第232話 時の流れ

「オムライス美味しかったね」


「うん。適当に選んで入ったにしてはいいお店を見つけたと思う」



 それぐらいあのお店で出されたオムライスは美味しかった。

 メニュー表には他にもオムライスがあり、味にも色々バリエーションがあるようなので、機会があればまた行きたい。



「この後何も決めてないけど、どこに行く?」


「俺はどこでもいいよ。結衣は見たいものある?」


「う~~~ん、そうだな~~~。‥‥‥せっかくだから冬物の洋服がみたい」


「冬物の洋服‥‥‥もうそんな時期か」


「どうしたの、俊介君?」


「大したことではないけど、この前夏だと思ったらもう冬だろう。だから時間の流れが早いと思っただけだ」



 夏合宿もつい最近あった出来事のように思っていたけど、それもかなりの昔の話である。

 ここ最近めまぐるしい程色々あったので、感覚としては季節が一瞬で終わってしまったように感じる。



「その感覚、私もよくわかる」


「結衣もそうなの?」


「うん。2年生に進級してから楽しいことがいっぱいあって、気づいたら冬になってた」


「だよな。俺達ももうすぐ3年生に進級するのか」



 3年生になると再びクラス替えがある。

 今度のクラス替えは普通のクラス替えではない。文系と理系、進路が変わる。

 これがどういうことかというと俺と結衣が別々の進路に進むとなると、必然的にクラスが変わる。

 つまり彼女と同じクラスになる可能性が今まで以上に低くなってしまった。



「そういえば俊介君は進路決まった?」


「うん。とりあえず大学には行こうと思ってる。ただどの大学に行くかまだ決めてない」


「私も同じだよ。どの大学に行こうか迷ってるんだ」



 やっぱりこの時期になるとみんな同じことを考えているのか。

 来年には最上級生になるし、出来るだけ早く進路は決めないとな。



「出来れば卒業してもこうしてまた一緒にお出かけしたいな」


「大丈夫だよ。連絡先も交換してるんだから、会いたい時に会えるはずだ」


「俊介君は私が連絡したら、すぐ来てくれる?」


「もちろん。結衣からの連絡だったら、いつでもかけつけるよ」



 この言葉に嘘はない。もし結衣から遊びに行かないと誘われたら、どんな予定があってもそっちを優先するだろう。



「じゃあまた一緒に遊びに行こうね」


「もちろん」


「そしたら今度遊びに行く時の為に、冬物の服を買わないと」


「そうだな。そしたら結衣が似合う洋服を探すか」


「私だけじゃなくて、俊介君の洋服も見るからね」


「俺の服も!?」


「そうだよ。まずい事でもあった?」


「それはないけど‥‥‥」


「それなら決定だね。俊介君の洋服も探そう」



 結衣はやる気を出しているようだけど、少々困ったことになった。

 それを彼女に言えればいいのだけど、やる気を出している所に水を差すようなので言葉に出来ない。



「そしたらあそこの洋服店に行こう! さっき映画館を出た後気になってたんだ」



 それから俺達は冬物の洋服を買う為に近くの洋服店へと向かう。

 そこでしばらくの間、結衣に似合う服を探した。



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