第240話 本当によかったのか?
「結衣!!」
「しゅっ、俊介君!?」
結衣は俺が来たことに慌てたのか、手元にあったハンカチを落としてしまう。
慌ててハンカチを拾い乱雑にポケットにしまった所を見ると、俺がここに来たのは彼女にとって予想外の行動だったようである。
「(ハンカチを使ってたという事は、もしかして結衣は泣いていたのか?)」
結衣の目元を見るとうっすらと赤い。もしかしたら柵越しに外を見ながらずっと泣いていたのかもしれない。
「どうしてここに来たの?」
「実はずっと結衣の事を探してたんだ」
「私の事を探してたの?」
「そうだ」
やっと結衣の事を見つけたけど、彼女になんて声をかけていいか悩む。
いきなり告白をするわけにもいかないし、どうすればいいだろう。
「結衣が葉月に呼び出されたって聞いたから、ちょっと心配になったんだ」
「俊介君はその話、誰から聞いたの?」
「久遠だよ。昼休みが終わる前に星乃と一緒に来て、俺にその事を伝えてくれたんだ」
「そうだったんだ」
たぶんあの2人がいなかったら俺はこの事を知らずに生きていただろう。
そういう意味では久遠達には感謝しないといけない。
「その‥‥‥結衣は葉月に何もされなかったか?」
「うん。別に何もされなかった」
「そうか。よかった」
「だけど‥‥‥告白されちゃった。葉月君に」
その言葉を聞いた瞬間、俺は固まってしまった。
葉月が結衣に告白したという事実を聞いてしまい、一瞬脳がフリーズ状態になる。
「そっ、そうなのか!?」
「うん。『結衣ちゃんの事が好きだから、僕と付き合ってください』だって。まさか葉月君に告白されると思わなかったから、ちょっと驚いちゃった」
結衣のはにかんだ嬉しそうな様子を見ると既に2人が付き合ってしまっているように見えた。
葉月から告白されたら、どんな女の子でも告白を断る事なんてないだろう。たぶん結衣も葉月と付き合えて嬉しいに違いない。
「(やっぱり告白なんてするべきじゃないんじゃないか?)」
これ以上余計な事をいったらむしろ結衣を困らせてしまうんじゃないか。
そう思ったら言葉が出てこない。さっきまでの固い決意が急に揺らいでくる。
「さっきまでここでそんなことがあったのか。結衣も大変だったな」
「うん」
「それなら少し休んだ方がいいんじゃないか? 疲れてるだろう?」
「そうする」
結衣も疲れてるんだから、やっぱり今日告白するべきじゃないんじゃないか?
付き合った報告をされた後になるかもしれないけど、時期を改めてまた告白する方がいいとさえ思ってしまう。
「俊介君も一緒に休まない?」
「いいのか? 疲れてるのに俺も一緒にいて?」
「うん。私は俊介君と一緒にいたい」
結衣の強い希望ならしょうがない。この休み時間だけでも彼女と一緒に過ごそう。
正直何と声をかけていいかわからないけど、ただ隣にいるだけなら問題ないはずだ。
俺は屋上で休めるような場所がないか探した。
「あそこににベンチがあるから、そこで休むか」
「うん! 一緒に行こう」
それから俺達は屋上に設置してあるベンチへと向かう。
ベンチにつくとそこに2人並んで座った。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ここまでご覧いただきありがとうございます。
よろしければぜひフォローや★★★の評価、応援をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます