第40話 マシーンシャーク

 【バトルウォーリア】に参加することを決定した俺は、翌日早速おじさんとダンジョンに潜っていた。

 ついでに純もメンバーの中で唯一時間が空いていたらしく、一緒に行動することに。


「拓斗くん。いつもサポート感謝している」

「あ、ああ……」


 赤いヘルメットをかぶった純は、完全に『レッド』となりきっており、口調が変化している。

 恰好と演技がセットになってるんだね。


 道中のモンスターはおじさんと純に倒させる。

 純は二本の剣を使う接近戦タイプ。

 俺が弱らせたシルバーウルフを近づき切り裂いていく。


「私ももっと強くなる。さぁ、ドンドン行くとしようか」

「あいつ、本当に性格変わるんだな」

「ああ。演技らしいけどね」


 純の変化にはおじさんも驚くばかり。

 素の純と昨日初めて会ったから、そりゃその違いにはビックリするであろう。

 俺だっていまだに慣れないからな。


「拓斗くん」


 クールな喋り方で純は言う。


「あの敵は?」

「ああ、ファントムね……あれは接近戦じゃ倒せないはずだ。純はシルバーウルフだけを倒してくれ」

「ならば、あれは俺が相手してやる! いくぞ! ジャスティスショット! ショット!」


 おじさんがマシンガンでファントムを倒していく。

 二人とも強くなっており、特に俺と一緒に戦っているおじさんは以前よりもさらに進化している。

 俺のサポートは必要だが、しかしそれほどまで手を貸す必要もない。

 必殺技を叫びながら次々とファントムを蹴散らし――そして息を切らせる。


「エ、【エーテル】を使い過ぎた……」

「強くなったと感心してたところなのに」


 敵の数を倒すのもの強くなる理由の一つなのだろう。

 他の【ウォーリア】と比べても、おじさんの船長は目を見張るものがある。

 この調子なら、おじさんが考える強いヒーローにもなれるんじゃないかな?


 そのまま俺たちは先に進み、そして中ボスのキラーラビットがいる扉の中へと侵入する。

 中ではまたキラーラビットが発生しており、俺はこれを瞬時に撃破。

 それを見て驚愕する純。


「あ、相変わらずメチャクチャな強さだな……」

「相手が弱いんだよ」

「いや、拓斗くんが強いんだろう。私だってそれなりに情報は収集している。キラーラビットは単独で撃破するような相手じゃない」


 純とおじさんはうんうん頷く。

 しかし二人がそう感じるのならそれは本当のことなのだろう。

 俺はその事実を受け入れ、さらに自信を手に入れる。


「ここから先も同じモンスターが出るはずだ。次はエリアマスターのいる場所を目指すぞ」

「オッケー。なら、道中の敵は二人に任せるよ」

「ああ! 俺もそれなりに皆に認められるぐらい強くならんといかんからな! お前の相棒をするにしても、弱かったら恰好がつかん。だからこれからも援護お願いします」

「こっちだってよろしくお願いします。おじさんがいてこその俺なんだからね」


 俺たちの会話を聞いていた純が、ふっと短く笑う。


「二人は最高のパートナーなのだな」

「ああ。戦闘面ではおじさんのことを俺がサポートしているけど、戦い以外のことはおじさんにサポートしてもらってるんだ」

「……羨ましいよ、1号さんが」

「え、なんでさ?」

「……なんでもない。先へ進むとしよう」


 純は踵を返し、キラーラビットがいた場所の先へと歩いて行く。

 一体何が羨ましいんだ?


 俺たちが入って来た扉の向こう側に、また扉がある。

 扉を開いた先には、また同じようなダンジョンが続いていた。

 しかしおじさんの言っていた通り、敵に変化はない。

 シルバーウルフとファントムの二種類。

  

 純がシルバーウルフをメインに倒し、おじさんがファントムを倒す。

 同じパターンで奥へ奥へと進む。


 そしてキラーラビットを倒してから一時間ほど経過しただろうか、とうとう四階層のエリアマスターのいるであろう扉の前へと到着した。


「ここからは拓斗の出番だな。俺は撮影に集中するぜ! 任せとけ……カッコよく撮ってやるからな」

「あはは、期待してるよ」

「拓斗くん……気を付けてな」

「ああ。大丈夫。俺は絶対負けないよ」


 扉を押すと、自動的に開いていく。

 中は大きな部屋で、中にはいくつもの穴が開いているようだった。


「穴……中は水?」

「ああ。気を付けるよ、タク」

 

 一つ一つの穴は大きく、車一台ぐらいなら余裕で落とせるほど。

 その中身は水で、おじさんはその水を見てゴクリと息を呑む。


「ここのエリアマスターは……マシーンシャーク。水の中を移動してこちらを襲って来る」

「シャークってことは……鮫?」

「まぁ鮫だろうな。でも、普通の鮫とは思うなよ」


 普通の鮫でも、水中なら厄介だ。

 それより危険な奴が、ここにはいるのか。


 その時、水の中に影が見える。

 フォルムは間違いないく鮫だ。

 俺を余裕で飲み込めるほどの巨大さを誇っている。

 これは面倒な相手かも知れないな。


「よし。気合入れていくか。二人は離れててくれ。端っこなら相手も攻撃してこないだろうし」

「おう。頼むぜ、タク」

「検討を祈っているよ」

「ああ。行って来るよ!」

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