第235話 風見俊介の決断
結衣と遊びに出かけた翌日の放課後、俺は裏庭に葉月を呼び出した。
あいつを呼び出したのは以前俺が連れて来られた場所でもある。
そこでこの前の頼みごとについての結論を出すつもりだ。
「今日こそ葉月にちゃんと言わないとな」
この前頼まれたことに対して、俺の気持ちをはっきり伝えないといけない。
俺の答えはもう決まっている。週末結衣と遊びに行ったおかげで答えは出た。
あとはその答えを葉月に伝えるだけだ。
「いざその時となると緊張するな」
俺が決めたことに対して葉月が納得してくれるのか。それだけが不安だ。
あいつの事だから屁理屈を言って、ごねてる可能性だってある。
どうなるかわからないけど、穏便に話し合いが終わることを祈ろう。
「ごめん、遅れちゃって!?」
「いつもの事だから気にするな」
俺の方に小走りで来る葉月はやけに嬉しそうだ。
その表情はまるで全ての物事が上手くいっていると確信しているようにも見える。
「それで俊介、僕への用事って何なの?」
「実はこの前頼まれたことなんだけど、その答えを言いにきた」
いざ自分の気持ちを言うとなるとものすごく緊張する。
それなのに何でこいつはこんなにニヤニヤしているのだろう。俺とは違い緊張感のかけらもない。
「うん! それでそれで、俊介はもちろん協力してくれるんだよね?」
「そのことなんだけど‥‥‥」
今の言葉を聞いて、何故葉月がこんなにニヤニヤしているのかわかった。
たぶんこいつは自分の頼みが断られると思ってないのだ。だからこんな余裕な態度を取っているのだろう。
「どうしたの? 歯切れが悪いようだけど何かあった?」
「すまん。この前話した葉月と結衣の仲を取り持つ話、俺には出来ない」
「えっ!?」
あまりに意外だったのか葉月は口をあんぐりさせている。
たぶん俺が自分の頼みを了承すると思っていたのだろう。いきなりの事に頭が追いついてないみたいだ。
「ごめん、僕の聞き間違いだよね? もう1度言ってくれない?」
「俺は葉月と結衣の仲を取り持つことは出来ないって言ったんだ。2度も言わせるなよ」
「えぇっ!? 嘘!?」
「もちろん葉月には申し訳ないと思ってる。すまない」
出来ないといった手前、俺は葉月に謝る事しかできない。
あいつはあいつで俺が頼みを断ったことに戸惑っているようだ。口をパクパクさせて、まるで魚みたいになっている。
「なっ、何で僕のお願いを聞いてくれないの!? いつもの俊介だったら聞いてくれるじゃん!?」
「それにはちゃんとした理由があるんだ」
「理由? それってどんな理由なの?」
正直これは言おうかどうかずっと悩んでいた。
だけど俺は出来るだけ葉月と対等でいたい。抜け駆けをしたくないからこそ、あいつに言わなくてはいけないことがある。
「俺も結衣の事が好きだから。だから葉月に協力できない」
俺は葉月にはっきりとそう告げた。
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