第27話 三階層

 第三階層に足を踏み入れる。

 やはりダンジョン内の見た目に変化はない。

 しかしまた新しいモンスターが姿を現せる。


「オーク……一階層のボスと同じだ」

「はい。ここで出現するモンスターはオークです。でも、一階層のレッドオークほど強くありませんよ」


 ダンジョン内を徘徊する数々のオーク。

 だがレッドオークほどの大きさはない。

 平均的な人間よりも少し大きいぐらいで、威圧感もそれほどだ。


「よーし。じゃあそろそろ戦うとするか! 撮影頼むぜ!」

「おお。頑張れ、ワンダーナイツ」


 背後で戦いを撮影する者が五人。

 残りの十二人が前に出る。


 ワンダーナイツが双剣でオークに斬りかかり、他の仲間が左右から追撃を仕掛け、止めをさす。

 連携は取れているようだ。 

 元々仲間同士だったのか、コラボが多いからできることなのか。

 まぁどちらにしても、これだけ連携を取れているのなら問題はないな。


「2号さんは戦わないんですか?」

「これからやるつもりさ」

「じゃあ、派手なの頼みます! いい絵を撮りたいんで」

「あまり派手なのは好きじゃないんだけどな……」


 目立つのはどうも恥ずかしい。 

 できるなら、サッと倒して先に進みたいものだ。


 俺は嘆息し、走り出す。

 『イグナイトガンソード』を手に取り、オーク目掛けて射撃をする。


「うおっ!」

「ちょっと待て……オークを一撃で倒してるぞ!」

「やっぱ2号は半端ねーな……」


 俺の一撃でオークが倒れていく。

 その姿を見て、他の【ウォーリア】たちは驚愕の声を漏らしていた。 

 

 確かに皆は一撃でオークを倒せないみたいだけど……そんなに凄いことか?


「2号さん! やっぱり強いんですね! デトロイドタランチュラを単独撃破したのは見ましたけど、まさか本当にここまで強かったなんて……」


 ワンダーナイツが俺の隣で感激の表情を浮かべている。


「そ、そんなに凄いかな?」

「凄いなんてもんじゃないですよ! 俺らの最高到達がこの三階層なんですけど、ここに来てもう三か月ですよ? それでようやくオークを倒せるようになって……なのに初めて三階層に来てオークを雑魚扱いとか、メチャクチャだと思いません!?」


 やはり俺の能力はずば抜けているようで、一般的な感覚がよく分からない。

 だからオークを一撃で倒せても驚きもしなかったけれど、そうか、それだけ異常なことなんだな。

 それなりに強いのは理解していたけれど、まさかそこまでだったとは……


 でもここに来て三か月って、意外と時間がかかるもんなんだな。

 俺のフォローがあってか、おじさんも着実に強くなっているし、そんなにかかるものだとは思ってもみなかった。

 しかしこの分だと、君島よりおじさんの方が強くなるのもすぐだろうな。


 オークを倒しながら俺はクスリと笑う。

 まさか能無しの俺たちが、学校の人気者、それなりの実力者を軽く超えていけるなんて、少し前なら考えもしなかったな。


「なら、俺がいる間にもう少し強くなるか?」

「え?」

「フォローぐらいならしてやるよ」


 俺は最大限の手加減をし、オークたちに射撃をしていく。

 一撃で瀕死に陥っていくオーク。

 ワンダーナイツたちは歓声を上げながら、敵に襲い掛かる。


「ありがとうございます、2号さん! これなら俺らでも楽に倒せます!」

「サービスは今日だけだ。今のうちに強くなれるだけ強くなりなよ」


 次々に敵の数が減っていく。

 撮影者も面白い絵が撮れているのか、興奮した様子でこちらを撮影している。

 勢いは止まることなく、そのまま一時間ほどオークを倒し続けた。


 俺はどうということはないが、しかしその辺りでワンダーナイツたちに疲れが見え始める。


「ち、ちょっと待ってください……俺ら、体力の限界です」

「体力まで無尽蔵なんですか? どこまですげーんだよ、2号は」


 武器を振るうのは体力が必要で、皆は肩で息をしていた。

 俺は手加減していたということもあるが……でも、攻撃に自分の【エーテル】を消費しないからだろう。

 全く疲れる様子は無かった。

 ここでも自分の能力の凄さを実感する。


 俺は敵が近づいて来ないように、オークを射撃で倒していく。

 もちろん、全て一撃で。

 皆は疲れながらも驚き、また歓声をあげている。


「俺らもあんなぐらい強くなれるかな?」

「強くなろうぜ……俺らも負けないぐらい強くなろうぜ!」


 元々能力は高い彼ら。

 メンタルもそれなりに強いらしく、俺の力を見ても前向きなままだ。

 以前の俺だったら、間違いなくここで心を折っているところ。

 今はそうでもないけど、高い実力者を見たらやる気を失う場合もあるんだけどな。


 俺はそんな彼らの心の強さに頷き、そして敵を倒す。


「あれ? もしかしてあれって……」

「どうしたんですか?」


 俺は通路の先に、遠くに見える壁をよく視認する。

 見間違いじゃない。

 やはりそこには、大きな扉が見える。


「やっぱりそうだ……エリアマスターのいる場所だ、あそこは」

「え? そんな奥まで来てたんですか……俺ら」


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