってくるわ」
「は〜い!」
ゴムを買いに行くのはここから徒歩五分ほどのところにあるコンビニだ。
前までは恥ずかしくて服さえも私服だったが、回数を重ねて行くうちに制服でもなんとも思わなくなってしまった。
ゴムをレジで渡す時も同じだ。
前までは商品コードの方を向けていたがそれすら、気にしなくなってしまった。
コンビニに着くや否や、俺はゴムを一箱持ち……いや、二箱持ちレジにもっていく。
今日は一段と玲奈、機嫌が悪いがどうしたんだろうか。
玲奈の性欲はストレスと比例しているためとてもよくわかる。
やはり、学年一可愛いというのは本当の自分を見せれなくなるものなのだろう。
ぼっちの俺には全く意味のわからない話だが。
「……先輩っ?」
ふと、店員はレジに通しているときに俺をみて声をかけてきた。
名札を見ると、名前は
アルバイトのようだ。
妙だ、初めての子のはずなのに会ったことがある気がする。
が、さすがに知り合いではなさそうだ。
なんせ、俺は小学生からずっとぼっちを貫いてきたからな。
「……いや、多分人違いだと思う」
春風桜、こんななかなか見ない名前、もし仮に一度でも会ったことがあるのなら忘れるはずがない。
つまり、人違いである。
「あっ、そうですか……」
「うん」
「それは、すみません!」
「いえいえ」
店員からゴム二箱の入ったレジ袋を受け取り、俺はコンビニを後にした。
○
……え、待って待って待って待ってください。
先輩でしたよねっ、今のって、霧島梓木先輩でしたよねっ!?
先輩と同じ高校に入るために頑張って無事に入ることができたんですよ……なのに先輩は私を忘れてるんですか?
それになんですか、あの二箱のコンドームは……もしかして、先輩、私との約束を破って彼女でも作ったんですか?
え、なんですかあの冷たい態度は……。
先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩──っ。
……先輩は私を忘れてしまったのですか?
明日、先輩のところへ行きます。
だから、先輩、私を思い出してください!
そして、あの時の答えを教えてください!
○
やはり、昔会ったことがある人だったな。
「梓くん?」
「えっ、ん、どうしたんだ?」
行為を終え、俺と玲奈は同じベッドに横になっている。
「どうしたの、その何か考えているような顔」
どうやら、俺が何かを考えていることがバレてしまっているらしい。
まいったな。
春風桜、もし仮に接点があるならそれは中学時代から下の時代になる。
玲奈とは高校で知り合った仲なわけだし、春風桜について聞いたところで何も情報はなさそうだ。
「いや、その通りなんだが。なんだか昔会ったことのある気がする人と今日コンビニであったんだ」
「あ〜私もたまにそういう時あるよ〜、まあ、私の場合興味がない人とか記憶に残りづらい人間だからさ〜」
「そうなのか……」
「うん! まあ、そういうのは相手にしない方がいいよ。大体がどうでもいいことだから」
「だな、そうする……」
会ったことがある、初めてではない。
でも、思い出せないのなら彼女は俺にとってそのくらいの人間であるということ。
……無視するとしよう。
「ねえ、梓くん?」
「ん? どうした?」
玲奈は二箱のゴムを両手に持ち、頬を真っ赤に染め、少し二箱のゴムで顔を隠さながら。
「梓くん、一日にそんなにでるの……?」
驚いた、まさかこの二箱のゴムをみてそんなことを考えるとは。
「何言ってんだ、次買いに行くのがめんどくさいから二箱買ってきたんだ」
「……ですよね〜」
やはり、今日の玲奈は少しストレスが多いように感じた。
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