第221話 その女性の正体は‥‥‥
部屋の外からバタバタと音が聞こえたかと思うと、部屋のドアが開く。
そこには紺野先輩と紺野先輩に似た若い女性が佇んでいたのだった。
「あらあら!? 陽子ったらボーイフレンドを連れてきたの!?」
「この子は私の彼氏じゃなくて、学校の後輩よ。勝手に勘違いしないで!!」
目の前に現れた紺野先輩似の女性を紺野先輩がいさめている。
俺は訳が分からず、2人の事を唖然とした表情で眺めていた。
「えっと、その人は紺野先輩のお姉さんですか?」
「そうよ! 私は陽子の姉です!」
「違うでしょ、お母さん!! ちゃんと自己紹介してよ!!」
「おっ、お母さん!?」
お母さんというには若々しい姿をしている。どう見たって20代前半にしか見えない。
「そうです! 私は陽子の母の陽菜と言います。いつも陽子がお世話になっています」
「俺は風見俊介です。こちらこそ、紺野先輩にはいつも助けられています」
「ちゃんと挨拶も出来て、本当にいい子ね。陽子はこういう子を逃したらダメよ」
「だから彼は私の学校の後輩だから!! 勘違いしないでよね!!」
いつもは強気な紺野先輩がたじたじである。
さすがに母親相手になると、紺野先輩も余裕がなくなるんだな。
「それよりもお母さん、用がないならもう帰って!!」
「あらあら? 私はちゃんと陽子のボーイフレンドに用があって来たのよ」
「だからボーイフレンドじゃないって言ってるでしょ!!」
「はいはい。わかりました。それよりも風見君、これを受け取ってくれないかな?」
「これは‥‥‥メニュー表ですか?」
「そうよ。私達のお店のメニューになってるから、よかったら好きな物を注文して」
「ありがとうございます」
紺野先輩のお母さん、陽菜さんから渡されたメニューはどこにでもあるラーメン屋のメニューだった。
ただ最近のラーメン屋よりもサイドメニューが充実しており、街中華という印象を受けた。
「どのメニューも美味しそうですね」
「ふふっ、うちはラーメン以外のメニューも充実しているから好きな物を食べてね」
「でも俺、今日持ち合わせがそんなにないので大丈夫です」
「そんなこと遠慮なんてしなくていいのよ。ちゃんと奢ってあげるから、好きな物を食べなさい」
「ありがとうございます」
紺野先輩のお母さんがこういってくれているのだから、遠慮せずに食べることにしよう。
メニュー表をペラペラとめくっているが、どのメニューも美味しそうなので何を食べるか悩んでしまう。
「うちのオススメはこの醤油ラーメンよ」
「そしたらオススメの醤油ラーメンと炒飯をお願いします」
「わかったわ。すぐ作ってくるから、ちょっと待ってて。陽子は何にする?」
「私は杏仁豆腐にする」
「わかった。そしたら仲良く2人で待っててね」
そう言うと紺野先輩のお母さんは部屋を出て行ってしまう。
静まり返った部屋で俺と紺野先輩は顔を見合わせた。
「なんだか若々しくてパワフルなお母さんですね」
「母はいつもこんな感じだから、あまり気にしないで頂戴」
「わかりました」
紺野先輩がこういうなら気にしないようにしよう。
彼女は少しでも早くこの事を忘れたいみたいだ。
「それで紺野先輩の話というのは何ですか?」
「それはもちろん結衣ちゃんのことよ」
「結衣の事ですか」
そうだとは思っていたけど、いざ言われると緊張する。
紺野先輩は真剣な眼差しで俺の事を見つめていた。
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