第16話 ドラゴンの分離
アクアは意識がもうろうとした中、舞の声の後にブラックの気配を感じたのだ。
意識が遠退くと思った瞬間、引き戻された気分だった。
そして力が、そして意欲が、少しではあるが出てきたのだ。
舞の声は空耳では無かったのだ。
そうだ、舞とブラックと自分は繋がっているのだ。
自分は一人では無かった。
ドラゴンの民は一人かもしれないが、自分には仲間がいるのだ。
舞の声の通り、きっとブラックから魔力が注がれたのだろう。
またブラックに助けられてしまった。
だからこそ、入り込んできたドラゴンなどに身体を占領されるわけにはいかないのだ。
これは私の身体であり、ちっぽけな存在などでは無いのだ。
魔獣のような古いドラゴンとは違うのだ。
そしてブラックの期待に応えるのだ。
そうだ、また舞を乗せて飛んであげよう。
これはブラックには出来ないことなのだ。
それに、スピネルとも色々な所に遊びに行くのだ。
何となく想像すると楽しくなってきた。
何故だか、急に関係のない事が頭に浮かんできたのだ。
まだまだやりたい事があるのだ。
だから舞が言う通り・・・きっと上手く行く。
私は顔を上げて、目を力強く開けたのだ。
○
○
○
舞はペンダントを掴み祈った。
そして、ブラックに魔力をアクアに送るように頼んだのだ。
「ブラック、確かアクアに魔力を送る事は出来るわよね。」
私はブラックからもらったペンダントを見せて言ったのだ。
「ああ、額の石があるので出来ますが、限度がありますよ。
あのドラゴンに対抗できるとは・・・」
「いいの。
一時的でもアクアが優位になれば大丈夫よ。」
強力なドラゴンのエネルギーがどんどん入り込んできているのだろうが、今ならまだ間に合う気がしたのだ。
ブラックが目を閉じて、アクアに魔力を送ると額の綺麗な石が輝いたのだ。
それと連動するように私の胸元のペンダントも光ったのだ。
そしてアクアを見ていると、さっきまで赤黒い鱗を纏っていたが、元のアクアの色である濃紺色に変わっていったのだ。
そして、爪や牙も恐ろしく邪悪なものから、以前のように戻っていたのだ。
そしてまだ苦しそうではあったが、下を向いていたアクアが顔を上げ、目を大きく見開いたのだ。
今しかない・・・
これを逃したら、アクアが消えてしまう。
私はアクアに向かって駆け出したのだ。
みんなの危ないと言う声が背中から聞こえてきたが、今は私の知ってるアクアなのだ。
絶対に、絶対に。
私は鞄から異物を分離するための薬を全て出して、アクアに押しつけ破裂させたのだ。
そして、アクアの大きな足に額をつけて心から願った。
お願い、上手くいって・・・。
おじいちゃん、ハナさん、この薬がちゃんと効くように少しだけ助けて。
私が薬を次々と押しつけて破裂させると、綺麗な明るい光に大きなアクアが包まれていったのだ。
すると、苦しそうな顔つきから落ち着いた顔に変わり、アクアの頭上に黒い煙のようなものが出てきたのだ。
それは異物となるドラゴンのエネルギーだった。
出てきた煙は一つにまとまり、大きな黒い影となって現れたのだ。
上手くいった・・・
私は安心してその場に座り込んだのだ。
だが、アクアから異物として外に出てきたのはよかったのだが、それは新しい石に封印される事なく、目の前に存在するのだった。
まるでそれは森を蝕んでいた黒い影のようであった。
私はアクアからドラゴンのエネルギーを分離できればとだけ考えていた。
分離は成功したものの、出てきたドラゴンの一部をどうすれば良いかまで考えてなかったのだ。
しかし、私の心配をよそにブラックが動いたのだ。
私と違って、先のことまで考えていたようなのだ。
さすが魔人の王なのだ。
ブラックはそのドラゴンのエネルギーを結界を作って閉じ込めたのだ。
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