第234話 風見俊介の決心

「う~~~ん!! 遊んだ遊んだ。久々にこんな色々な所に行ったよ」


「今日は1日付き合ってくれてありがとう。俊介君」


「何を言ってるんだよ、お礼を言うのは俺の方だ。今日は結衣と一緒に遊べて楽しかった、ありがとう」」



 結衣と2人で色々な店な店をめぐっていたら、いつの間にか夕方になっていた。

 時計を見ると時刻は17時。帰るにはちょうどいい時間である。



「結衣、そろそろ帰るか」


「うん!」



 今日1日結衣と接していて、色々とわかったことがある。

 彼女とは趣味が似ているので、一緒に過ごしていて楽しい。何より結衣が側にいるだけでのすごい安心感がある。



「今日はいい日だったよ」


「そうだな。今日は誘ってくれてありがとう」



 こんな人通りの多い場所、1人で来てたら退屈してただろう。欲しい物だけ買って、すぐに帰っていたに違いない。

 幸い今日は結衣がいたこともあり、ウインドウショッピングをしているだけでも楽しかった。



「俊介君」


「何?」


「また2人で遊びに行こうね」


「そうだな。俺もまた結衣と遊びに行きたい」



 今日結衣と遊びにいってわかったことがある。それは彼女と一緒にいると何をしていても楽しかった。

 それこそ1人で出かけていた時とは比べ物にならない。彼女とならずっと一緒にいても全く苦にならない。



「そしたら今度はどこに行く? 次は俊介君の行きたい所に行こう」


「俺の行きたい所か。そう言われても、特にないんだよな。結衣は他に行きたい所はないのか?」


「私は水族館に行きたい」


「水族館? 遊園地じゃなくて?」


「うん。水族館の魚を見てるとのんびりした気持ちになるから、たまに行きたくなるの」


「そうか。それなら次は水族館に一緒に行こう」


「うん!」



 魚を見ているとのんびりした気持ちになるのか。なんかその話が結衣らしい。

 俺自身も遊園地に行くよりはゆっくりとしたところの方が好きなので、彼女の提案は妙案だった。



「それならいつ行く? 週末だったら、私はいつでも空いてるよ」


「申し訳ないけど、行く日にちはまた今度決めてもいい?」


「えっ!? もしかして今月予定空いてなかった?」


「そういうわけじゃないけど、どうしても先に片付けないといけない事があるから」


「片付けないといけない事?」


「そう。それが終わったらちゃんと予定を決めよう」



 俺も結衣と遊びに行きたいけど、どうしてもやらないといけないことがある。

 ちゃんとあの事にけじめをつけてから結衣と遊びに行こう。それが終わってから、予定を決めても遅くはない。



「その片付けないといけない事って、俊介君にとって重要な事なの?」


「うん。俺にとってそれは最重要事項だ」


「わかった。それなら私、待ってるね」


「もちろん。すぐ終わらせるから、待っててくれ」



 説明が抽象的で不十分だったけど、結衣が納得してくれたようだ。

 正直な話もっと根彫り葉彫り聞かれるかと思っていたけど、簡単に引いてくれてよかった。



「でも、あんまり遅いと私も我慢出来なくなるから、出来るだけ早くしてね」


「わかった」



 早くしてほしいと言われたけど、そんなに結衣は水族館に行きたかったのかな。

 でも、それにしては何だか嬉しそうに笑っている。もしかすると彼女の中で、何かいいことがあったのかもしれない。



「もうこんな時間か。そろそろ帰ろう」


「うん」


「外も暗いし、家まで送っていくよ」


「お願いします」



 それから俺と結衣は電車に乗って帰る。

 そして彼女を家まで送り届け、俺も自宅へと帰った。



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