第222話 気持ちの整理

「葉月君に言われたんだって? 結衣ちゃんとの仲を取り持ってほしいって」


「はい。俺はさっき葉月に結衣の事で相談されました」


「それで貴方はなんて回答したの? まさか葉月君の提案を飲んだわけじゃないわよね?」


「はい。どうしても心の整理がつかないので、その話は保留させてもらってます」


「保留ね」


「はい。一応葉月には来週結論を出すと言っているので、その時にどうするか決めようと思ってます」



 正直まだ気持ちの整理がついていないので、この話をどうするか考えていない。

 それよりもこんな状況で結衣と出かけていいのかとさえ今は思っている。



「ところで紺野先輩」


「何?」


「何でそんな驚いているんですか? 俺ってそんなにおかしな事を言いましたか?」


「うん。貴方の事だから、既に葉月君の提案を飲んだ後だと思ったのよ」


「はぁ!? 何で俺が葉月の提案を飲まなきゃいけないんですか!?」



 結衣との仲を取り持つことなんてしなくても、少しは自分で動けとは思う。

 俺が動かなくても2人の仲は前よりも深まっているのに、何を考えているのだろう。



「昔の貴方なら、喜んで葉月君の提案を飲んでいたと思うけど‥‥‥違う?」


「それは紺野先輩の気のせいですよ。俺だってロボットじゃないんですから、何でも葉月のいう事を聞くわけじゃないです」


「そんなことないわよ。貴方、前とだいぶ変わったわ」


「変わった? 俺がですか!?」


「そうよ。なんて言えばいいんだろう。前よりも決断力がついて、優しくなった気がする」


「そうですか? 俺はそんな風に思ったことはないですけど?」


「それは貴方が自覚していないだけよ。昔は周りに流されていたけど、今はちゃんと自分を持っている気がする」



 今まで俺はそんな風に思ったことはなかったけど、この人がいうならそうなのだろう。

 紺野先輩が俺の事を見る目は優しかった。



「もし葉月君の提案を飲むか迷っているなら、一度結衣ちゃんとデートでもしてきたらいいじゃない。その方が自分の気持ちをはっきりさせられると思うわ」


「すいません。ここだけの話にしてほしいんですが、実は今度の休みに結衣と2人で遊びに行ってきます」


「それなら尚の事ちょうどいいじゃない。もし自分の気持ちにはっきりと蹴りがついたなら、そのまま告白しちゃいなさい」


「それは出来ません」


「何で?」


「もし俺が結衣に告白するにしても、それを葉月に伝えてからじゃないと。そうじゃないとフェアじゃありません」



 そうしないと葉月の事を出し抜く形になってしまい、彼に対して卑怯な事をしてしまっている。

 あくまで選ぶのは結衣なのだから、フェアな勝負を俺はしたい。



「ふ~~~~~ん、貴方も言うようになったじゃない」


「どうも」


「風見君がどのような選択をするか、楽しみにしてるわね」


「はい」


「出来れば貴方が私の敵にならないように祈ってるわ」



 そうだ。俺が葉月に協力するという事は、紺野先輩の恋路を邪魔することになる。

 となると必然的に紺野先輩と俺は敵対することを意味していた。



「ここまで仲良くしてきたのだから、こんな所で貴方と仲が悪くなりたくないわね」


「俺も同じ気持ちです」



 俺と敵対するかもしれないというのに紺野先輩はやけに楽しそうだった。

 まるでこの後の展開がどうなるか彼女はわかっているようだ。



「お待たせ~~~。ラーメンと炒飯と餃子を持って来たわよ!!」


「ありがとうございます。あれ? 餃子は頼んた覚えがないですけど?」


「それはサービスよ。うちの料理の中でも餃子はオススメの商品だから、いっぱい食べてね」


「ありがとうございます」


「出来立てが1番美味しいから、熱々のうちに食べてね」


「わかりました」



 俺達の前にラーメンと炒飯、そして杏仁豆腐を持って来た紺野先輩のお母さん。

 作って来た料理を俺達の前に置くと何故かそのままお母さんもその場に座った。



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