第12話 強化

「よし。完成だ! これでまた一つ強くなったぜ!」

「ありがとう、おじさん」


 おじさんから手渡れた携帯で、自身のステータスを見る。


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 ジャスティスイグナイト2号

 エーテル 77 力 51 

 防御 48 体力 49 

 素早さ 55 魔力 45

 アーム 

 パワー 5 ガード 5

 スピード 10 マジック 4


 アーツ

 イグナイトスパイク 2


 スキル 

 エーテルマスター スピードⅠ


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 自分の戦闘スタイルは、スピード重視にしようと考えていた。

 速く動くことができれば、それだけ敵は早く倒せるし、それに早く人を助けることができる。

 俺はおじさんと同じで、やはり根本はヒーローが大好きで、颯爽と登場して皆を助けるような姿に憧れているのだ。


 能力は風を操る【アーツ】と、そして速度が上昇する【スキル】、【スピード】を習得。 

 後は割り振りできる分で、【アーム】の強化をした。

 どれぐらい強くなったのか、想像するだけで楽しい。


「いいね……なんだか、新しく技能を習得したことがワクワクするよ」

「分かる! その気持ちはよく分かるぞ! 俺だってワクワクしたい! もっとワクワクしたいよ! ああ、早く強くなりたい! だから早めにダンジョン行こうぜ!」

「分かったよ。月曜日、学校が終わった後でどう? どうせおじさん、今日は五十鈴いすずちゃんと何かするんでしょ?」

「…………」

「図星だね」

「ねえ、ヒロちゃん」

「お前……人前でヒロちゃんなんて言うんじゃないよ、五十鈴!」


 一人の女の子が、リビングの方からやって来る。

 彼女は前橋五十鈴まえばしいすずちゃん。

 五十鈴ちゃんは十歳の女の子で、このマンションでおじさんと同居している。

 

 茶色の髪で二つおさげを作っており、クリクリした大きな目が特徴的。

 十歳の女の子らしく、小さな体型。

 だが十歳の女の子らしからね、しっかりした性格だ。


 五十鈴ちゃんは、おじさんの大学時代の先輩の娘さんだ。 

 俺の両親と同じくすでに他界してしまい、五十鈴ちゃんを託されたおじさんが面倒を見ている。

 いや、面倒を見ているというのは少し語弊があるかもしれない。

 だって家の掃除洗濯、さらには食事の用意など五十鈴ちゃんがしているのだから。

 と言うか、家のことはすでに仕切られているらしい。

 子供である五十鈴ちゃんに、すでに頭が上がらない様子の大人のおじさん。


 五十鈴ちゃんは腰に手を当て、おじさんに言う。


「ヒロちゃん。ちゃんと部屋の掃除しなきゃダメだよ」

「う、うるせー! これは全部大事な資料なの!」

「資料って……この子供雑誌が資料なの?」


 おじさんが好きなヒーロー図鑑。

 五十鈴ちゃんはそれを差しておじさんに訊ねていた。


「うっ……そ、それは【ギアプログラム】のための資料だ!」

「ふーん……じゃあこれは?」

「ううう……それも【ギアプログラム】のための資料なの!」


 今度はフィギュアを差して聞く五十鈴ちゃん。

 そしてため息をつき、部屋の掃除を始める。


「玩具好きなのはいいけど、部屋の掃除はちゃんとしようね。捨てろなんて言わないけど、綺麗にしておかないと拓斗くんに笑われるよ」

「タク……お前笑ってるのか!?」

「笑ってるように見える? いつも通りのおじさんの部屋だと思ってるよ」

「笑ってるんじゃなくて呆れてるみたいだね」

「お前は俺の母親か!」

「母親って言うか……奧さん?」

「あ、アホか! 小学生がませたこと言ってんじゃないよ、コノヤロー! お前なんて娘だ、娘」

 

 おじさんは五十鈴ちゃんのセリフに大慌て。

 五十鈴ちゃんはクスクス笑いながら掃除を進める。


「はいはい。じゃあ部屋の掃除を始めようね、あなた」

「だから! 嫁みたいな感じで接するんじゃないよ!」

「……俺、掃除の邪魔になるみたいだし帰るね」

「うん。またね、拓斗くん」

「……帰らないでくれよ、タク」

「ほら。早く片付け始めて」


 完全に主導権を握られているおじさん。

 これは娘というよりは、完全に母親だな。

 俺は苦笑いを浮かべながら、おじさんの家を後にした。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 月曜日。

 眠気が抜けきらない朝。

 俺は学校へ登校していた。


 皆携帯を見ながら、何やら会話をしているようだ。

 何かあったのか気になるが、知り合いが一人もいない。

 俺は仕方なく、天気のいい空を眺めながら一人歩いた。


 教室へ入ると……そこで大騒ぎ。

 一体何事?


「おはよう」

「ああ、おはよう、臨海。それよりあれ見たか?」

「あれ? あれってどれ?」

「これに決まってるだろ! まだ見てねえのかよ?」


 学友が興奮した様子で携帯を操作し、俺に画面を見せつけてくる。

 画面に映し出されたのは動画で……

 なんとそこには、俺が戦っている姿が表示されているではないか!


「な、何これ……」

「お前、全然知らないんだな!? こいつは【ジャスティスイグナイト】って言うらしいんだけどな……なんと、エリアマスターを一人で倒しちまった、前代未聞の化け物なんだよ! それにダンジョンに入ってまだ一日目らしいぞ!」

「そ、そうなんだ……」


 皆が騒いでいるのは俺のこと……【ジャスティスイグナイト】のことだったようだ。

 それはあまりに突然のこと過ぎて、まだ状況を飲み込めていない俺がいた。 

 いきなり噂になりすぎだろ。

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