第243話 お前が好きなのはあいつじゃないの!?

「結衣が好きな人は‥‥‥俺?」


「そうだよ!! 中学時代から、ずっと俊介君の事が好きだった!!」


「嘘だろう!? 中学時代だって、結衣は司の事が好きだったんじゃないのか!?」


「確かに司君は格好良かったけど、私は外見だけで人の事を判断しないよ!! 私が困っている時に相談にのってくれて、いつもヒーローのように助けてくれる俊介君のことが好きだったの!!」


「そんなに前から、俺の事が好きだったのか」



 つまる所俺は今の今まで盛大な勘違いをしていたってことか。

 司でも葉月でもない。結衣は中学時代からずっと俺の事を一途に思ってくれていたんだ。



「結衣に1つだけ質問してもいい?」


「いいよ」


「高校入学直後、結衣は葉月と話せるように仲を取り持ってくれるように頼んだよな?」


「うん」


「あれはどういった意図があって俺に頼んだんだ? あれがなければ、俺も結衣が葉月のことを好きだと思わなかったから、理由を知りたい」



 ずっと俺の中でそれが引っ掛かってた。あの言葉がなければ俺も変な誤解をすることなんてなかったのに。何故彼女は俺にあんな相談を持ち掛けたのだろう。



「あれは俊介君が葉月君が持ってくる問題を抱えてて、迷惑していると思ったからお願いしたんだよ」


「うん? どういうこと?」


「私が2人の間に入れば、少しは俊介君も楽になると思ったの。だから葉月君と話す事が出来るように、俊介君に相談したんだ」


「そういうことだったのか」



 よく考えれば結衣も俺に代わって葉月に宿題を見せようとしていたな。

 あれにはそういう意図があったのか。俺は結衣に迷惑が掛かるから身代わりになっていたつもりだったけど、向こうも俺と同じ気持ちだったらしい。



「なんだか事の真相を知ってどっと疲れた」


「私も同じ」


「こんなにすれ違ってたなら、もっと早く自分の気持ちを言えばよかった」


「うん。だからこれからは何か言いたいことがあれば、遠慮なく言ってね」


「わかった。それなら改めて聞きたいんだけど、俺の告白の返事を聞かせてくれないか?」


「それって改めて言わないとダメ?」


「駄目だ。俺は結衣の口からその言葉を聞きたい」



 俺の我儘ではあるけど、もう1度結衣の口からさっきの言葉を聞きたい。

 あの時はお互い驚いている間に終わってしまったので、ちゃんと付き合う為にもやり直したかった。



「もう1度返事をするのはいいけど、その代わり俊介君ももう1度告白して」


「わかった」



 1度深呼吸して心を落ち着かせる。そして改めて結衣に自分の気持ちを伝えるために口を開いた。



「結衣」


「はい」


「こんな優柔不断で頼りない俺だけど、付き合ってくれないか?」


「付き合うのは構わないけど、今の告白で1つだけ違う所があるよ」


「何?」


「俊介君は優柔不断ではあるけど、頼りなくはないよ。だって貴方は私のヒーローだから」


「結衣」



 口をツンと突き出し目をつむる結衣に対して、俺も徐々に距離を詰めていく。

 3cm、2cmとお互いの距離が近づいていき、やがてお互いの唇が重りそして離れた。



「俊介君」


「何だ?」


「もう少し一緒にいよう」


「そうだな」



 それからしばらくの間、俺と結衣は一緒に屋上で過ごす。

 気づけば5時間目の授業が終わっており、休み時間中に教室へと戻った。



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