第42話 日時決定

「【バトルウォーリア】から連絡が来たぞ」

「戦いの日程が決まったの?」

「ああ。試合は来週の日曜。いきなり過ぎる気もするが……だが、【バトルウォーリア】の人気は絶大だ。したがっておいた方が賢明だな」

「文句は言えないけど、実力を示してくればいいだけでしょ?」

「ああ。その通りだ」


 俺はおじさんの家に呼び出され、【バトルウォーリア】から連絡があった話を聞かされていた。

 ドクターペッパーを飲みながら、笑みを浮かべる俺。


「本来なら、コンディションを整えて準備も整えて、それから挑むものなんだろうけどな」

「コンディションだとかそういうの、素人だからどうでもいいよ。試合が決まったのならやるだけさ」

「なんだ。意外と強気じゃねえか。もう少し緊張してると思ってたぞ」

「試合になったら緊張するかもしれないけどね。でも、昨日の動画のコメント見て自信がまた湧いてきたんだよ」

「ああ。マシーンシャークのな」


 マシーンシャーク戦の動画をおじさんが投稿した。

 結果、大反響。

 やはりあれを一人で倒すのは至難の業だったらしく、その一撃で倒したものだからまたまた大騒ぎになっていた。


 現在、十四階層に到達している人たちでも難しいことのようで……ならそのレベルにいる百位の選手相手なら、勝てないこともないだろうと俺は考えたわけだ。


「おじさんはどう思う? その選手と俺が戦って、負けると思う?」

「普通に勝てるかどうかで言えば……爆勝で楽勝だろ。相手が銃四階層に進んでいようが、お前は時の人だし、その実力は数字以上! 絶対負けないって俺は踏んでるぜ」

「なら、それでいいじゃないか。おじさんのプログラムも完璧だし、俺だって負けるつもりはないさ」

「嬉しいね。ほれ、お前の【ギアプログラム】、強化終わったぞ」

「いつもありがとう、おじさん」


 おじさんは俺の【ギアプログラム】の調整をしてくれていた。

 作業が終わり、パソコン画面に俺のステータス画面を映し出す。


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 ジャスティスイグナイト2号

 エーテル 1480 力 921

 防御 910 体力 909 

 素早さ 932 魔力 900


 アーム 

 パワー 25 ガード 25

 スピード 40 マジック 20


 アーツ

 イグナイトスパイク 10 イグナイトレーザー 10

 イグナイトブレードキック 10 イグナイトストーム 10


 スキル 

 エーテルマスター スピードⅨ


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「うん。結構強くなったよね、俺も」

「結構どこじゃねえよ。数字だけでも中々のレベルだと思うぞ」

「そうなの?」

「そうなの。これに加えて【エーテルマスター】までがある。タクならたとえ【バトルウォーリア】の選手が相手だろうと負けねえよ」

「そうだといいね……うんそう信じてるよ」


 自分のステータスを見て、感慨深い気持ちに浸る俺。

 【ウォーリア】になってからまだそんなに時間が経っていないはずなのに、でも長い事戦ってきたように感じられる。

 最初の能力は最底辺レベル。

 それが今となっては、それなりのレベルになってきたんだ。


 ずっとダメだった時期が長かったからだろうか、今目の前にある数字を見ているだけで涙が浮かびそうになる。


「【バトルウォーリア】の選手になって、そのまま突っ切ろうぜ。タクなら大丈夫だ! 俺らなら大丈夫だ!」

「うん。俺も全力を出して頑張るよ」

「おう。期待してるぜ!」


 親指を立てて笑みを浮かべるおじさん。

 俺も親指を立て返し、笑顔を見せた。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 家に帰り、晩御飯を済ませた俺は、リビングのソファに座っていた。

 すると食器を洗い終えた結希が、俺の隣に座ってくる。

 そしてそのまま甘えるように、抱きついてきた。


「お疲れ様。いつもありがとう、結希」

「ううん。お兄ちゃんが喜んでくれるならそれでいい」


 嬉しそうにはにかむ結希。

 彼女が義妹でなければ惚れているところだ。

 本当に可愛い妹だよ、お前は。


「お兄ちゃん、【バトルウォーリア】に出るって本当?」

「ああ。本当だよ。おじさんから聞いた?」

「ううん。五十鈴ちゃんから。おじさんが私に連絡してくるわけないでしょ?」

「確かに、連絡するはずはないな」


 二人の関係性を考え、俺は苦笑いしながらため息をつく。


「仲良くできないかな、二人は」

「仲良くなんてできないわよ。だって、色んなことにお兄ちゃんを誘うんだから」

「おいおい。俺を誘うだけで怒ってるのか、お前」

「それだけで起こる理由は十分でしょ。それにうるさいし」

「それは……否定できないけどさ。じゃあさ、俺が友達から遊びに誘われたらどうするんだよ。そいつを恨むのか?」

「当然じゃない」

「当然なんだ!?」


 あまりにも怒る理由がくだらなすぎて、俺は笑う。


「でも、俺を誘う友達なんて少ないからそんな心配はないけどな」

「知ってる。それに最近は女の匂いがするのも分かってるよ」

「…………」


 俺の胸でニコリと笑う結希。

 それはそれはとても怖くて……おじさんが結希を怖がる気持ちが、少し理解できたのであった。

 ちょっと本当に怖いよ、結希。

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