3月4日 「塩味バウムクーヘン」
「あーあ……」
暗い1人暮らしの部屋の中。いつもご飯を食べるミニテーブルには綺麗な箱に入ったバウムクーヘンが置いてある。そして私はいつもは着ない小綺麗な薄いピンクのドレスを着たままである。私はバウムクーヘンを、持ってたフォークで雑に切り、流れるようにフォークに刺して口に押し込んだ。甘くて美味しいが、思った通りパサパサする。
幼馴染が結婚した。私は今日、その結婚式にお呼ばれされたのだ。幼稚園から高校までずっと一緒にいた彼とは別の大学に進学した後もなにかと連絡を取り、遊びに出かけたりもした。お互い就職してからは仕事がきついとか、上司がムカつくとかお互いに愚痴を言い合ったくらいだ。
彼とは付き合っていたことはない。お互い仲は良かったけどそれぞれ別に恋人はいたし、彼とはそう言うんじゃないよなって思っていた。
そんな彼に最近新しい彼女ができたと言うことは聞いていた。そのせいか私と会うことも少なくなっていた。まさか付き合って半年で結婚するなんて思わなかった。
最初、このモヤモヤは結婚を先にされてしまったショックからくるものなのだとばかり思っていた。だけど彼と、綺麗なドレスに身を包んだ花嫁が楽しそうに話している姿を見て、私は自分の気持ちに気がついてしまったのだ。
私は彼のことが好きだったんだ。
どうしてもっと早く気がつかなかったんだろうか。いや、自分でも薄々わかっていたのかもしれない。でも一歩踏み出すことが出来なかった。もし彼が私のことを好きじゃなかったら?この気持ちを伝えたらこの関係も無くなっちゃうんじゃ……私は自分の気持ちをいつのまにか押し殺していたのだ。
「花嫁さん、綺麗だったな……」
自分の気持ちを噛みしめながらもぐもぐしていたら口の中からバウムクーヘンがなくなってしまった。お口が寂しくなったのでもう一切れ口に入れる。
「……しょっぱい」
いつのまにか私の頬を涙が伝っていた。
3月4日「今日は何の日」
バウムクーヘンの日
ミシンの日
サッシの日
円の日
三線の日
雑誌の日
酸蝕歯の日 など
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