第217話 週末の予定
次の日の朝、部活の朝練を終えた俺はいつもより早めに教室に入る。
幸いこの時間葉月はまだ登校していないようで、教室には殆ど人がいない。
「俊介君、おはよう」
「おはよう、結衣。珍しく朝早いな」
「なんだか今日は目覚めが良くて、いつもより早く来ちゃった」
嬉しそうに笑う結衣を見ると、何故か心の中がちくっとする。
それはたぶん葉月に隠れてこそこそと結衣と2人で映画を見に行くせいだろう。
葉月が結衣の事が好きなのに隠れて遊びに行こうとしていることに罪悪感を抱いている。胸が痛むのはたぶんそれが原因だ。
「今度行く映画の話だけど、俊介君はあの映画で大丈夫だった?」
「俺は大丈夫だよ。結衣はずっとあの映画が公開されるのを楽しみにしていたんだろう?」
「うん! ずっと公開されるのを楽しみにしていたんだ」
結衣がずっと楽しみにしていた映画。それは人気漫画が原作のラブロマンス映画だった。
「これって今も連載している漫画を映画化したもので、主人公とヒロインがすれ違う恋模様が見れるんだ」
「そうなのか?」
「うん。ヒロインの女の子は主人公の男の子の事が好きなのに、男の子の方はヒロインが別の男の子が好きだと勘違いして身を退こうとしてるんだ」
「それで結局その2人はどうなるんだ?」
「それはわからないよ。ただヒロインの女の子がその事に気づいて、頑張って誤解を解こうとするんだ」
「そんな漫画があったのか」
「もし見たいなら漫画も持ってるよ。よかったら貸してあげるよ」
「いいのか? そこまでしてもらって?」
「うん! 絶対予習してから見た方が面白いと思うから、俊介君にはぜひ見てほしい」
「わかった。そしたらぜひ貸してくれ。映画を見る前に読んでみたい」
「わかった。そしたら明日持ってくるね」
「頼む」
その漫画がどんなものかわからないけど、一度見て見るべきだろう。
それを見ればある程度どんな話かわかるはずだ。
「映画を見た後だけど、お昼ご飯はどこで食べる?」
「それは俺が調べるよ。結衣って嫌いな物とかある?」
「特にはないよ。俊介君が選んだ所なら、どこだっていい」
「わかった。そしたら昼食を取る場所は俺に任せてくれ」
確かあの映画館の近くにはおしゃれで美味しいイタリアンレストランがあったはずだ。
価格もそんな高くなかったし、きっと結衣も喜んでくれるはずだ。
「これで大体決まったな」
「うん! 当日はよろしくね」
「こっちこそよろしく」
これで結衣と出かける予定は決まった。
どうなるかわからないけど、せっかく遊びに行くんだ。楽しむだけ楽しもう。
「おはよう、俊介。あれ? 結衣ちゃんもいる!?」
「おはよう、葉月君」
「どうしたの? 2人で話してて?」
「何でもないよ!? 今日の数学の宿題でわからないとこがあったから聞いてたの!?」
「数学の宿題‥‥‥そうだ!? 忘れてた!?」
「お前また宿題を忘れたのかよ」
「昨日は見たいテレビがあったからそれをずっと見てて、宿題をするのを忘れちゃった!?」
確か同じような事が1学期もあった気がする。
同じことは繰り返さないで欲しいけど、それを葉月に言っても無駄か。
「俊介!! 数学の宿題を‥‥‥」
「見せないからな」
「お願いだよ!! 見せてよ~~」
情けない姿を見せる葉月を押しのけながら、ホームルームまで過ごす。
結局俺は葉月に宿題を見せることになり、深いため息をついた。
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