第233話 ウインドウショッピング

 結果だけ言えばこの買い物はウインドウショッピングだけで終わった。

 どうして冬物をかわずにウインドウショッピングで終わったのか。その原因は俺にある。



「悪いな、結衣。せっかく俺の分まで服を選んでくれたのに」


「お金がないならしょうがないよ。また今度来よう」



 今日俺は洋服を買う為のお金まで持ってきていない。

 さすがに今日洋服を買うとは思っておらず、財布にお金を余分に入れてきてなかったのは失敗だった。



「でもわざわざ結衣も俺に付き合う必要はなかったのに。自分の服だけでも買えばよかったじゃん」


「それだとなんか申し訳ないし、出来れば私俊介君と一緒に洋服を買いたかったんだ」


「えっ!?」


「また近いうち予定立てて一緒に来よう。今度は洋服を買いに」


「いいね。その時はまたあそこの洋食屋にも行こう」


「うん! 今度は私、ビーフシチューが食べたいな」


「それなら俺は結衣が食べてたオムライスを食べるか」


「俊介君って本当にオムライスが好きなんだね」


「しょうがないだろう。子供舌なんだから」



 こればかりは好みの問題なのだから、誰にもとやかく言われたくない。

 彼女はそんな俺の言い訳が笑いのツボにハマったのかクスクスと笑っている。



「そうだ! ちょっと本屋に寄っていってもいい?」


「いいよ。何か欲しい本があるの?」


「うん。最近はまってる少年漫画があるから、その新刊が売ってるか確認したい」



 確かあの漫画は今日が発売のはずだ。

 買えないにしてもせめて店頭で販売しているか確認して、今度また日を改めて買いに行こう。



「それなら私も見たい本があるから、付き合ってもらってもいい?」


「いいよ。結衣が見たい本ってどんな本なんだ?」


「今日やっていた映画が原作になってる漫画だよ。確か発売日が1週間前だった気がする」


「それなら一緒に見に行くか」


「うん!」



 それから俺は結衣と一緒に本屋へと向かった。

 本屋は先程俺達が行った映画館のすぐ側にあるので、ここからそんなに歩く必要もない。



「本屋に着いたけど、都会の本屋だけあって広いな」


「私達の近所にある本屋と違って、色々な本が置いてある」


「そうしたらまずは結衣が見たい漫画を探しに行こうか」


「えっ、私が探してる本は後で見ればいいよ。先に俊介君が探している本を見に行こう」


「わかった」



 結衣の計らいで先に俺が買おうとしている本を探すことになった

 ありがたいことに彼女は俺の買い物に付き合ってくれるらしい。



「たぶん俺が探している本は新刊コーナーにあると思うけど‥‥‥あった!」


「この漫画って、アニメ化も決まっているバトルアニメだよね」


「そうだよ。少年漫画なのによく知ってたな」


「うん。最近広告でよく見るから。私もちょっと気になってたんだ」



 結衣が少年漫画に興味を示すなんて珍しい。

 少女漫画を読んでいる事は知っていたけど、こういう漫画を見ているなんて思わなかった。



「もし見たいなら、この漫画貸そうか?」


「俊介君持ってるの?」


「うん。新刊が出る度に買ってるから、全巻家に揃ってるよ」


「本当!? それなら私、その漫画読みたい!」


「わかった。それなら今度持ってくるよ」



 結衣が自分の好きな物に興味を示してくれるなんて、これほど嬉しいことはない。

 彼女も俺が手に取った新刊を見て、興味を示してくれたようだ。



「でも意外だったな」


「何が?」


「結衣が漫画に興味を示してることだよ」


「私が漫画を読んでることってそんなに驚くことなの?」


「うん。結衣はこういう物よりも洋服やぬいぐるみが好きなんだと思った」


「確かに俊介君の言う通り私は可愛い物が好きだけど、こういうものも見るよ」


「ごめんごめん。ちょっと俺も誤解してた」



 こうして接してると結衣の可愛い所がよくわかる。

 始めて出会った時はあまり感情を見せないタイプかと思ったけど、実際は感情豊かで思っている事が顔に出やすい。

 それに料理が好きなだけかと思っていたけど意外と多趣味で、何でも興味を持ってくれる。



「(そんな結衣だからこそ、俺は好きになったんだよな)」



 葉月の頼みに対して答えを出さないといけない以上、自分の気持ちをはっきりさせないといけない。

 だが今日結衣と一緒にいて、答えが見つかった気がする。

 新刊コーナーを眺めて本を探している彼女を見て俺も決心がついた。



「どうしたの、俊介君? そんなに私の事を見て?」


「何でもないよ。俺がさがしている本は見つかったし、そろそろ結衣が探している本を見に行こうか」


「うん!」



 その後俺達は新刊コーナーを離れて、結衣が欲しい本を探しに行く。

 それからしばらく漫画談義をして本屋を離れた後、2人で様々な店をめぐった。



------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでご覧いただきありがとうございます。


よろしければぜひフォローや★★★の評価、応援をよろしくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る