第48話 祝勝

 乱入して来た相手は、どうやらフォーザス人だったようだ。

 目的は分からない。

 単独行動で他のフォーザス人は関与していないとのことだった。


「ま、嘘だろうな」


 おじさんの家で、ドクターペッパーを飲みながらフォーザス人のことで会話をしていた。


「どう考えても他のフォーザス人も関与している。でも、口を割ることはないだろうな」

「仲間意識が高いってこと?」

「あるいは……上の連中が怖いか、だな」

「なるほどね……まぁとにかく、勝てて良かったよ。でもこれからはもう少し注意しないといけないね。フォーザス人に」


 おじさんはノンアルコールビールを喉に流し込み、短く頷く。


「……もしかしたらの話なんだがな」

「うん」

「もしかしたら……あの時俺たちを襲ったドラゴンは、フォーザス人たちが送り込んで来たのかもしれないな」

「ドラゴンを? どうやって?」

「さあ。方法も理由も分からない。でもあの日、フォーザス人と会ったことは覚えている」

「そうだったね……うん。そうだった」


 フォーザス人はあの日、俺たちに接触をしてきた。

 あれはもしかしたら、俺の力を確認しにきたとか?

 目的は分からないけれど、でもなんだかやけに怪しく感じる。

 あいつらが、今回の首謀者なのだろうか。


「ダンジョンだって内側が変化して、俺たちを閉じ込めた……きっとあいつら、俺たちが知らないような秘密を抱えてるんだぜ」

「秘密って、どんなのだろうね。地球人の誰もが知らない秘密なのかな?」

「ま、これら全て推測にすぎないけどな。秘密があろうとなかろうと、俺たちがそれを知る術はない」

「でも、あいつらを締め上げたら吐くかもね」


 おじさんは俺の言葉に、ブッとノンアルコールビールを吐き出す。


「おま……そんなことするつもりか!?」

「するわけないよ。だってそうするだけの証拠もないんだしさ」

「だよな……証拠はゼロ。お前の力があればあるいは詰めることも可能かも知れないが……全部こちらの勘違いなら、地球人とフォーザス人との間に修復しようのない亀裂が入ってしまう。そんな責任、お前に取らせられねえよ」

「俺も、そんな責任は負いたくないね」


 俺たちは苦笑いし合う。

 そして同時にため息をつき、乾杯を交わす。


「フォーザス人の事は気を付けていくとして……とにかく【バトルウォーリア】出場のお祝いだ。また後から五十鈴が料理を作ってくれるらしいから飯も食ってけよな」

「うん。結希も一緒に買い物行ってるらしいね」

「……結希だけ不参加というわけにはいかないだろうか?」

「もうそれイジメだよ? おじさんも歩み寄ることしてみたら?」

「それができりゃ苦労しないっつーの。あいつとはこれからもこんな関係だろうな」


 おじさんが暗い表情を浮かべていたその時、玄関の音がし、五十鈴ちゃんと結希がリビングの方へとやって来た。

 結希は俺の顔を見るなり、俺の胸へ飛び込んで来る。

 五十鈴ちゃんと結希は両手に買い物袋を持っており、結希は顔だけを俺の胸に埋めていた。


「ただいま、お兄ちゃん」

「おかえり」

「私買い物行ってきたんだよ、偉い?」

「偉い偉い。俺のためにわざわざありがとう」


 結希は頭を撫でてほしそうに上目使いをする。

 俺は彼女のサラサラの髪を、ゆっくりと撫でてあげた。


「んふふ……今日は五十鈴ちゃんと美味しい物つくるからのんびりしててよ。あ、おじさんは部屋で寝ててもいいから。そのまま出てこなければいいから」

「これこそイジメだろ! こいつ、俺をなんだと思ってるんだ! それにここは俺の家だぞ! もう少し俺に気を使え! 使ってください!」

「嫌よ。お兄ちゃんを危ない目に遭わせたんだから、おじさんは反省して」

「おいおい結希。おじさんは何も悪くないんだぞ。俺は好きで戦ってるだけだから」

「でも、心配なの!」


 兄思いの妹は嬉しいけれど。

 でも、少し過保護すぎやしないか?

 そんなに心配しなくとも、お任ちゃんは強いんだからな。

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