第236話 逃げるのをやめた
「しゅっ、俊介は結衣ちゃんの事が好きなの?」
「あぁ。そうだ」
「でも、今まで俊介はそういった素振りは一切見せてなかったじゃん!!」
「確かにそうだ。俺は今まで葉月と結衣が付き合うのが1番いいと思っていた」
「だったら僕に協力してよ!! さっきから俊介の言ってることは矛盾してる!!」
「俺が話したのはあくまで昔の話だ。でも、今は違う。例え葉月相手でも結衣を渡したくない」
俺は今まで自分の気持ちから逃げ続けてきた。それは結衣の周りには司や葉月、俺よりも格好良くて面白い人達が周りにいたからだ。
だから自分なんて結衣と釣りあわないと思って目を背けていた。だけど昨日帰り際の結衣の笑顔を見た時、俺は彼女を渡したくないと思ってしまった。
「おかしいよ‥‥‥俊介はそういう事を言わないと思ったのに」
「悪いな。俺も正直いって、自分が結衣と釣りあわないと思ってる」
「だったら僕に譲ってくれてもいいじゃん!!」
「それは無理な願いだ」
「何で!?」
「俺はこの半年間結衣と過ごしてきて、気づいたことがあるんだよ」
「気づいたこと? それって何なの?」
「もし俺が結衣と釣りあわないなら、釣りあうような努力をすればいいんだよ。俺は今までその事に気づかず、ずっと逃げてきた」
葉月や司の事を羨ましがってる暇があるなら、その分努力して2人を上回ればいい。
結衣が振り向いてくれる男になるように頑張ればよかった。そうすればこんな気持ちにならなくてもよかっただろう。
「だから俺は結衣に釣りあうような男に努力する。だから葉月の頼みは聞けない」
これで俺が言いたいことは全て言い切った。
後は葉月がどう返答するか。反応を待った。
「俊介は本気なんだね?」
「本気だ」
「そういうことならわかった。もう僕は何も言わないよ。じゃあね」
葉月は肩を落としてその場から立ち去る。
俺に頼みを断られてからか、落ち込んでいるようにも見えた。
「ちょっと葉月に言いすぎたかな」
さすがに面と向かって結衣の事が好きだから手伝えないと言ったのは間違いだったか。
でも俺も結衣の事が好きなんだ。それを葉月に言わないで結衣と接するのは、さすがにフェアではない。
「たぶん大丈夫だろう。それよりも穏便に話し合いが終わってよかった」
てっきりもっと食い下がってくるかと思ったけど、拍子抜けだった。
俺は話し合いが終わったことに安堵して、思わず膝に手をついてしまう。
「とにかくこれで葉月には結衣への気持ちを伝えた。あとは俺の行動次第だ」
まずやる事としては結衣との仲を深めることだろう。
告白するにはまだ時期尚早なので、ゆっくりでいいから彼女との距離を詰めていけばいい。
「そうなるとまずはこの前話していた水族館に行こう。今日の夜結衣に連絡して、いつ遊びに行くか決めるか」
この時俺は暢気にそんなことを考えていた。
だが俺はもっと考えるべきだったかもしれない。なんで葉月がこんな簡単に引き下がったのかということを理解していなかった。
葉月がいとも簡単に引き下がった理由、それを俺は翌日知ることとなった。
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